キリスト教は先祖を粗末にする宗教だ、日本人には合わない。
日本人にとって先祖供養が宗教そのものになっているようですが、ここは冷静に考えてみましょう。
聖書では、族長アブラハム以来、先祖を大切に扱い、墓に葬ることも大切にしました。出エジプトの際、モーセは先祖ヨセフの遺骸を携えて出ました。ですから、本来、キリスト教徒は先祖や墓を粗末にすることはありません。
しかし、そのことと仏教的習慣に従って合掌や焼香をすることとは別です。それらは、一種の礼拝行為と考えますから、主(神)の民であり、十戒その他の教えを持つキリスト教徒にはできないことです。
けれども、キリスト教徒には「父母を敬え」との十戒の第五戒があって、親孝行を命じられていますから、孝養を尽くし、親や祖父母を親切に看取り、死に際しては感慨深い葬儀をします。〔キリスト信仰を捨てなさいとか、偶像を拝みなさいといった不信仰なことはできませんが。〕死後も、節々に記念会をして、生前を偲び、ゆかりの者が集まって思い出の時を過ごします。また、墓掃除にも出掛け、墓前を花で飾り、記念の時を持ち、残された家族の守り・祝福を神様に祈ります。そういうやり方で、キリスト者は先祖に向き合い、先祖を大切にします。決して、一般の方々に劣るものではありません。
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正木弥(まさき・や)
1943年生まれ。香川県高松市出身。京都大学卒。17歳で信仰、40歳で召命を受け、48歳で公務員を辞め、単立恵みの森キリスト教会牧師となる。現在、アイオーンキリスト教会を開拓中。著書に『ザグロスの高原を行く』『創造論と進化論 〜覚え書〜 古い地球説から』『仏教に魂を託せるか』『ものみの塔の新世界訳聖書は改ざん聖書』(ビブリア書房)など。
【正木弥著書】
『なにゆえキリストの道なのか 〜ぶしつけな240の質問に答える〜 増補版』
『仏教に魂を託せるか 〜その全体像から見た問題点〜 改訂版』
『ザグロスの高原を行く イザヤによるクル王の遺産』(イーグレープ)