欧州連合(EU)からの離脱という国民投票の結果を受け、英国中が揺れ動く中、同じく衝撃を受けた教会指導者たちは英国の決断を受け入れることに苦闘した。
国民投票の結果は、強くEU残留を訴えてきた英首相を辞任へと促し、一方で、野党・労働党のジェレミー・コービン党首に対しては、その指導力への不信感を沸き起こしている。この数十年間で最大の政治的変革に、英FTSE100種総合株価指数は8パーセントも下落した。
投票日翌日の朝、英国民が目覚め、51・9パーセントがEU離脱に投票した結果を知ったとき、英国国教会のカンタベリー大主教とヨーク大主教は英国民に、「謙遜と勇気」を求めた。両大主教は、EU残留を支持していた。
英国国教会の2人の指導者は、「一致、希望、寛容は、これから始まる移行の期間を乗り越えさせ、確信と成功を明らかにするだろう」と述べた。そして、「特に、新しい方法で欧州諸国と関わるようになる中で、世界の公正の追及のために重要な役割を担ってゆく、良い英国を建て上げることに向かって前進できるように祈ろう」と語った。
EU残留を強く支持してきたダラム主教ポール・バトラー氏も同様に、調和を促すコメントをツイッターに書き込んだ。
「12年前の今日、私は主教として叙任されました。私は祈りと指導の任に召されたのです。これは今も同じです。癒やしと恵みが、私たち全国民に必要とされています」
しかし、残留を支持してきた他の教会指導者たちは、より強固な抵抗を示した。
ギルフォード主教のアンドリュー・ワトソン氏は、EU離脱への恐怖をためらわずに繰り返した。ワトソン氏は以前、米大統領選の候補者であるドナルド・トランプ氏と共に、EU離脱は悪夢のシナリオの1つとなるだろうと語っていた。
「欧州大陸のわれわれの友人たちへのメッセージ:われわれの48・1パーセントは、これ(EU離脱)が非常に悪いアイデアだと思っていることを心に留めてほしい」
バプテスト派の牧師で、キリスト教慈善団体「オアシス・トラスト」の創立者であるスティーブ・チョーク氏も、同じように独断的に次のように語った。
「これが『YouGov』(英国の世論調査会社)による各年齢層の投票結果だ。18〜24歳:75%残留、25〜49歳:56%残留、50〜64歳:44%残留、65歳以上:39%残留。若者たちは一致してEU残留が良いと信じているのだ!」
一方、英国のイングランド・ウェールズ地区のカトリック教会トップであるウェストミンスター大司教、ビンセント・ニコルス枢機卿は、より温和な発言をした。ニコルス氏は、英国の新しい航路は「全ての人々にとって要求の多いもの」となるだろうと認めた。ニコルス氏は投票前、歯に衣を着せない発言をしていた教会指導者の1人で、EU離脱は「複雑な問題」を引き起こすと警告していた。キリスト教の伝統には「物事をつなぎ合わせるものがある。必然的にさらなる分裂をもたらす、分裂の道を進んでゆくようなものについても」などと語っていた。
しかし、投票結果が出た直後、ニコルス氏は英国が「寛容という立派な伝統」の上に立つことを祈った。
「われわれの祈りは、意見の深い不一致にもかかわらず、全ての者たちがこの務めにおいて、尊敬と礼儀正しさをもって働くことである。われわれはこの過程の中で、最も弱い者、特に良心的でない人々と人身売買の商人たちにたやすくターゲットにされる人々が支えられ、保護されることを祈る」
英国国教会の欧州教区司教であるロバート・イネス氏は、EU離脱の衝撃を鎮めるように、「世界はまだ回っている」と語った。
アングリカン・コミュニオン・ニュース・サービ(ACNS)の記事でイネス氏は、アイルランドとスコットランドの未来に「特別な懸念」を示した。そして、英国が「新しい未来」を見いだすとき、「聴くことと癒やし」の必要があると述べた。
イネス氏は続けて、「熾烈な」投票運動は、どれだけ多くの英国人が「主流のロンドンとブリュッセル中心の政治的談話」とかけ離れていると感じているかを示したと述べた。欧州が生き延びるために、イネス氏がEUの指導者たちに政治的構造を改革するよう要求したとき、他の欧州の人々は彼ら自身の不満を語ったとイネス氏は述べた。
「和解の務めは決してなされていない。私は自分の子どもたちと孫たちにも、自分の世代が知っているような欧州の平和を楽しんでもらいたい」
英国福音同盟(EA)のスティーブ・クリフォード総主事は、「神は、この投票結果に慌てるようなことはない」と語った。これまでは「皮肉な投票運動」と批判していたが、離脱・残留の両派の間に橋を架けるための努力が今なされなければならないと語った。
「和解するには、正直さと努力が必要だ。自分と異なる意見の人たちに、尊敬の念と開かれた態度を示すことが求められる」
「この投票が白日の下にさらした相違を無視することはできない。しかし、その相違がわれわれを規定することもできない。われわれの友情の手は、投票ではできない働きをしなければならない」