米キリスト教出版社「クロスウェイ」は、英語標準訳聖書(English Standard Version=ESV)の訳文を、今後は将来の全ての版で変更しないことを決定したと発表した。これは、欽定訳聖書(King James Version=KJV)の訳文が約250年間変更されていないのと同じ扱いとなる。今回の決定に際し、ESVは29節の中の52単語が変更され、これがESVの最後の改訂となる。
クロスウェイの理事会とESV翻訳監督委員会は、ESVを2016年夏から始まった著作権の存続期間中、訳文の改訂をせずに残すことを満場一致で決定した。クロスウェイはESVを、「1998年のクロスウェイの理事会によって権限を与えられて開始された17年以上に及ぶESV翻訳監督委員会の包括的な働きの頂点」と述べている。
クロスウェイは、今回変更された52単語に関して、「ESVの訳文への非常に限られた数の変更であり、このような変更はESVの訳文の正確さ、精密さ、理解をさらに高めるものです」と述べている。
クロスウェイはESVについて、「可能な限り、原典の正確な言葉遣いとそれぞれの聖書著者のスタイルを捉える」ことを求めた「本質的に逐語的な」翻訳と表現している。
クロスウェイの理事会とESV翻訳監督委員会は、「彼らの最高の責任が委ねられたものを守ること(テモテ一6:20)、すなわち、ESVに訳された神の御言葉を守り、保存すること。そしてこの神聖な文書が託されたことに伴う重大な責任を十分に自覚しつつ、それを行うこと。この働きは、主の恵み、憐(あわ)れみ、力、摂理、知恵に全く依存する時にだけ成し遂げられると理解し、私たちの三位一体の神、父と子と聖霊の栄光のためのみに、これを行うこと」であると確認した。
変更された聖書の箇所の1つ、創世記3章16節の変更後の訳文は、「Your desire shall be contrary to your husband, but he shall rule over you(あなたは夫に逆らうが、彼はあなたを支配する)」となっている。以前の訳文は、「Your desire shall be for your husband, and he shall rule over you(あなたは夫を求めるが、彼はあなたを支配する)」であった。
列王記上8章48節は、「If they repent with all their mind and with all their heart in the land of their enemies(もし彼らが敵地で精神を尽くし、心を尽くして悔い改めるなら)」から、「If they repent with all their heart and with all their soul in the land of their enemies(もし彼らが敵地で心を尽くし、魂を尽くして悔い改めるなら)」に変更された。
エフェソの信徒への手紙1章5節の以前の訳文は、「He predestined us for adoption as sons through Jesus Christ, according to the purpose of his will(神は、ご自分の目的に従って、私たちをイエス・キリストを通して息子として養子とすることを、あらかじめ定めてくださいました)」であったが、現在は「He predestined us for adoption to himself as sons through Jesus Christ, according to the purpose of his will(神は、ご自分の目的に従って、私たちをイエス・キリストを通して息子として、ご自分の養子とすることを、あらかじめ定めてくださいました)」になった。
ヤコブの手紙2章10節は、「For whoever keeps the whole law but fails in one point has become accountable for all of it(なぜなら、律法全体を守っても、1つの点で失敗する者は誰であっても、その全てに責任があるのです)」から、「For whoever keeps the whole law but fails in one point has become guilty of all of it(なぜなら、律法全体を守っても、1つの点で失敗する者は誰であっても、その全てで有罪となるのです)」に変更された。
クロスウェイは、「ESVの翻訳が完成した今、主がESVをお用いになり、祝福し、ご自身の教会と福音のため、『地の果てにまでも』(使徒13:47)ご自身の聖なる目的を成し遂げてくださるように(イザヤ55:11)、『主の言葉は永遠に変わることがない』(ペトロ一1:25)と確信しつつ、私たちは自分たちの働きを主の御手にお返しいたします」と述べた。