世界福音同盟(WEA)は3月初め、ドイツ中部の町バートブランケンブルクで「困難な時代における真のリーダーシップ」をテーマに、毎年恒例の国際リーダー会議を開催した。5日間で20カ国余りから世界レベル、地域レベル、国家レベル、草の根レベルの指導者ら45人が集い、WEAの協力関係強化について話し合った。また参加者らは、宗教改革500周年を記念して、その意義を熟考し、現代のキリスト教徒への適応について声明を発表した。 会議は、バートブランケンブルクにあるドイツ福音同盟(DEA)の「アリアンツハウス(同盟の家)」で開催され、WEAの国際評議員や上級指導部、各地域の福音同盟の責任者、選出された委員長らを集めて行われた。
「宗教改革500周年にドイツに来たことは、私たちにとって非常に有意義でした。私たちがマルティン・ルターの足跡を踏み、宗教改革者たちのメッセージに、今日どのような意義があるかを深く考えることができました。特に、主催してくださったDEAに感謝しています。彼らの気前の良さと歓迎の心は、私たち全員に感動を与えてくれました」と、WEA総主事のエフライム・テンデロ監督は述べた。
困難な時代における真のリーダーシップ
困難な時代における真の指導者とはいかなるものか。開催地そのものがその意義を物語っていた。旧東ドイツ領にあるアリアンツハウスやその会議ホールには、政府の圧力がかかる中でも、献身的なキリスト教指導者らが集った深い歴史がある。東ドイツ時代を含め、100年余りにわたり5千人の信仰者が、神の言葉を学ぶためにバートブランケンブルクで毎年開催されるサマー・バイブル・カンファレンスに集った。
当時のアリアンツハウスは、世界各地の共産主義国から福音同盟の指導者ら(その多くは信仰の故に投獄された)が集まり、交わりを持った場所でもあった。その後、ベルリンの壁が崩壊すると、東西ドイツの福音同盟が統合し、現在もDEAの総主事を務めるハルトムート・シュティーブ氏の指導の下、バートブランケンブルクに事務所を設立した。
真のリーダーシップについては、グッドウイル・シャナ博士とマーク・ジョスト博士による「カフェ・カンバセーション」と呼ばれる集会で、二晩にわたり詳しく説明された。
WEAの国際評議員でアフリカ福音同盟(AEA)の会長を務めるシャナ氏は、社会的にも政治的にも緊張があった時期に、ジンバブエ福音同盟(EFZ)を指導した経験について語った。教会指導者らは政治的議論に巻き込まれるのを避け、同じ倫理道徳基準を全ての政党に守らせ、国益のために異口同音に話し合う道を見いださなければならなかったと話した。
2日目の夜、スイス福音同盟(SEA)の共同総主事の1人であるジョスト氏は、文化が教会に及ぼす影響に関して、個人的経験から話をした。ジョスト氏は、3つの少数民族言語と文化を持つ小国であるスイス出身の信仰者らは、生まれながらにコンセンサスと妥協を図る特徴を兼ね備えているため、分極と民族主義が強まるこの時代に、世界の教会にとって貴重な貢献ができると語った。またジョスト氏は、独自の文化の豊かさや社会環境の困難さについて深く考え、世界の教会のために自分がどうしなければならないかを自問することを参加者らに求めた。
宗教改革500周年を祝う
今年は、ルターが1517年10月31日に、ドイツ・ヴィッテンベルクの城教会の扉に95カ条の論題を釘付けにしてから500年を迎える記念の年でもあり、当時と現在のドイツの宗教改革や教会への影響について参加者らが学ぶ機会となった。
昼の歓迎会では、DEAのエクハート・ベター議長が、バートブランケンブルクが大規模な宗教改革の記念イベント会場に近いことに触れ、その多くが200キロ圏内にあることを説明した。次に、バートブランケンブルクがあるテューリンゲン州政府の宗教改革記念行事の代表者を務めるトーマス・ザイデル博士が、宗教改革500周年の式典について話し、式典は、人口の約85パーセントが地域教会につながっていない同州の人々にとって、キリスト教信仰に立ち返る良い機会になると述べた。
翌日、参加者らはヴィッテンベルクまで足を延ばした。ヴィッテンベルクのヨッヘン・キルヒナー市長が参加者らを迎え、続いて同市にあるルーテル世界連盟(LWF)の事務所の局長であるハンズ・カシュ牧師が話をした。2人とも、ヴィッテンベルクはマルティン・ルターにとってだけでなく、ルターの思想を体系化したフィリップ・メランヒトンやルターの妻であるカタリナ・フォン・ボラなど、宗教改革にはなくてはならない重要人物にとっても故郷であることを強調した。
新しい宗教改革とは
WEA宣教委員会のデイビッド・ルイズ牧師とバーティル・エクストローム博士による「新宗教改革」のセッションでは、参加者らは、今日の教会が直面する課題と、それに対するWEAの実践的対応について深く考察する時間を持った。参加者らはまず、5世紀前に宗教改革の基盤となった最も重要な要素に目を向け、それを今日の教会において教会の働き方を再考するために不可欠な要素と比較した。
そして、参加者らは最終日に次のような声明を発表した。
世界福音同盟の指導者として、宗教改革発祥の地に近いドイツのバートブランケンブルクに集まることができたのは恵みである。500周年記念の年にこの場にいることは、歴史的な体験である。
さまざまな国から集い、マルティン・ルターの足跡を踏み、今日の教会における宗教改革の意義と、それぞれの国や社会にどのようなインスピレーションを持ち帰れるかを熟考した。
ルターの遺産を受け継ぐのは今日、一部の教会だけであるが、教会が信仰の本質に立ち返ることを望んだ宗教改革の精神により、私たちは1つに結ばれている。その宗教改革の精神とは、Solus Christus(キリストのみ)、Sola Scriptura(聖書のみ)、Sola Gratia(恵みによってのみ)、Sola Fide(信仰によってのみ)である。
宗教改革者たちのメッセージは、500年前と同様、今日にも有効である。それ故、私たちは祈りに励み、聖書の学びを通じ、聖霊によって導き続けていただけるよう神に願う。それは私たちが皆、私たちの神であり救い主であるイエス・キリストにある共通の信仰を見いだすためである。
21世紀という環境で共に仕える
今年の会議のもう1つの要素は、WEAの組織構造を今日の状況に一層適したものとし、将来の成長に向けて整えるために、組織構造の調整と改善に焦点を当てたことにある。構造フレームワーク調査委員会は、現在設置されている構造や仕組みを研究し、今後数カ月以内に変更の勧告を開始するよう依頼されている。
WEA総主事のテンデロ氏は、「私たちはここドイツで、共に集中的な学びの時を持てたことに感謝しています。将来、より堅固な協力関係を持てることを期待しています」と語った。