「平和を実現するキリスト者ネット」の平良愛香牧師は、「宗教者は理想を信じることができます。宗教者が理想を信じないで、宗教者が夢を見ないで、誰がやるのでしょう? 私たちは信仰を持つ中で、絶対この世の中は良くなると信じて、祈り、語り、行動している」と持論を展開。「『宗教者は理想ばっかり語っている。宗教者は夢ばっかり見ている』と言われるときは『そうです!そして私たちはそれが現実になると信じているんです!』と言い続ける。それは信じていない人を信じる方向に引っ張っていく大きな力になると思うのです。それが私たち宗教者の大きな責任だと思っています」と語った。
平良牧師はまた、毎月第1月曜日夕方6時半から防衛省前で行われている、辺野古基地建設に反対する集会で、その建設に賛成している人たちから罵声を浴びせ掛けられて、「そこの仏教徒!仏教は念仏だけ唱えていればいいんだ!そこのキリスト教徒!お前たちは心の安らぎだけ語っていればいいんだ!」と言われることがあると語った。「俺が知っているキリスト教は心の安らぎだけ話して政治活動はしないと言ってたぞ!」とも言われたという。
「すごく心苦しかったんですけど、確かにそういうキリスト教も少なくありません」と平良牧師は話した。「私たちが一生懸命平和の実現のために行動しようとすると、『私も祈ってますからね』と言うけど行動してくれない人がたくさん(いる)」
「そういう私がいろんな仏教の人たちと一緒に活動していると、『ああ、仏教の人たちって一生懸命だな』って思っちゃうんですね」と平良牧師。「仏教の人たちにも同じことを言われました」と会場の笑いを誘った。
「私たちは一生懸命、社会に夢を、理想を、平和を、命を語り掛けています。けれども、語らなきゃいけない相手は内側にもいっぱいいるということです」と平良牧師は語った。「私はキリスト教の牧師をしていますが、命を神様が尊ばれている、『この状況は良くないって言っている』っていうことを、どれだけキリスト教の中ではっきり語っているだろうか? そういったことも問われます」
「宗教者であるということは、社会に対して、私たちは平和を、命を守るんだということを伝えて、力を広げていくのと同時に、私たちの中にもそのことを思い出させて、大きな力としていく責任があるんじゃないか。そのように、あらためて思います。一緒に頑張っていきましょう」と平良牧師は結んだ。
そして、日本キリスト者平和の会代表委員の吉田吉男氏は、「平和憲法を死守していかなければならない」と述べるとともに、「憲法がどんなに変わったってわれわれは平和を建て上げるということについて、不退転の決意でこれから望まなければならないというふうに思っております」と語った。
さらに、日本イスラーム文化センター事務局長のクレイシ・ハールーン氏は、アラビア語で「あなた方に平安があるように」とあいさつ。イスラムの平安の教えについて語るとともに、日本語で「預言者様がこの世の中に来た目的は慈悲のためである」と述べた。
ハールーン氏は、同センターが行っているさまざまな活動の中から、アフガニスタンに食べ物や古着を送ったりする支援活動を紹介。「私が現地で見たのは、食べ物がなくて木の葉っぱを食べている人。それもなければ土を食べる。平和な時は葉っぱを食べられたが、アメリカが空爆を始めたときは土を食べていた」。そうするとお腹が痛くなって近くの病院へ運ばれ、命を落とした人たちもハールーン氏は見たという。
「多くの政治家が戦争ばかり考える。世界の経済は武器を売って成り立っている。いろんな国が武器を買うためにお金を使う」とハールーン氏。「アメリカの友人から聞いた話では、核兵器を管理するためにアメリカが使うお金の1割以下で、世界の全ての子どもが教育できます。全ての人がただで病院に行けます。けれども、残念ながら多くの国々が武器に多くのお金を使います」
「私はパキスタン出身で、イスラムの国に行けば日本は平和的な国だという非常にいい印象があります。日本とイスラムの間には素晴らしい歴史があります。大きなトラブルがありません」とハールーン氏は称賛した。「けれども、最近、アフガニスタンもそうですし、他のイスラムの国がいろんなトラブルのうちにあるときに、日本がお金を出しています。それは非常に残念ですね。そうすることによって、せっかく日本とイスラムの間の素晴らしい歴史があって、(日本は)平和的な国だという非常にいいイメージがあるのに、そのイメージが悪くなっているんですね」
