18日に全国公開された映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』。英クリスチャントゥデイは16日、「ポップカルチャーの流用:教会がいかにしてスター・ウォーズを使って福音を広めているか」という見出しの記事を掲載した。
「スター・ウォーズ。最新のエピソードである『フォースの覚醒』の盛り上がりの中で、世界はこのSF叙事詩に熱狂しています。そして教会もそうなりました」と、同紙のフローレンス・テイラー記者は記している。「何ですって? そう、あなたが聞いた通りです」
この記事では、スター・ウォーズをテーマとしたクリスマス礼拝を行ったり、ビデオを作ったり、果ては信徒だけでなく牧師までもが登場人物に扮(ふん)して礼拝を行ったりする各国の教会を紹介している。「教会は狂ったのでしょうか? 一見したところであなたがそう思っても、私は許してあげるでしょう。でも、もっとよく調べてみると、このポップカルチャーの明らかな流用は、教会が生まれながらにして実践していることの、新たな事例の一つなのです――つまり、聞き手と文化的に関連のあるものを取り上げては、それを使ってイエスについて語るということです。イエスさえもそれをしたのです。つまり、彼が教えた例え話の多くは、聞き手によく知られていた話で、彼はそれを、新たな啓示をもたらすものとしたのです」と記している。
オール・ハロウズ・ボウ教会(英国国教会)
このロンドン東部にある教会は、自称「スター・ウォーズオタク」のクリス・ロジャーズ牧師とその妻、ベキ・ロジャーズ牧師が指導している。教会には「ジェダイ訓練学校」があり、スター・ウォーズをテーマとした家族礼拝を月1回行っている。ロジャーズ牧師とその子どもたちは、パロディによるスター・ウォーズの主の祈り「ただ祈りましょう」という宣伝動画まで作成した。
ロジャーズ牧師は、新約聖書から霊感を受けたという。ちょうどパウロがギリシャ・ローマの世界へ入っては、ギリシャの劇から引用してエペソ人やコリント人、そしてアテネ人と関わったように、ロジャーズ牧師は、聞き手と文化的に関連性のある物語を得た。「パウロがあんなにも素晴らしく文化を取り入れては、それをキリスト教世界のために定義し直したことを、クリスチャンたちは忘れてしまった」と語った。
スター・ウォーズが明確にキリスト教的な物語だというわけではなく、「それはとてもよい物語で、子どもたちの関心をつかむ。子どもたちはそれが大好きで、それについて知りたがっている」と、ロジャーズ牧師は話した。「子どもたちがよく知っている物語を使って、子どもたちにイエスを伝えることは、私たち教会にとってよいことだ」
スター・ウォーズは、子どもたち(そして大人たち!)がイエスとキリスト教信仰を探求し、それを見つけ出すための「レンズ」の役割を果たしたのだと、テイラー記者は述べている。
「ジェダイ訓練学校」で教師たちは、特別な主人であるイエスの「見習い」になることがどんなに素晴らしいかを伝え、「あなたは誰のパダワンになるのですか?」と子どもたちに問い掛ける。帝国と戦う反乱同盟軍とちょうど同じように、子どもたちはどのように――クリスチャンとして――この世で生き、それに挑戦するのかを問われる。テイラー記者は、「フォースは――ロジャーズ牧師は『よい類比ではない。なぜなら聖霊は位格であって不思議な宇宙の物ではないから』と言ったのだが――、聖霊の位格について考える道を与えてくれる。それは『私たちの人生を導いてくださるのは誰か? 私たちの運命を統制しているのは誰か?』といった問いを考えるきっかけになる」と記している。
ベルリンのシオン教会
ドイツの首都ベルリンにあるシオン教会が20日、スター・ウォーズをテーマとした特別礼拝を行い、ライトセイバーを振り回したり、ダースベーダーなどの登場人物に扮したりする約500人の会衆でいっぱいになった。また、この映画のテーマ曲がオルガンで演奏され、出席者たちは喜んでいたという。
