佐村河内守(さむらごうち・まもる)氏の楽曲代作問題に関する謝罪記者会見を放送したTBSの情報バラエティー番組「アッコにおまかせ!」に対して、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は17日、「申立人の聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与え、申立人の名誉を著しく侵害した」などとする佐村河内氏の申し立てを認め、「『勧告』として申立人の名誉を毀損する人権侵害があったと言わざるをえない」と判断した。
佐村河内氏の申し立てに対し、TBSは「申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」などと主張していた。
BPOによると、TBSは昨年3月19日に佐村河内氏の謝罪記者会見を「アッコにおまかせ!」で取り上げた。TBSはこの中で、佐村河内氏の聴覚障害について、会見のVTRや出演者のやり取りなどで、「検証」と「論評」を行ったとしている。一方、佐村河内氏は、「健常者と同等の聴力を有していたのに、当該謝罪会見では手話通訳を要する聴覚障害者であるかのように装って会見に臨んだ」との印象を与えるもので、名誉を著しく侵害されたと申し立てていた。
BPOは番組内容を4点に分けて検討し、4点から総合的に判断し、「一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準として判断すれば、本件放送において『申立人は、手話通訳も介さずに記者と普通に会話が成立していたのだから、健常者と同等の聴力を有していたのに、当該謝罪会見では手話通訳を要する聴覚障害者であるかのように装い会見に臨んだ』という摘示事実が認められ、これは申立人の社会的評価を低下させ、その名誉を毀損する」と結論付けた。
また、このような放送があった背景に、「TBSが申立人に対する否定的な評価の流れに棹(さお)さすごとく番組制作を行ったことがあるのではないか」と指摘。「バラエティー番組であっても、本件放送のような情報バラエティー番組には、事実を事実として正確に伝えることも求められる。とりわけ、本件放送は、聴覚障害という一般視聴者の予備知識が乏しい専門的なテーマに関するものであることから、番組による不正確な説明内容によって視聴者が容易に誘導されうることに配慮が必要であった」とした。
一方、今回の決定とは結論を異にする2つの少数意見もあった。BPO放送人権委員会による本件に関する勧告全文はこちら。