いよいよ今月から始まる、キリスト教映画3作品の連続公開という日本初の快挙に期待が高まっている。第1弾として28日(土)に公開されるのは、イエス・キリストの十字架と復活を、ミステリー仕立てというこれまでにない新しい視点で物語化した「復活(原題:Risen)」。復活のイエスを目撃する古代ローマの司令官グラヴィアスを主人公に、彼の葛藤と闘いを中心に描き出すスペクタクル歴史超大作だ。
公開に先立つ6日、都内で行われた特別試写会の舞台あいさつに、主人公グラヴィアスの部下ルシウスを演じた英俳優のトム・フェルトンが登場。集まったファンからの質問に答え、「この映画に参加したことで僕の人生が変わった」と話した。
フェルトンは、子役として「アンナと王様」でジョディ・フォスターの息子役を演じて注目され、映画「ハリー・ポッター」8作品でドラコ・マルフォイ役で世界的に名前を知られるようになった。他にも「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」などの大作に出演する期待の若手俳優の一人。日本にもファンが多く、この日の舞台あいさつでフェルトンが登壇すると、女性ファンからは黄色い歓声が上がり、なかには感激のあまり泣き出してしまう人もいた。
冒頭のあいさつでフェルトンは、「信仰心を持っている人はどれくらいいるのか」と会場に向けて質問を投げ掛けたが、司会者から「今日はトム・フェルトンへ熱い思いを抱いている人が集まっている」と聞くと、少し照れた様子で苦笑。だがフェルトン自身も、本作に参加する以前は信仰心がなく、むしろ無神論者とさえいえるほどだったという。
そんな彼が本作への出演を決めたのは、世界で一番よく知られているイエス・キリストを新しい視点で描き出す作品であったから。「特に僕たちの世代は、特定の宗教についてこのような描き方をしている作品を、今まで見たことがないと思う。奇跡や神話的な部分を取り上げるのではなく、歴史的・記録的なイエス・キリストの真実に焦点を当てている」と、本作の特徴にあらためて触れた。
また、自身が演じたルシウスについては、「ローマのエリートとして、軍の最高峰に上り詰めたグラヴィアスを、ルシウスは非常に尊敬していた。そのグラヴィアスが、全く知らない12人のイエスの弟子と姿を消してしまう。ルシウスは、自分が見てしまった出来事と、それまでの忠誠心との間で最後まで葛藤する役柄」であると説明した。
フェルトンも宗教的な教えをどう理解すればいいのか葛藤していた過程にあったので、自身の思いを重ね合わせつつ演技をしたという。本作を見る人には「自分の人生をささげてきた全てがうそだった、と知った人の気持ちを想像してほしい」と呼び掛けた。
実際に本作を見たファンたちに感想を求めると、「感動した」という声が多く聞かれ、ファンの側からフェルトンへも「一番感動した場面はどこか」と質問があった。フェルトンが一番感動した場面として挙げたのは「グラヴィアスが復活したイエスに出会う場面」で、「思い出すだけでも涙が出てくる」と目をうるませた。
無神論者だったフェルトンは、本作を通して不可知論者(agnostic)になったそうで、「この映画に参加したことで、僕の人生が変わった」という。「イエス・キリストの物語に新しい命が吹き込まれることを願っている。新しい世代に、歴史的事実の重要性を知ってもらいたい」と本作への期待を話した。
本作の監督ケヴィン・レイノルズは、フェルトンが幼い頃から「ロビン・フッド」などの作品を通して影響を受けていた人物で、主演のジョセフ・ファインズとの共演もフェルトンが本作出演を決めた大きな理由の一つだった。実際に2人と現場を共にした感想を聞かれると、フェルトンは「最高の経験だった」と答え、特にファインズについて「素晴らしい役者で、尊敬している。今では良き友でもある」と話した。
さらに、「僕は生まれながらの馬乗りだが、マルタ島で撮影を共にした馬とは相性が悪かった。イエスの処刑の騒々しい場面では、馬をコントロールするのが非常に大変だった」と撮影中のエピソードも披露した。
親日家としても知られるフェルトンは、東日本大震災に際していち早く寄付を募り、来日のたびに寄付を行っている。今回の熊本・大分地震についても「何かをすることが自分の義務だと思っている。日本やアジアの非常に多くのファンに支えてもらっているので、そのお返しを少しでもしていきたい」と思いを寄せた。
フェルトンは、7日(土)と8日(日)にホテルグランドパレス(東京都千代田区)で開催される「ハリウッド・コレクターズ・コンベンション No.9」(ハリコレ、主催:ハリウッド・コレクターズ・コンベンション事務局)に参加し、「ハリー・ポッター」シリーズでマルフォイの父ルシウスを演じたジェイソン・アイザックスとともに、サイン会・撮影会(有料)を行う。詳細は、ハリコレの公式特設ページまで。