「先祖の墓参りをするだけで成功できる! 幸せになれる!」と説き、「手から出る“波動”でがんも消す!」という「墓信仰X」(以下、X)の“Y先生”に会ってみたい!! 日焼けサロンの常連客とオーナーの会話を偶然傍らで聞いた私は、「ぜひ紹介してください!」と、その場でオーナーにお願いしました。 その時は、それが「新興宗教」だという認識はなく、どちらかというと、「占いサロン」や、「瀬戸内寂聴」さんの説法会のようなものという捉え方でした。
出入りも自由で特別な入会手続きは不要、話を聞くのも無料、病気の癒やしや奇跡を頂いた方たちからも決まった額の謝礼を要求することはなく・・・ただ“気持ち”として、皆さんが自発的に幾らか包んで置いて行かれる程度・・・ということでしたから、不安はあまり感じませんでした。それよりも、「会うことで私は変われる!」という期待感で、心の中は満タンでした(笑)。
そしてついに、Xに行く当日を迎えました。Xのサロンは、私鉄沿線の小さな駅の近くにありました。私は、その駅に着くと、言われた場所に向かいました。それは、高架下にある公園でした。
到着すると、約100人を超える大勢の人たちがズラリと一列に並び“何か”を待っていました。周りから見れば、異様な光景であります^^;)。それは、Xの信者たちでした。
毎週2日、決まった時間にその場所で、Y先生から「波動」をもらうための番号札が配られるのです。その札は来た順ではなく、ランダムに切られて配布されます。割り当てられた番号が、その日自分に“神様”が決められた順番、ということでした。
私が行き始めた当初は、来た人全員に波動を入れていたので、明け方までかかっていましたが、その後、“啓示”があったとかで、ある時から1番から30番までの番号札を引いた人だけが、その日に波動をもらえる、というルールに変わりました。
しかし、「波動をもらえないと死んじゃう!」とか、「仕事が失敗する!」などと言って、入れてもらうまで帰らない人がほとんどで、また、Y先生も待っている人には全員波動を入れてあげるため、結局毎週のように朝までコースは変わりませんでした。
今思い返せば、まさに信者の人たちは皆、「恐れと不安」で完全に縛られていた訳ですが、当時の私は、それを悟ることができませんでした。なぜなら「とにかく、このままでは芸能界で生き残れないかもしれない! 私は絶対成功したい!」という、強い思いに盲目にされていたからでしょう。
彼らに混ざり、私も列に並び、番号札が配られるのを待ちました。しばらくすると、お手伝いの方がやって来て、並んでいる人数を数え、その人数分の番号札をトランプのように切り始め、最前列の人がそれに「ストップ」をかけ、止まったところでカードを配っていきました。
その時の正確な番号は忘れましたが、60番くらいだったと思います。私は列のかなり後ろの方に並んでいたのですが、私よりずっと後ろの方に並んでいた中年の女性が、「やったー!! 3番だわ~!!」と喜びの歓声を上げると、その友達らしき女性が、「お墓参りに行ってきたからよ~!!」と言って、うらやましそうに大げさに感動していました。
後で知るのですが、お墓参りに行った後、またお墓参りに行こうと決めてから番号を引くと、早い番号が当たるということでした。Xの“神様”が行いを褒め、報いてくださった結果という訳です。(ここから私は、「十戒」にある「偶像を拝んではいけない。仕えてはいけない」というルールに違反した人生を、イエス様に救われるまでの20年余り、送り続けていくことになるのです)
初日に与えられた約60番が巡ってくるのは、夜の10時を過ぎるだろうということでしたが、せっかく決心して来たわけですから、「絶対に“波動”というものを頂く!!」と決め、番号札を握りしめ、Y先生の待つ「X」のサロンへと、信者の方たちに付いて向かいました。
公園から徒歩2分ほどの場所に立つマンションの地下1階に、サロンはありました。地下といっても、大きな窓が部屋の2面にあり、日が差し込み、照明も明るく、また胡蝶蘭やバラといったゴージャスな花が至る所に置かれ、18世紀の英国様式のクラシカルな高級家具がズラリと設置され、なんとも優雅な雰囲気です。その部屋の奥にミスマッチに置かれた、「波動」を入れてもらうために使うマッサージ用の施術ベッドが1台・・・と、パッと見の印象は、おしゃれな「整体院」といったところでした。
ただ、中央に設置された、約150センチの青銅で造られた緑色の「観音像」が、若干「宗教施設」の感じを出していましたが、一般的に想像する、梵字(ぼんじ)が書かれた掛け軸があるとか、陰陽道のマークが大きく天井に描かれているとか、薄暗~くて、ろうそくの火が怪しく揺れる中、α派を放つヒーリング音楽が流れている、というような・・・つまり、私の洗脳問題を取り上げた、TBS「爆報THEフライデー」の再現VTRで登場した「宗教施設」映像とは実際、随分違ったものでした。(「爆報~」映像の方が、一般の方にはきっとイメージしやすかったのでしょう(^^;))
畳30畳にも満たない、しかもいろいろな物が置いてあって使用面積はさらに小さいその部屋に、100人近い人がひしめき合い、ギュウギュウのすし詰め状態になって座るのです。(ほぼ毎回でした)
そして、ついに「墓信仰X」の教祖“Y先生”が登場したのです!(つづく)
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