北朝鮮のテレビ番組の一部とみられる映像が最近、ネット上で公開された。映像は1時間余りの長さで、中には反キリスト教を宣伝する内容のものも含まれている。
映像は19日、動画共有サイト「ユーチューブ」に投稿された。ハッカーたちが、北朝鮮で放送されているテレビ番組を入手したものだという。映像の10分30秒ごろからは「実話舞踊 米帝は山犬 血海歌劇団」という見出しが出て、短い演劇が始まる。途中から、首に大きな十字架を下げ、親切な振る舞いで母子に近づく西洋人風の神父が登場。母親は神父が十字を切ったとき、信仰を受け入れたように見え、その後、彼女は自分の息子にも受け入れさせる。しかし後に、少年が独りでいるとき、神父は少年を虐待し、殺害する。そして最後には、背後に大きく「忘れてはいけない、米帝の蛮行を!」という言葉が映し出されて終わる。
キリスト教権利擁護団体「世界キリスト教連帯」(CSW)の東アジア地区担当者であるベン・ロジャーズ氏は、英キリスト教メディア「プリミア」(英語)に対し、「私たちはこの映像の出どころを確かめることはできませんが、これは確かに北朝鮮政権のキリスト教に対する恐ろしい宣伝活動と一致しています」と述べた。
ロジャーズ氏は、「北朝鮮はキリスト教徒であることが世界で最も困難な所です。宗教の自由は少しもありません。キリスト教徒たちはこっそりと会っています。もし見つかれば、収容所で厳しい罰を受けます。そして北朝鮮政権は宣伝活動を通じて人々の中にキリスト教への敵意を植え付けるのです」と言う。また、「北朝鮮政権は、米国や韓国、日本、そしてキリスト教に対する宣伝戦において、演劇や映画、漫画などを用いることがよく知られています」と語った。
金正恩(キム・ジョンウン)の秘密主義政権下では、国内で放送されている一般のテレビ映像を入手することは非常に難しい。国連や人権団体は、北朝鮮国内で行われていると考えられている大規模な人権侵害を非難している。キリスト教迫害監視団体「米国オープンドアーズ」は、北朝鮮を16年連続で、キリスト教徒に対する迫害が世界で最もひどい国としており、北朝鮮では単に聖書を読むことが投獄につながり得るとされている。
■ 北朝鮮のテレビ番組の一部とみられる映像