インド南部東岸の大都市・チェンナイやアーンドラ・プラデーシュ州で起きた大規模な洪水。パリで11日まで開催中の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)にWCCの政策提言ネットワーク「エキュメニカル・アドボカシー・アライアンス」の代表団メンバーとして参加中のクリストファー・ラジクマール氏(インド教会協議会[NCCI]正義と平和・被造世界委員会担当幹事)は3日、「チェンナイの洪水のことが心配だ」と語った。
「私の娘のホステルがこの洪水で浸水した。彼女や他の数百人の少女たちは軍によって救助された。彼女はバンガロールに連れて行かれ、そこから飛行機で行かなければならないんだ」と南インド教会(CSI)の牧師でもあるラジクマール氏は話した。
「多くの教会も被災している」と、インドのジャーナリストでカトリック信徒のアント・アッカラ氏は4日、チェンナイの状況について本紙に語った。しかし、CSIの教会会議は6日、被災者に対するチェンナイでの救援活動を、同地域の「教区からの熱心な支援を受けて主導している」と公式サイトで伝えた。
CSIは援助のための緊急アピールを発表したと、CSIが加盟する世界改革派教会共同体(WCRC)は4日、公式サイトで伝えた。WCRCの改革派パートナーシップ基金(RPF)がこの洪水による被害に対応しているが、「より多くの支援が必要だ」という。
タミルナードゥ州にあるCSIの教会や学校は、被災者のニーズに迅速に応え、多くの場所で建物を開放して人々を収容している。被災地や近隣の地域にある教会は、食糧が入った小包や飲料水、毛布を配布している。CSIは、さらに多くの救援センターを開設する計画で、救援活動を幾つかの地域で調整しているという。
WCRCは、この洪水で少なくとも推計で100万人が被災したと伝えている。死者数は一部の報道によると320人を超えているという。「水が引いた後も、物資の供給や支援に対する需要は依然として高いだろう。乾燥した食糧、食糧以外の品物、衛生用品一式が必要となる。家屋や産業基盤は再建しなければならない」と、WCRCは述べている。
「需要は非常に大きく、現地の教会に対する地域社会の期待も大きい。教会による迅速な対応は、その限界をすでに超えて広がっている」と、CSIのラスナカラ・サダナンダ総幹事は述べた。
地元住民に加えて、CSIは、最近終わった合同教会の協議会への代表者約20人の世話もしている。代表者たちは、空港が洪水に見舞われたために立ち往生させられていた。「私たちのニーズに応えてくれただけでなく、近隣や周辺の地域に手を差し伸べたCSIの寛大さに感謝する」と、WCRCのクリス・ファーガソン総幹事は語った。
一方、チェンナイの英字紙「ザ・ニュー・インディアン・エクスプレス」電子版は8日、「Sorry Santa, We’ll See You in 2016(サンタさんごめんね、2016年に会いましょう)」と題する記事で、CSIマドラス教区ではクリスマスの祝祭が洪水のために全て中止になったと報じた。
WCRCは、「洪水の被災者のために、また救援活動をしている人たちや、南インド教会の姉妹兄弟たちのために、またチェンナイにとどまっている合同教会の人たちのために祈ってほしい」と述べている。
また、世界教会協議会(WCC)やルーテル世界連盟(LWF)の加盟教会などがつくる国際的な援助・政策提言団体「ACTアライアンス」は4日に発表したアラート(警報)で、タミルナードゥ州とアーンドラ・プラデーシュ州南部における洪水による緊急事態と影響について、「この事態によって社会各層が被災した一方で、都市部の貧困層や脆弱な地域社会が最もひどい打撃を受けた」と述べている。
「洪水で被災した地域の人たちは、生計や家屋を失い、とりわけ田舎の村々では、救援と復興を必死に求めている。洪水で被災した住民に対する政府主導の救援は不十分であり、従ってACTが対応する必要がある」などと述べ、ACTの加盟教会・団体であるインド合同福音ルーテル教会(UELCI)や「社会的行動のための教会援助」(CASA)を通じた被災者支援を呼び掛けている。
日本では日本キリスト教協議会(NCC)がACTに加盟しているが、今のところACTのアラートに応えてインド南部の洪水被災者のために献金をするという動きは見せていない。
一方、ワールド・ビジョン・インディアは5日付の記者発表資料で、チェンナイの洪水について、「水が引くにつれて、もう一つの災害が不気味に迫る」という見出しで次のように伝えている。
「チェンナイが過去1世紀で最悪の洪水による影響で動揺しているとはいえ、何千人もの人たちが、政府によって同市全体に開設されている救援キャンプで暮らし続けている。これらのキャンプの多くは過密状態で、次なる大きな危機は健康と衛生状態に関するものとなり得ると、救援に携わっている人道支援機関は警告した。スフィア・インディア(インドの人道支援機関の全国的な連合組織)の発案でワールド・ビジョン・インディアが主催した会合で、これらの機関は、多くの救援キャンプが直面している保健と公衆衛生の問題について憂慮を表明した」
ワールド・ビジョン・インディアのアニタ・ビクター医師は、「何百もの家族がこれらのキャンプにある小さな空間に一緒に詰め込まれている。水が引く一方で、水を介した病気や皮膚の伝染病が向こう2週間で発生する可能性が高い。清潔な飲料水と適切な衛生設備が極めて重要だ。もう一つ欠かせないのが、各救援キャンプが医療を利用できる態勢だ」と語った。
一方、インド・カトリック司教協議会の援助機関であるカリタス・インディアは、この洪水で被災したタミルナードゥ州への緊急支援として、約250万ルピー(約450万円)を送金したという。カリタス・インディアは、被災者に食糧や衣料品、洗濯用品を提供しようと、現在も公式ホームページで募金を呼び掛けている。ただ、日本のカリタスジャパンはこの洪水被災者のための献金を送るという動きは見せていない。
ワールド・ビジョン・ジャパンでは、この洪水による被災者のための緊急支援募金を行っている。詳しくはホームページ。