キリスト教は悪いことをたくさんした。アメリカのように戦争ばかりする国もある。良い宗教とはいえないのではないか。
キリスト教がよって立つ聖書は、神の言葉と言われるとおり、間違いなく良いものです。この聖書にきちんと立っている限り、キリスト教は良い宗教だといえます。
しかし、聖書よりも組織や人間的な思惑が優先されたり、あるいは聖書以外の伝承、言い伝え、政治などを重んじると問題を起こしがちになります。(率直に言いますが)過去に次のような悪い事例を起こしました。
- 中世カトリック教会は聖遺物や聖人、マリアなどを崇拝し、守護聖人や魔女、幽霊などを認め、迷信的になりました。
- 中世カトリック教会は贖宥(しょくゆう)の理論を取り、免罪符を販売するなど、民衆をだましました。
- 中世カトリック教会の僧職者の中から腐敗・堕落する者を多く輩出しました。
- 中世カトリック社会はユダヤ人に改宗を迫り、イエスを十字架につけた罪を問い、長い歴史の中で迫害を続けました。
- ローマ・カトリック教会は十字軍を派遣し、汚い侵略戦争をしました。
- ローマ・カトリック教会は、異教徒、異端者や改革者たちを宗教裁判にかけて迫害しました。
- カトリック帝国主義国家スペインは、探検者フランシスコ・ピサロやエルナン・コルテスらの部隊により、インカ帝国やアステカ帝国を征服し、略奪し、滅亡に至らせました。
- ローマ・カトリック教会や修道会は、ロジャー・ベーコンやガリレオ・ガリレイらの科学を抑圧し、地動説を禁止しました。
- 宗教改革を武力で阻止しようと、多くの虐殺事件や宗教戦争を引き起こしました。
- 迫害を逃れてアメリカに渡ってきたプロテスタント・キリスト教社会は、原住民アメリカ・インディアンを圧迫し、衰微させました。
- 近代奴隷制社会を生み出しました。
- 多くのキリスト教国家(といわれる国)が帝国主義化し、武力で植民地を獲得しました。
- 日本的キリスト教とかドイツ的キリスト教とかが主張され、キリスト教の価値観よりも全体主義国家、国粋的国家に近寄りました。
- 現代も、キリスト教原理主義が支えるアメリカ政府が軍事主義路線を歩み、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争などを引き起こしました。
これらの全てがキリスト教に全面的に責任があるとは必ずしも言えないかもしれませんが、少なくとも、そのような政府や社会の悪を支持したり、止められなかった点において、大きな責任を感じるものであります。
しかし他方で、キリスト教はそれを補って余りあるほどにたくさんの良いことをし、良い影響を与えてきました。
- 多くの未開人、未開社会を文明化し、文化・産業・技術・医療・教育を与え、生活水準・知的水準を引き上げました。
- ローマ帝国などで、古代奴隷制社会の解消に貢献しました。
- ローマ社会やその後の社会で残酷な制度や風習を解消させました。
- ローマ社会やその後の社会で、不合理で邪悪な、あるいは不誠実な思考・慣習・行動様式を改善し、道徳水準を高めました。
- キリスト教社会で、女性の地位を向上させました。
- キリスト教社会で、一夫一婦制を確立しました。
- 多様な慈善事業を広めました。
- 日曜日を安息の日として労働を休む日にし、普及させました。
- 修道院活動で、荒蕪地(こうぶち)の開墾、貧者の救済、児童の教育、図書館の開設などに取り組みました。
- 『ローマ法大全』など法制を公平なものにしました。
- 近世代議制民主主義のモデルを生み出しました。
- 近代経済社会、資本主義、複式会計簿記などを生み出しました。
- 近代科学を生み出しました。
- 近代医学、医療技術、衛生社会を生み出しました。
- 近代文学、近代音楽など芸術、諸学問を生み出しました。
- キリスト教敬虔主義運動やメソジスト運動の中から、貧民学校・孤児院の創設、近世奴隷制の解消・廃止、監獄制度の改良、精神病者保護法の制定、労働運動による体制内改革、苦汗労働制禁止、労働基準の設定、自由医療院制、イギリスにおける憐れみある企業経営、社会福祉事業の進展などを生み出しました。
- 主としてアメリカにおいて、決闘制度の禁止、負債のための禁固刑の禁止、禁酒運動、奴隷解放など社会改良を推進しました。
- アメリカ都市社会問題の改善を求め、浮浪者保護制、老人の家制、セツルメント事業(隣保館運動)による貧困者の生活改善、児童保護、労働者教育、保育所事業の制度化を図りました。
- 人権尊重の諸施策、障がい者・児の保護施策を進めました。
- 日本においては、明治以降、次のようなこと・ものを作り出しました。個人の尊重、女性の地位向上、一夫一婦制の確立、代議制民主主義政治の導入、女子教育の推進、監獄制度の改良、出獄人保護制の制定、教誨師(きょうかいし)制度の導入、残酷な刑と拷問の廃止、盲・ろうあ者・児の福祉制度、精神障がい者・児の福祉制度、点字図書館の開設、孤児院の開設と救済、幼児教育の発展への貢献、廃娼運動、禁酒活動、社会鍋運動、労働者学校、結核療養所開設、結核予防協会の設立・運営、らい(ハンセン病の旧称)療養所・らい病研究・救らい協会の活動、児童虐待防止運動、凶作地・震災被災地への救援、人身売買救護活動、セツルメント事業(都市貧困者の生活改善、託児所開設)活動、公害の原点・足尾鉱毒事件への救援、貧困の研究、労働組合設立など運動への取り組み、自由民権運動への助力、農民組合の設立と運動、農民学校の開設、農業共済事業の推進、消費生活協同組合の設立と推進、労働者共済事業、医療組合事業、診療所・病院の開設、幼稚園・保育所の開設、いのちの電話事業・ホスピス事業の開始・普及、国際へき地医療協力、国際緊急援助協力・・・により日本社会の近代化・福祉に大きく貢献してきました。
- 5項の一例の通り、キリスト教に立ち、聖書によって立つ者の中から政治・行政・経済・産業・教育・学問・思想・文学・芸術・社会福祉などの各分野に枢要なあるいは無名の人材を多く供出しています。
よって、キリスト教はいつも聖書によって、誤りを正し、誤りから離れて、真正の”キリストの道”を歩まねばなりません。そうするとき、キリスト教(いやキリストの道)は良い宗教であり続けます。つまり、聖書に立ち、キリストを信じる道は、良い宗教であると言えます。それは保証付きです。
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正木弥(まさき・や)
1943年生まれ。香川県高松市出身。京都大学卒。17歳で信仰、40歳で召命を受け、48歳で公務員を辞め、単立恵みの森キリスト教会牧師となる。現在、アイオーンキリスト教会を開拓中。著書に『ザグロスの高原を行く』『創造論と進化論 〜覚え書〜 古い地球説から』『仏教に魂を託せるか』『ものみの塔の新世界訳聖書は改ざん聖書』(ビブリア書房)など。
【正木弥著書】
『なにゆえキリストの道なのか 〜ぶしつけな240の質問に答える〜 増補版』
『仏教に魂を託せるか 〜その全体像から見た問題点〜 改訂版』
『ザグロスの高原を行く イザヤによるクル王の遺産』(イーグレープ)