日本ルーテル教団(NRK)宣教総主事の斎藤衛(まもる)牧師は12月15日、NRKの東京ルーテルセンター教会(東京都千代田区)で本紙のインタビューに応え、2017年の宗教改革500年に関するNRKの取り組みについて語った。斎藤氏は、その意義について「私たちが改革されて、これから新しいものへと刷新していくんだという意識」にあると強調した。
NRKは、米国の保守的なルーテル教会ミズーリ・シノッドを戦後の開拓伝道の母体としている。同シノッドは、信条を基盤に教会を形成することを強調しているグループ。日本福音ルーテル教会(JELC)とは、「聖壇と講壇の交わり」を持ち、ルーテル学院大学、日本ルーテル神学校において共同で神学教育を行っている。
NRKは現在32教会を有し、北海道・新潟・関東の3地区と沖縄に教会がある。
宗教改革500年に関するNRKのこれまでの取り組みについて斎藤氏は、「聖書に立ち返る」と「信徒の働きを生かす」を2本の柱にしてきたと語った。
15年5月ごろから斎藤氏を委員長とする準備委員会が活動を始め、宗教改革500年記念エンブレムの制作、「ルターの宗教改革500年 そして私たちの改革」という言葉を掲げたポスターの制作・配布などを通して広報宣伝に努めてきた。
また、宗教改革500年記念マグネットのデザインには、NRKの機関誌「教会だより」でおなじみのキャラクター「シャポー」を採用。記念聖書カバーも併せて制作した。さらに、JELCと同じ世界共通のルターの顔が描かれた宗教改革500年記念バナーを各教会学校に配布したという。
14年に発行した子ども向けの冊子『しんこうってなーに?』は、15年6月までに4刷を重ねた。「信仰について素朴に尋ねたことに対して、なるべく今生きている私たちの目線で答えていく手作りの冊子」と、斎藤氏は説明した。
また、『現代に語りかけるルター』という中学生以上の信徒向けの本を16年2月に出版したほか、米国のコンコルディア社が出している『My First Catechism』を、子ども向けの小教理問答として17年5月に出版すべく、日本語訳を進めている。これは、教理に関するカテキズムと、設問が付いたアクティビティー・ブックの2冊からなる。
さらに、NRKの草創期に大きな働きをしたマイヤー宣教師の、日本伝道草創期から母国へ帰るまでを振り返った論文も、17年10月に書籍化するという。
NRKが宗教改革500年記念で取り組んでいるもう1つの活動が、「聖書通読」運動だ。斎藤氏は、「『聖書に立ち返る』というテーマに沿った運動」と説明。「15年11月の待降節第1から始めて、17年10月の宗教改革月でちょうど旧約・新約が終わる手帳を作りまして、参加者に配布しています。参加者約400名は日々の箇所をチェックしながら読み進めている・・・はずです」と笑った。
所定の参加費を聖書通読の参加者に払ってもらい、その費用で手帳と通読のマスコット「リトルルター」人形を制作したという。
NRKのウェブサイトでは、このリトルルターを旅先の風景の中に置いて写真に撮り、インスタグラムなどに投稿してもらう「リトルルターの旅」をスピンオフ(副産物)として位置付けている。「そういうお楽しみの企画もやってるんです」と、斎藤氏は話した。
NRKは16年5月、「信徒の働きフォーラム」を東京・代々木で開き、教職者の足りない現状の中で、信徒がその働きを負う経験を分かち合った。同フォーラムには、約90人が参加した。
11月には、平和をテーマに日韓合同教職者会を韓国ルーテル教会(LCK)と共同で、韓国・済州島で開き、平和の祈りの礼拝「日韓平和礼拝」を持った。
NRKの執事で済州島出身の女性教職者が、LCKとの橋渡し役となったこの礼拝は、韓国のキリスト教放送「CBS」のニュース番組でも放送され、日本と韓国の両事務局長が、平和宣言を日本語と韓国語で読み上げた。聖餐式では両教会で同じストールが用いられたという。
この礼拝も、「宗教改革500年を記念して合同で何かやりたいということが両者にあった」と斎藤氏は話す。
礼拝前には、平和について発題する時間を持ち、韓国側からは、神学校で教義学を教えている教員が、「四・三事件に見る、聖書が説く平和」と題して講演した。四・三事件は、太平洋戦争後、済州島の北朝鮮側を支持する勢力を南朝鮮(韓国)政府が弾圧し、虐殺した事件だ。
17年5月1日から3日まで、NRKはルター宗教改革500年記念という冠を付けて第17回教団総会を持ち、3日には記念礼拝と記念祝賀会を続けて開催する。
10月と11月にはそれぞれ、JELCと合同の北海道地区大会と関東地区大会を札幌市保養センター駒岡(札幌市)とルーテル学院大学・国際基督教大学礼拝堂(東京都三鷹市)で計画している。
NRKはさらに、宗教改革500年記念事業として、老朽化したルターハウス(東京都府中市)の再開発を計画している。現在、古くなった建物の解体工事が進められており、新築工事は17年2月に着工し、宗教改革月の同年10月に竣工する予定だ。
新しいルターハウスは、寄宿舎兼修養会や黙想会に使えるような機能を持ち、教職の継続教育にも使えるような研修室を備えたものになるという。
インタビューの最後に斎藤氏は、宗教改革500年の持つ意味について「単にお祭りというだけではなく、十字架のイエス・キリストに立ち返るということです」と語り、一連の記念行事が実を結ぶよう祈りを求めた。