Letsショータイム!牧師タイム!
時計は午後8時、牧師バー「ショータイム」の時間だ。藤原さんがギター片手に登場した。ショータイム(牧師タイム)では、毎回キリスト教にまつわる話や歌が披露される。
「今日はフランスにあるテゼ共同体という男子修道会から始まり、世界で歌われている歌を歌います! シンプルなフレーズを繰り返す歌なので一緒に歌ってください。簡単でしょ、簡単でしょ?」というリードのもと、「いつくしみと愛のあるところ」が歌われた。
続いて歌われたのは、名優シドニー・ポワチエが主演し、黒人俳優として初のアカデミー賞を受賞した1950年代のハリウッド映画「野のユリ」の主題歌「エィメン(Amen)」。
「この映画では東ドイツから移住してきたシスターたちが、アメリカの田舎で働きながら教会を作ろうとします。彼女たちは毎日グレゴリオ聖歌を口ずさみながら農作業をしてお金を貯め、建材を少しずつ購入して聖堂を建てようとするんです。ある日、たまたまそこにバプテストの黒人(シドニー・ポワチエ)が訪れ、「もっと明るく元気になれる賛美歌を教えてあげよう」と言って歌うのが、この歌です。「エィメン」は英語のアーメン。これが繰り返し歌われます。キリスト教でよく言う“ゴスペル”とは、“福音”つまり喜びの知らせという意味があります。そもそもゴスペル音楽は黒人奴隷の人たちが過酷な労働を終え、日曜日に教会に行って祈り歌う中から生まれた音楽なんです。では、一緒に歌ってください」と言って、「エィメン」を共に歌った。
なぜ「牧師バー」を?
藤原さんに牧師バーを始めた理由を伺ってみた。「京都にはお坊さんがやってる『坊主バー』もあるし、やってみたいなと思っていたんです。この店のマスターが20年来の友人なので、以前からお店でひっそりやっていたんですけど、2年前からは教会のホールと隔週で開くようになりました。ただ教会が忙しい時期はお休みなので今回で20回目ぐらいです。キリスト教の教会は敷居が高いけど、こういう形なら来やすい方もいるかなと思ってやっています」とのこと。
お店の常連さんや教会の方のほかにも、友達に連れられて、あるいは口コミで来る人も少しずつ増えてきたという。9時を過ぎてぽつぽつ3人ほどの新たなお客さんも来店した。
「あと目立つのは中年男性の方がけっこう来られますね。ミドルエイジクライシスというように、いろいろな悩みを抱えてる方も多いんでしょうけど、普段は家族や仕事で忙しくて教会に来れないけど、夜こういう形なら来やすいし、話しやすいんだと思います。京都なので、これからはいろいろな宗教の方に来ていただいて、宗教間対話の場になってくれたらいいなあと思ってます」
深夜礼拝
お客さん同士の話も弾む中、10時半になると“深夜礼拝”の時間だ。といっても、店の思い思いの席に腰かける中、再び藤原さんが真ん中に立って聖書朗読とお祈りと賛美歌を歌うシンプルスタイルだ。
この日、朗読されたのは新約聖書のエフェソの信徒への手紙2章13節だった。「しかしあなたがたは、以前は遠く離れていたが、今や、キリスト・イエスにおいて、キリストの血によって近い者となったのです」
続いて、藤原司祭が「今日出会った一つ一つの出来事の中で、良いことを私たちに、悪いことをあなたが担ってください。豊かな休息を私たちに与えてください。アーメン」と祈り、「主の祈り」を歌った。
そして最後には再びギター片手に、日本各地でテゼの歌を用いた祈りの集いを行っている、黙想と祈りの集い準備委員会編集の歌集「うたえ 暗闇にとどまることがないように」から、塩田泉神父作曲の「私は裸で 母の胎を出た」を歌った。
「私は裸で母の胎を出た 私は裸でそこに帰ろう 主は与え 主は取られる 主の御名は主の御名は ほめたたえられよ」
(参照:ヨブ記1章21節、「私は裸で母の胎から出て来た。また、裸で私はかしこに帰ろう。主は与え、主は取られる。主の御名はほむべきかな」)
「これで今回の牧師バーは営業終了です。ご来店ありがとうございましたー!」という声と共に、この日の「牧師バー」の営業は終了。ただし、お店はまだまだ営業中なので、お客さんは思い思いに話に興じている。
教会への帰り支度をしながら藤原さんは最後に、お客さん一人一人にクリスマス礼拝の案内を手渡してこう言った。「牧師バーは年内2回やります。あ、でも、クリスマスの日にはちゃんと教会に来てくださいねー」
いただいたクリスマス礼拝のパンフレットを手にほろ酔い気分で家路につきながら、やっぱり最後は牧師さんそのものなんだなぁと感じたのだった(笑)。
<牧師バー>
日時:毎週金曜日午後6時から10時まで
年内は「年忘れ牧師バー」。12月28日(水)は午後6時から10時まで京都聖マリア教会(左京区)の会館ホール、30日(金)は午後6時から10時半まで「ぐるぐるカフェ」で開催。料金は12月28日が千円(飲み放題)、30日が1500円(飲み放題)。差し入れ・飛び入りライブ大歓迎。
問い合わせは、藤原さん(メール:[email protected]、日本聖公会聖マリア教会ホームページ)。