「ですから、これから戦争にならないように、日本がそういうことに協力しないように、日本とイスラムの国々の間の素晴らしい関係が長く続くように、平和があるように、日本をはじめ全世界が平和になるように祈りたいと思います」とハールーン氏は結んだ。
閉会のあいさつをした「宗教者九条の和」呼び掛け人の石川勇吉氏は、「皆さん、私たち宗教者・信者は、命の尊厳を守る、これを具現化したところの憲法9条を守ろうというスローガンの下で宗教・宗派の違い、支持政党の違いを超えて、先進的に協働実現に奮闘してきました。この取り組みは、まさに今が正念場ではないでしょうか」と語り掛けた。
そして石川氏は、「『戦争法』廃止・憲法改悪阻止、当面する参議院選挙で、安倍政権と自民・公明与党を交代させる。そのためには、宗教者・信者だけではなく、国民各層との広い強固な協働実現が求められています。皆さん、そのためにも、宗教者・信者それぞれの真価を発揮して、知恵を、そして寛容と忍耐の精神を発揮して、協働実現に努めましょう。私たち宗教者・信者の信念を今こそ生かしていくときではないでしょうか。共に頑張りましょう」と呼び掛けた。
集会の終了後、参加者らは午後5時に築地本願寺を出発し、銀座を通って、日比谷公園に向けて「『戦争法』廃止」「憲法改悪阻止」などを訴えて平和行進をした。
平和行進の参加者らが日比谷公園に到着後、大谷派九条の会の雨森真一氏は、「(沖縄県名護市の)辺野古に基地が造られたら、私たちは、私たちの税金で、私たちの仲間に対する加害者になってしまう。もう嫌です!」などと大声で叫んだ。また、金光教非戦・平和ネットの浅野善雄氏は、「『戦争法』廃止・憲法改悪阻止の運動を広げていきたい」と語った。
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「戦争法」廃止・憲法改悪阻止をめざす宗教者・信者全国集会 アピール
この国は「今」、危機にある。
それは、70年の長きにおよぶ一人の戦死者を生み出さなかった歴史が、安保法制施行によって奪われようとしている「今」である。
それは、「過ちは二度と繰り返しません」と誓った先人たちの祈りを、憲法改悪への道筋によって踏みにじられようとしている「今」である。
それは、「経済成長」という虚妄を装いながら、実は敗戦の呪縛から自立しえない一部の政治家たちの都合によって、平和を愛する全ての人々の深い願いに応えようとしない「今」である。
しかしそれ以上に大きな危機は、この国の人々の沈黙である。
憶えば、私たち宗教者は過去の戦時下において、為政者が掲げる「正義」を称賛し、「人間の愚かさ」に目覚めさせる宗教的使命をかなぐり捨て、いのち奪われた人々の戸惑いを国策に従うことに振り向け、人々を沈黙させてきた。まさに日本の宗教界は、言葉を失うほどの恥ずべき歴史を生きてきた。その歴史を生きるからこそ今改めて、私たち信仰を持つ者は、「人間の愚かさ」とは何かに思い至らねばならない。
人は、身近に一人の戦死者が生まれた時、「殺られたらやり返せ」という微かな声に身を委ねてしまうほど誰しもが弱く、善悪を超えた深い闇に引きずり込まれていく存在なのだ。その時、人は過去を忘れ、同じ過ちを繰り返す。しかし同時に、その「人間の愚かさ」を超えて、怒り悲しむ声がある。
だからこそ今、信仰を持つ私たちは、一人の戦死者が生まれる前に、その「人間の愚かさ」を超えて、怒り悲しむ声をもって、人々の沈黙を破らんと思う。
その一歩として今、
「戦争法」廃止・憲法改悪阻止をめざす宗教者・信者全国集会に集うた私たちは、来る参議院選挙において、「戦争法に賛成する議員には投票しない」ことを呼びかける運動を、一人一人の宗教的活動の現場から全国に広げていくことをここに確認する。
2016年5月31日
「戦争法」廃止・憲法改悪阻止をめざす宗教者・信者全国集会 参加者一同
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