多数のクリスチャンが23日、欧州連合(EU)からの離脱に賛成の票を投じた。
保守党のマイケル・アッシュクロフト氏の調査によると、キリストへの信仰を告白する人の58パーセントが、EU離脱に賛成の票を投じた。これは、英国全体の離脱賛成が52パーセントだったことと比べると、数値が高いことを示している。この数字は、7割が残留に投票したイスラム教徒やヒンズー教徒の有権者と比較すると、より鮮明になる。
このような結果になった理由は幾つか考えられる。
どうやらその理由は民族性に関係しており、信仰とはほとんど無関係のようだ。過去と比べれば少なくなったものの、英国のキリスト教徒のうち93パーセントは白人だ。それとは対照的に、英国在住のイスラム教徒の3分の2はアジア系である。アッシュクロフト氏の調査によると、アジア系の67パーセントと黒人の73パーセントは残留に投票しているが、白人は47パーセントだけである。
あるいは年齢と関係しているのかもしれない。2011年に行われた英国の国勢調査では、キリスト教徒だと答えた人の5人に1人は65歳以上だ。英国在住のイスラム教徒の半数近くは25歳未満であり、それに比べるとはるかに年齢が高い。また、18~24歳のうち73パーセントが残留に投票しているのに比べ、65歳以上で残留に投票したのは40パーセントだけだ。この数字を見れば、年齢が指標になっていることは明確である。
しかし、EUに対する信仰的疑念の底流は、英国で拡大した。その疑念は、今回の投票で有権者が意識してきた移民問題や統治権、経済や民主主義、その他とは何ら関係がない。
多くのブログやウェブサイト、また「預言の言葉」と呼ばれている見解が、EUの霊的側面に関する恐れを助長したのだ。「預言的」とされるウェブサイトの多くは、極端な陰謀論と紙一重だが、EUの闇ともいえる一面に警鐘を鳴らしている。
「エレル・ミニストリーズ」という影響力のあるブログは、キリスト教徒がEU離脱に賛成すべき「深い霊的な理由」について論説していた。投票翌日の朝には、「神は語られた」というタイトルで、投票結果は「多くの祈りに対する答えだった」「神は英国を、EUの可視的な霊的支配から解放してくださった」と、ブログ主のピーター・ホロビン氏は書いている。
同様に、「カンザス・シティー国際祈りの家」のワーシップリーダーを務めるジュリー・メイヤー氏は、「(神の)目は欧州に注がれている」と述べた。「欧州に対する預言」というタイトルのユーチューブの動画の中で、メイヤー氏は2012年にこう述べている。
「主は捕らわれ人たちを自由にします。それは英国から始まるでしょう。主は言われます。『英国を注視していなさい』」
「いまだかつてない大いなることが英国に訪れようとしています。野火のようにです。あなたがたは、英国の素晴らしい物語の一部です。その筋書はまだ完結していません。物語は、これから益々大きく展開していきます」
ホロビン氏とメイヤー氏は影響力のあるカリスマ派のキリスト教徒で、反EUのメッセージを伝えている。彼らが主に意識しているのは、EUには邪悪な霊的力が働いているということだ。
この信条の中心には、雄牛にまたがる女性像が欧州のシンボルになっていることがある。このシンボルは、ギリシャ神話のエウロペにちなんでEUが選んだもので、多くのEUの公邸や建造物、書類などに見られる。
しかし、一部のカリスマ派にとって、このシンボルはヨハネの黙示録17章に出てくる「赤い獣にまたがっている一人の女」にまつわる、黙示的な警告をほうふつとさせるのだ。黙示録によると、獣にまたがっている女は、「地上の忌まわしい者たちの母」であり、神によって滅ぼされることになっている。
また、フランスのストラスブールにある欧州議会のビルが、ピーター・ブリューゲルが描いた、創世記11章の「バベルの塔」を模倣していると指摘する者もいる。EUの支持者は、それは欧州が今後も発展することを象徴するものだとしているが、一部のカリスマ派にとっては、EUが神に敵対することを象徴している。彼らをさらに怒らせたのは、EUが「多くの言語、一つの声」をスローガンにしたことだ。
EUに対する信仰的疑念の大半は、米国で生まれている。著名な伝道者ビリー・グラハム氏の息子であるフランクリン・グラハム氏をはじめとする福音派指導者らは、今回の投票結果は「歴史的」で「栄光溢れる機会」となったと評価している。
こうした一握りのキリスト教徒たちが、EU離脱に投票した英国のキリスト教徒だと自認する58パーセントの人々に、どこまで影響を及ぼしたかを推し量ることは難しい。
だが、ほんの一部だとしても、彼らが幾つかの教会に影響を及ぼしたことは確かだ。福音派のキリスト教徒である自由民主党の党首、ティム・ファロン氏の懸命な努力にもかかわらず、一部の英国国教会の主教らが恐れていた通り、EUは反キリスト教的だとする漠然とした概念が、キリスト教界に根づいた格好だ。
アッシュクロフト氏の調査では、全回答者の54パーセントがキリスト教徒だった。推論がどうであれ、英国のキリスト教徒の多くはEUに懐疑的で、離脱に票を投じた。EUの経済的、霊的、文化的利得に関してキリスト教徒たちを説得できなかったことは、EU残留派にとって壊滅的な失敗であり、英国の姿を永久に変える結果となってしまった。