ローマ教皇庁(バチカン)が、教皇の肖像を著作権で保護する動きを始めた。教皇の写真を用いた商品の無断量産を違法とするのが狙いだ。教皇紋章(交差して組まれた金と銀の鍵)も対象になるという。
教皇庁は2月末、「(バチカンの)国務長官は、教皇の肖像や教皇紋章の使用を管理する監視体制を敷き、必要に応じて適切な措置を講じる」とする声明を発表した。
この動きは、教皇の肖像によって利益を得てきた企業や個人に影響するとみられる。特にTシャツやマグカップ、ピン、ハンカチ、人形などの土産物は、教皇が訪問する地のヒット商品となっている。
デジタルプリントとインターネットの時代にあって、教皇の肖像を用いた商品の製作は容易になっている。こうした商品の販売は、教会やカトリック系の団体でさえ、司祭の勧めで募金活動の一環として行っている。
声明は、どのような方法で教皇をモチーフにした物品の無断複製を禁じるかは触れていないが、教皇庁は国際法律事務所であるベーカー&マッケンジー(米国)の支援を受けている。
しかしその一方で、教皇庁自体がバチカン美術館のブティックやウェブサイトで、教皇をモチーフにした物品販売に携わっていることを考慮すると、競争相手を一掃することがこの動きの目的ではないかとの疑念もある。
知的財産が専門のマーク・マッケンナ氏(米ノートルダム大学法科大学院教授)は、「恐らく、商業的な動機があることは事実でしょう」「バチカンは、そういった商品を販売できるのはバチカンだけであることを明確にしたいのだと思います」と話している。