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わが人生と味の道

わが人生と味の道(17)冷凍食品の開発 荘明義

2015年11月6日20時13分 コラムニスト : 荘明義
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関連タグ:荘明義

テレビに出演し、料理教室で料理を教えることをしていた中で、あるとき思ってもいない出会いがありました。大龍という、当時「サッポロ味噌ラーメン」というラーメンのチェーン店を170軒くらい展開していた店があったのですが、その店の社長が、たまたま私が出演しているテレビ番組を見て言ったそうです。

「サッポロ味噌ラーメンの時代はいつかすたれるだろう。その前に高級な冷凍食品の中華の点心を商品化し、販売してみたいなあ」

そして、何とその阿部さんという社長は、それから数日して私が勤める重慶飯店を訪ねてきたのでした。

私はこの社長としばらく語り合ううちに、素晴らしい事業のアイデアが生まれるのを感じました。それは、レストランで料理を客に提供すると同時に、それを冷凍してそれぞれの家庭に届けるという今まで誰もやったことのない新しい事業でした。私たちは、このわくわくするような事業のために手を握り合いました。そして、この事業は必ず成功すると確信したのです。なぜなら、当時中華料理はとても人気がありましたから。

当時、私が勤めていた重慶飯店は、そのフロアに60人から70人の客を収容していましたが、そのうち2階に座敷を作るということで倍の広さになり、何年か後にはさらに広い場所が与えられて、800人近くの結婚式ができるように重慶飯店の「別館」というのができました。それで、客が増えるに従って料理の技術、仕込みの方法がどんどん変わっていきました。800人の宴会をするためには、前もって下ごしらえをし、上手に冷凍保存をし、当日それをうまく解凍しながら温めて出すということが必要となり、私たちは冷凍の技術を学び、それを身につけていきました。また、大量の調理をするためには、一人前を作る技術、100人前を作る技術、そして千人前を作る技術というように、技術にも新しい要求が出てきたのです。誰が作っても、一人前も千人前も同じ味にするためには、そのタレを逆算して仕込むということが必要になってくるのです。私は必死で冷凍技術について勉強しました。

こうして私は冷凍食品の開発をする中で、幾つかの食材を開発することになりました。最初の開発は、餃子、シューマイ、春巻――といったものから中華料理の高級点心がスタートし、そしてフカヒレスープ、海老のチリソース煮といった人気メニューを冷凍し、お客に届けるということをしました。大龍という会社は「サッポロ味噌ラーメン」の会社ですから、冷凍食品を始めた頃にはスーパーやデパートの中に私たちの商品を並べるスペースがありません。それでどうやって売ったかというと、それは次のようなやり方でした。

私が作った高級冷凍食品を、ホームパーティーが開かれた会場で売り、客を獲得していこうということで、ある家に客を集め、そこで客に試食をしてもらい、帰る時に買ってもらう――という方法でした。当然そこに集まる人の中にはスーパーやデパート、量販店のオーナーの奥様方がいたのも好都合でした。ご主人が帰ってきたとき、奥さんが買ってきた冷凍食品を温めて出すとします。

「おいしいじゃないか。この点心どこで買ってきたのかい?」
「ホームパーティーで紹介されたのよ」

という具合で、私たちは裏口から入り、スーパーやデパートに商品を並べることに成功したのです。

私たちの食品開発の理念は、どのくらいの値段のものを作る――というのではなく、まずおいしいものを作るということでした。そのためには手作りで、本格的な食材を使い、とても高価なものでした。味の素の餃子が一皿150円の時、私たちの餃子はその何倍もしたのでした。そうした中で、この冷凍食品はなかなか好評だったので、多くの人に食べてもらうためには手作りから機械への移行も考えなくてはなりませんでした。

大龍と手を結んで冷凍食品の開発を軌道に乗せた頃、味の素から「クック・ドゥ」の開発の話が来ました。私は味の素とも提携し、家庭でおいしい中華料理を――ということでタレの開発に努めました。ひたすら大量の調理をすると同時に、世の中のさまざまな要求に合わせてこのような食品メーカーと提携して商品を作っていく――そうしたことが必要となってきた時に、実に時にかなって「味の素」と「大龍」という二つの会社と出会ったのでした。味の素と「クック・ドゥ」のタレを開発し、大龍と冷凍食品を開発する。この二つの事業を通し、私のビジネスの展望はさらに広がっていったのでした。

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◇

荘明義

荘明義(そう・あきよし)

1944年中国・貴州省生まれ。4歳のときに来日、14歳で中華料理の世界に入り、四川料理の大家である故・陳建民氏に師事、その3番弟子。田村町四川飯店で修行、16歳で六本木四川飯店副料理長、17歳で横浜・重慶飯店の料理長となる。33歳で大龍門の総料理長となり、中華冷凍食品の開発に従事、35歳の時に(有)荘味道開発研究所設立、39歳で中華冷凍食品メーカー(株)大龍専務取締役、その後68歳で商品開発と味作りのコンサルタント、他に料理学校の講師、テレビや雑誌などのメディアに登場して中華料理の普及に努めてきた。神奈川・横浜華僑基督教会長老。著書に『わが人生と味の道』(イーグレープ)。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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