古代インド、ヒンズー教の流れを汲むとされるヨガ。「宗教的な意味合いが強いのでは?」「クリスチャンがヨガをやるのは、霊的にどうなの?」など、キリスト教とヨガは相いれないものと考える人が多い。
埼玉県にある戸田福音自由教会。「神と人、人と人をつなぐ」ことを教会の目標に掲げ、約8年前に開拓教会としてこの地に根を下ろした。他宗教の勢力が強く、「伝道にも工夫が必要だと感じた」と語る同教会の横山誠牧師。さらには、古くからの住人が多く、いわゆる「よそ者」を嫌う地域性に、どう教会が対応していくかも当初の課題だったと話す。
横山牧師は、教会は「四つの恵み」を地域に届けることが必要だと語る。四つとは、「心と体の休息」「真理を学ぶ」「人生を考える」「恵みを体験する」ことだという。同教会で毎週開催しているヨガ教室は、この中で「心と体の休息」に当たるのだと横山牧師は話す。
ヨガは、もともと横山牧師本人と夫人が興味を持っていた。「キリスト教会でヨガ教室をやるのは、神様の御心なのか。それとも、やはりキリスト教と関係してはいけないものなのか」と考え、祈りつつ答えを待ったという。
時を同じくして、近隣の超教派の牧師が集まる集会に出席した横山牧師は、ある牧師が教会でヨガ教室をしていることを耳にした。すぐに話を聞きに行き、講師の久保田彩さんとも会った。久保田さんが、キリスト教の信仰の上に立ったヨガ教室をやっていることを知り、戸田福音自由教会でも教室を開いてくれるよう交渉したのだった。
久保田さんは「伝道のきっかけになれば・・・」と、同教会での教室開催を快諾し、また母教会の牧師もそれに賛同したのだと話す。久保田さんは、クリスチャンになってからヨガに興味を持ち、勉強を始めた。「ヨガには、『ヨガ教典』というものがあり、その教えは聖書と大きく違っている。私は聖書にある神様を信じている。しかし、エクササイズとしてのヨガは、非常に理にかなっていると感じる。ヨガの良いところは、どんどん広めていきたい」と話している。
ヨガの儀式的なものに、合掌をして念仏を唱えるようなものもあるが、久保田さんが開催する教室では行っていない。「違和感のあるものは行わないようにしている」と話す。
ヨガ教室は、教会の会堂で行われているが、程よい温度とお香の香り、静かな音楽が心地よい。各々のヨガマットを敷いて、自分のペースでゆったりとヨガを楽しむ様子は、ここが「休息の場」であることを感じさせる。
「ヨガと教会は、共通しているところもある。教会は、イエス様が『疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう』(マタイ11:28)と言われているように、基本的に安らぎの場。ヨガもリラックスすることが目的。似ているところがあるように思う」と久保田さんは話す。
横山牧師の妻も教室に毎回参加する。「参加者の方々は非常にリラックスしているようだ。『十字架が見えるところでヨガをやると、どこか心が落ち着く』と声を掛けられることもある。公民館で行う教室などとは違い、ここは聖なる教会。皆が祈りを共にする場所。そうした空気が、参加者にも伝わっているのでは」と話す。
また、猫のポーズなどの動物のポーズをすると、その一つ一つに意味を感じ、「神様は、それぞれの動物をも意味を持って創られた方なのだ」とあらためて思うのだとも話してくれた。
久保田さんの教室の特徴は、「一人一人自分のペースでムリをしない」ことだという。「私たち一人一人を愛して、ありのままを愛してくださっている神様がいらっしゃるのですから、何も他人と比べることはありません」と久保田さんは話す。
「神様が備えてくださった人々と共に、教会が地域に仕え、人と人とをつなぐ役割を担うことができればと思う。神様が『時』と『人』を示してくださり、その方々を教会へと導くのが私の役目なのだと感じている」と横山牧師は話す。
ヨガ教室は、現在、ほぼ満席。レッスン料金は1回600円。詳しくは、同教会のホームページ。