カニなどの抽出成分が「がんに効く」とうたう本の出版をめぐり薬事法違反に問われ、その後無罪が確定した出版社「現代書林」(東京都新宿区)と同社の武谷紘之元社長らが、神奈川県警の逮捕時の記者会見で名誉を傷つけられたとして起こしていた裁判で、東京高裁は18日、名誉毀損を認定し、神奈川県に計176万円の損害賠償を支払うよう命じた。毎日新聞によると、山田俊雄裁判長は「捜査資料が足りないまま漫然と逮捕の記者発表をし、違法」と、県警側の問題を指摘した。
報道によると、県警は武谷元社長らの逮捕時の記者会見で、該当本について「ほとんどが虚偽か容疑者が作り上げた」と説明していたという。一審の東京地裁は、取材を受けていないとする医師らの証言から県警の説明は真実だったと認定。しかし、二審の東京高裁は一審判決を覆し、一部の医師が取材の謝礼を受け取っていたことなどから、現代書林がおおむね取材に基づいた内容を本に記載していたと認めた。
現代書林は2002年、カニなどから成分を抽出したとされる錠剤「キトサンコーワ」について、医師や体験者の発言を集め、「がんに効く」と紹介する本を出版した。神奈川県警は11年10月、薬事法違反(未承認医薬品の広告禁止)に当たるとして、現代書林と同社の武谷元社長や編集担当者らを逮捕、起訴した。その後の裁判で、横浜地裁は13年5月、錠剤のラベルには病気の効能は記載されおらず、錠剤は薬事法が対象とする医薬品に当たらないとして、武谷元社長らを無罪とし、判決が確定していた。
一方、「通販新聞」(電子版)によると、横浜地裁はこの判決で、「出版は、現代書林とキトサンコーワ社がタイアップして行われたものであり、書店に陳列されれば一般の方に認知される状態にある。(商品の)キトサンコーワの販売促進を目的としているのは明らかで、書店に陳列、販売されれば広告にあたる」と指摘。判決最後には、「無罪判決ではあるが問題があったのは事実なのでその点は考えてほしい」とも添えられている点を伝ええている。