この礼拝は、「神学者でもありスター・ウォーズの専門家でもある」とこの教会で評判のウルリケ・ガルベ牧師とルーカス・ルーデヴィッヒ牧師という2人の若い研修中の牧師たちが発案したもの。「スター・ウォーズの狂信者を使ってただ出席者数を満たそうとするような、単なる宣伝のための芸だと思うかもしれませんが、その背後にある思考は、それより少し深いのです。この2人は、映画とキリスト教信仰との間に相似点を見いだしたといいます」と、記事は伝えている。
ルーデヴィッヒ牧師は、エピソード6の鍵となる、ルーク・スカイウォーカーが悪の皇帝の側へと引き寄せられる場面で語った、「僕はダークサイド(暗黒面)には入らない」との台詞から、ローマ書12章にある「悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい」との聖句を思い出したという。
ガルベ牧師は、「話をすればするほど、ますますキリスト教の伝統とこの映画との間に相似点を見いだしていった。私たちはこれらの類似点を会衆にはっきり示したい」と述べた。
聖マグダラのマリア教会(英国国教会)
ロンドンから北西約160キロのウスターという都市にある聖マグダラのマリア教会は、スター・ウォーズをテーマとしたクリスティングル(クリスマス・キャンドル)礼拝を行うことを決めた。同教会はこの映画を、家族や子どもたちに福音を伝えて分かち合う「理想的な機会」と見なしたという。
「善対悪というスター・ウォーズのテーマや『フォース』を世(宇宙)の光であるイエスに関連付けるのはとても単純なことだった」と、教区牧師のマーク・バッジャー氏は語った。ジョージ・ルーカスの言葉を引用し、ルーカスが「とても端的かつ率直な形で言おうとしていること」は、「神が存在し、善と悪の両面がある」ということだと述べた。
凝ったテーマと劇が入ったクリスティングル礼拝をささげるとともに、聖マグダラのマリア教会は動画を作成した。バッジャー牧師はこの経験によって「イエス・キリストの福音を子どもたちや実に大人たち(!)と分かち合う上で、スター・ウォーズや他の映画をどのように使えばいいか、多くの示唆を与えられた」と語った。
リキッド教会(米国ニュージャージー州モリソンタウン)
モリソンタウンのリキッド教会(非教派系)は、スター・ウォーズをテーマとした14のクリスマス礼拝に7000人が来ると見込んでいる。
主任牧師で創立者のティム・ルーカス牧師は、スター・ウォーズをテーマとした一連の礼拝が伝道の動機を含んだものだと認め、こう述べている。「私たちはスター・ウォーズをめぐる興奮を利用して新しい人たちに手を伸ばし、イエス・キリストを彼らに伝えたい」
「教会がいつも飾り気もなく退屈なものでなければならないなんていう規則はない。私たちリキッド教会の中心的な価値の一つは、『教会は楽しい』ということだ。クリスマスについて語りながら、一緒に笑って祝ってもOKだ。それがスター・ウォーズの登場人物に扮することやストーム・トルーパーで踊ることを意味するのなら、私はそれに全く賛成だ」
スター・ウォーズの大ファンだというルーカス牧師は、子どもの頃、「キリストの降誕場面を表す家族の人形を受け取っては、それを『スター・ウォーズ』の手足を動かせる小さな人形と取り替えていた」という。これに感化されて、今やリキッド教会では、スター・ウォーズの降誕場面人形まで登場した。
「その中心において、スター・ウォーズは霊的信仰を反映している。それは善と悪、光対闇(暗黒)の闘いであり、それは私たち皆を引き寄せることのできる魅力あるものだ」と、ルーカス牧師は述べた。
記事はこう結んでいる。「『私たちはただイエス(の教え)を行う』と言い張って、文化への関与は文化的な妥協に等しいと批判する人は常にいるだろうが、ロジャーズ牧師が言うように、その言葉の根底にある真意は、『文化をよく知らないから、自分たちの知っている宗教の世界にしがみつこう』ということだ。イエスは当時の文化に関与した。それを恐れて宗教の影に隠れるようなことはなかった。それならどうして私たちがそうしないのだろうか?」
「もしダースベーダーのマスクをかぶってライトセイバーを振り回すことが福音を広める助けとなるのなら、もちろん参加するまでだ」