日本福音ルーテル教会と同東教区は4月24日、同教会東京教会で、ドイツ福音主義教会(EKD)宗教改革500年事業特命大使であるマルゴット・ケースマン牧師をゲストに、宗教改革500年プレイベントとして「ドイツフェスタ」を開催した。
このイベントは、22日から29日まで在日本韓国YMCAなどで開かれた第7回日独教会協議会との関連で行われたもの。
午前11時からの礼拝では、新約聖書の使徒言行録13章44~52節とヨハネの黙示録21章1~5節、ヨハネによる福音書13章31~35節の朗読の後、ケースマン牧師が約100人の会衆に対してドイツ語と英語で通訳を通じて説教を行った。
その中でケースマン牧師は、「私たちがさまざまな経験の中でとどめられるということがあったにしろ、福音のメッセージは世界に出て行きます」と語った。
そしてケースマン牧師は、来年迎える2017年の宗教改革500周年について、「私たちは国際的な信仰共同体の中で、このお祝いを祝おうとしている。世界的な交わりの中で、教派を超えたエキュメニカルな交わりの中で、これを祝おうとしている。神の出来事がそこにあるのです。神の目が私たちをとらえて、愛の業に、正義の業に、和解の業に、私たちを招いているのです。この霊の働きの中に私たちもまた自らを委ねることができるように」と述べ、神の豊かな祝福を祈った。
正午からはワインやビール、ソーセージなどドイツの飲み物や食べ物がチケットを購入した参加者に用意された。このイベントを準備した日本福音ルーテル教会広報室長の安井宣生牧師(本郷教会)によると、これは銀座にあるドイツの飲み物や食べ物の専門店との協力で実現したのだという。
午後1時からはトークセッションなどが行われ、初めに日本福音ルーテル教会の立山忠浩総会議長があいさつ。「われわれのルーツは熊本にある。今この時にも被災者支援を行いながら自分たちの生活の確保のために大変な思いをしている兄弟姉妹がいるということを覚えながら、宗教改革500年を共に記念する会にしていきたい」と語った。
その後、クラリネット奏者の山澤陽子さんが、ピアノの伴奏で、シューマンの「おとぎの絵本」第2楽章・第4楽章を演奏した。
続いて、宗教改革者のマルティン・ルターの顔が描かれたバナーのうち、その顔が一部くりぬかれた穴から、安井牧師が東海道中膝栗毛の弥次さん・喜多さんよろしく顔だけを出し、会場の笑いを誘っていた。
そして、「なぜマルティンという名前がつけられたのでしょうか?」など、ルターと宗教改革に関するクイズが20問にわたって行われた。
さらに、日本YWCA会長の俣野尚子さんが、角本茜さんによるピアノ伴奏に合わせて、フルートの演奏を披露。グリーンスリーブスなどを演奏した。
その後、ケースマン牧師が宗教改革500周年に向けた準備について、「500周年は本当に特別な時。10年前から準備しています。トラックでヨーロッパの各都市を回ってこの宗教改革500周年をお知らせしています。来年夏に(ルターゆかりの都市)ヴィッテンベルクで世界の宗教改革大会を行います。宗教改革とグローバル化、宗教改革と霊性、宗教改革と若者などについて話し合います。誰でも参加できるので、ぜひヴィッテンベルクに来てください」などと語り、宗教改革500年のお祝いが持つ国際的な意義を強調した。
「5月28日には25万人の人たちが週末中に宗教改革を祝う礼拝を行います。10月31日にはドイツの全国民の休日になります」とケースマン牧師は語った。
この点について駐日ドイツ大使館は23日、本紙に対し、「2017年10月31日の宗教改革記念日につきましては、ルターの宗教改革500周年記念のためドイツ全土で祝日となる見通しです」と述べ、「こちらはあくまでも現時点の情報ですので、今後各州で(可能性は低いですが)変更があるかもしれない旨、ご了承ください」と付け加えた。
「フォルクスワーゲン(VW)がトラックのスポンサーです。これはとてもドイツ的なジョークかもしれませんが、(排ガス検査の不正をした)彼らはとても悪い行いをしたので、ある意味で彼らは免罪符を買ってスポンサーになったというわけです」とケースマン牧師は参加者の笑いを誘った。
ケースマン牧師によると、この国際的な宗教改革500周年では、ドイツのルターではなく国際的な宗教改革へ、反カトリックではなくエキュメニカルな宗教改革へと力点が移り変わり、2017年4月16日の復活祭には、三十年戦争を覚えて記憶の癒やしの和解に関する礼拝を行うという。
そしてルターが反ユダヤ教であったのをナチスがホロコーストを正当化するために使ってしまったことや、ドイツにいるイスラム教徒との関係から、ユダヤ教やイスラム教とのエキュメニカルな対話を行うという。さらに、ルターがみんなに聖書を読んでほしいと考えたことから、教育を受けた信仰にも力点を置くと、ケースマン牧師は述べた。
世俗化の中でドイツ東部ではキリスト教徒がとても少なくなっていることから、ケースマン牧師は宗教改革500周年を「宣教のチャンス」と考えており、そのためにルターが活版印刷というメディアを使ったように「現代の新しいメディアを使う」という。
最後に、ルーテル世界連盟(LWF)でヤング・リフォーマー(青年の宗教改革者)を務めている下川正人さんが、ヴィッテンベルクで昨年8月22日から9月4日までルーテル世界連盟(LWF)の主催でLWF加盟教会の青年同士の交流と議論を深め、宗教改革500周年に向けての具体的な行動について準備を進めたときのことを報告した。
「若い立場としてもこの記念すべき時を盛り上げていきたい」と、下川さんは語った。