本書は、ドイツの宗教改革者、マルティン・ルターが1520年に著した著書『キリスト者の自由』の手引き書。2017年にルターによる宗教改革から500年を迎えるのを記念して出版されたものだ。「『キリスト者の自由』はルターの本の中で恐らく一番よく読まれている名著」だという。
本書には、日本福音ルーテル教会の立山忠浩総会議長による「宗教改革五〇〇年を記念して」を筆頭に、『キリスト者の自由』本文の抄訳(徳善義和訳、9~22ページ)とその解説である「『キリスト者の自由』を読む人のために」(23~28ページ)、「主要テーマをめぐって」(29~112ページ)が続き、そして座談会「二一世紀に『キリスト者の自由』を読む」の記録、参考文献、あとがきが収められている。
「主要テーマをめぐって」では、『キリスト者の自由』における自由、律法と福音、信仰義認、全信徒祭司性、信仰と行為、愛の奉仕がそのテーマとして解説されている。
本書は、日本福音ルーテル教会が宗教改革500年記念事業の企画の1つとして掲げた推奨4冊の最後の書である。初めは、12年に出版された徳善義和著『マルティン・ルター』(岩波新書)で、次に14年から毎年1冊ずつ、マルティン・ルター著『エンキリディオン 小教理問答』(14年、リトン)、フィリップ・メランヒトン著『アウグスブルク信仰告白』(15年、同)、そして16年出版の本書がこれに続く。
本書によると、ルターの『キリスト者の自由』は2部構成で、前半が「自由」、後半が「奉仕」を取り上げている。「キリスト教的人間」の自由と奉仕に関する、一見相反するように見える2つの命題から始めて、ルターは30の項目にわたって丁寧に説いていく。
本書は、『キリスト者の自由』を単に解説するだけにとどまらない。『キリスト者の自由』を500年前のみならず、現代の私たちがどう読めるか、どんな問題が浮かび上がるのか、何が21世紀の私たちにとって大切なことなのかが、座談会形式で論じられているのが、その1つの特色である。
本書の狙いは、「キリスト者にとっての福音に与(あずか)る喜びと生き方を学ぶため」だと、立山議長は記している。宗教改革500年を前に、世界の歴史の中でルターの宗教改革を今あらためて考えようと、『キリスト者の自由』を読み直す人にとって、本書はそのための助けとなるだろう。
ルター研究所編著『「キリスト者の自由」を読む』(2016年8月、リトン)