ルーマニア正教会は、6月にギリシャのクレタ島で行われた正教会聖大会議に対して最近同国内で否定的な反応が出てきていることに対し、22日、公式サイトで「信仰に関するいかなる説明も、教会の分裂ではなく交わりのうちに」と題する公式声明を発表した。
それによると、同教会聖シノドは16日、ダニエル総主教を議長とする会合で、このような反応に「悲しみをもって言及しました」という。
「ルーマニア総主教庁が幾度となく強調してきたのは、クレタ島での会議は新しい教義を定式化したわけではなく、むしろ、正教会が1つの聖なる公同かつ使徒的なハリストス(キリスト)の教会であることを公言したということであり、『教会の分裂ほど神の怒りを買うものはありません。たとえもし私たちが何万もの栄えある行いを達成したとしても、教会の十全性を断片へと切り刻んでいる私たちは、彼の体をズタズタに切った者たちと変わらないほど痛い罰に苦しむのです』と述べた聖ヨハネス・クリュソストモス(金口イオアン)の言葉を想起し、教会の平和と一致があらゆる責任をもって保たれるよう、常に強く求めてきたということなのです!」と同シノドはこの声明でエフェス(エフェソ)に関する金口イオアン説教集11から引用して記した。
金口イオアン(ヨハネ)は、4世紀の代表的聖師父でありコンスタンチノープルの主教。正教会で「三成聖者」として特に重要視されている聖師父の1人で、説教が巧みであることから「金の口」を持つと言われたという。
「しかしながら、私たちは自らの魂の中で悲しみをもって述べるのですが」と同シノドは続けた。「熱狂的で有害な形で、一部の反抗的な人たちが、クレタ会議はエキュメニズムを信仰の教義として公言したとうそや誹謗中傷をもって述べ、特定の聖職者や信者たちを迷わせ、そしてある聖職者が、このうそを信じて、自らの主教を記憶する聖体礼儀を非合法的にさえぎり、そうして正教会の平和と一致を彼らの分断的な態度によって乱したのです」
同シノドは、「クレタ会議や他の幾つかの正教のシノドのいずれも、エキュメニズムを信仰の教義として公言したことはありませんし、それはどの合法的な正教のシノドもエキュメニズムを『全部異端』と公言したことがないのと同じです」と強調。「従って、クレタ会議に対する反対派がもたらした非難は不当であり、無責任であり、正教会の一致のためには有害であります」と批判した。
正教の視点から見ると、明快なエキュメニズムが代弁するのは信仰の教義ではなく、キリスト教の歴史の間の数世紀にわたって現れてきた、教派をめぐる嫌悪と暴力的な対立に満ちた論争に代わる、ハリスティアン(キリスト教徒)同士の対話と協力という霊的な態度なのだと、同シノドはこの公式声明で述べている。
「エキュメニカル運動は、西洋のキリスト教宣教師たちが愛の福音をアフリカやアジアのハリスティアンでない人たちに説いた20世紀の初めに生まれましたが、その一方で、ハリスティアンたちは多くの敵対的な教派へと自ら分裂し、お互いに嫌悪しては争い合い、彼らの態度は他の宗教と市民社会の前で否定的な宣教の証しとなっています」と同シノドは記している。
「異なる教派のハリスティアン同士におけるこの対話の運動に参加してはいるものの、正教会は、時がたつにつれて自ら分裂した正教以外のハリスティアンたちの一致は、分裂していないハリストスの教会の信仰に基づいてのみ回復され得るのであり、それは私たちが正教(二ケア・コンスタンチノープル)信経において告白する1つの聖なる公同かつ使徒的な教会である、正教会だと考えてきました」
「この意味で、正教会は、他のハリスティアンとの対話において、それがまさにハリストスの1つの教会の証しをもたらすと考えており、それから彼らは、正教の信仰からの逸脱によって、時がたつにつれて分離したのです」と同声明文には記されている。
その一方で、「もちろん、どの正教のハリスティアンも、もし自分が正教の信仰を失うのが怖いのであれば、他のハリスティアンたちとの対話を進めたり協力をする義務を負うことは決してありません。同時に、他の教派のハリスティアンたちと社会の実際的な諸問題において神学的な対話を進めて協力する全ての正教のハリスティアンたちが正教の裏切り者たちであると見なすのは不公平なことです」と同声明文は強調している。
「平和をつくる者である正教のハリスティアンは、もし他のハリスティアンたちとの対話のうちに正教の信仰を告白し、何の妥協もしないのであれば、熱狂的になることなく正教に忠実でいられるのです」と、同声明文は付け加えている。
さらに同シノドは、「(ルーマニア正教会の)高位聖職者を批判し、私たちの教会の高位聖職者にそむくよう一部の聖職者や信者を煽動(せんどう)するためにルーマニア総主教庁の教区に入って来た、2つの姉妹正教会出身のある神学者や聖職者(神父と高位聖職者)たちの非合法的で攻撃的な態度に驚きをもって気付いた」と述べた。
その上で、モスクワ総主教庁とギリシャ正教会の名前を挙げ、「この理由のために、ルーマニア正教会の聖シノドは、ルーマニア総主教庁の教区で彼らの司祭や高位聖職者が、不服従や反抗そして分離をそそのかし、非合法的に攻撃的で乱暴な活動を実行している状況について、それらの姉妹正教会の総主教に知らせることを決定しました」と強調した。
「1つのシノドはもう1つのシノドによってのみ裁かれ得るということを無視して、クレタ会議についての誹謗中傷や反抗の行動に関わっている聖職者や修道者および信徒たちは、正教会の分裂および平和と一致を乱したことの重大さに関する平和的な対話と合法的な説明によって、静粛を命じられるでしょう」と強調。同様に、「反抗と分裂の状態を続け、正教会の平和と一致をわずらわせる聖職者や修道者および信徒に、秩序をもたらすために懲戒的な運営上および合法的な制裁が適用されるでしょう」と続けて強く述べた。
「第二全地公会(381年)に参加したシノドの聖師父たちが、当初のシノドの文を明確にし完成させるために、第一全地公会(325年)の聖師父たちによって定式化された信経の文に3つの削除と10の追加ないし改訂を行ったのであれば、ハリストスの正教会が持つ平和と一致に危害を及ぼす誤った解釈を防ぐために、かえって将来の正教会聖大会議はクレタ会議によって定式化され承認された文書を説明し、かすかににおわし、発展させることができるということも想起されました」と、ルーマニア正教会の聖シノドは記した。
さらに、同聖シノドは、「この点において注目すべきなのが、ブルガリア正教会の聖シノドの決定が、たとえある批判的な意見をもたらしてはクレタ会議の幾つかの文書に対する将来の改訂を提案したとはいえ、次のように決定したことです」と述べ、「他の全ての正教会―クレタ島の祭りに参加したところと参加しなかったところの両方と、依然として兄弟としての領聖・霊的・教義的および教会法上の交わりのうちにある」というその決定文の一部を引用して強調した。
その上でルーマニア正教会聖シノドは、「結論として、正教の信仰についての提示に関するどんな説明も、反抗と分裂の状態のうちにではなく、教会の交わりのうちに行われなければなりません。なぜなら聖神(聖霊)は、同時に、真実の神(しん)*(*「神」の右肩に○、訳者注:神の霊のことを日本正教会ではこのように記す)(イオアン=ヨハネ=福音16章13節)であり、そして交親(こうしん)の神(しん)*だからです」と結んだ。