仏教者やキリスト者などがつくる平和運動団体「宗教者九条の和」と「平和をつくり出す宗教者ネット」は6日、参議院議員会館で「戦争法制廃止を求める宗教者緊急祈念集会」を開いた。
この集会には、米国からワシントンDCの宗教者による平和運動のコミュニティーで活動している仏教者のヘレン・シーラーさんがあいさつした。シーラーさんは、「私たちは日本の平和憲法を称賛しています。憲法9条を守り続けるあなた方の闘いを称賛しています。皆さんが勝利することを望んでいます。アメリカの平和運動家は自国を平和の国へと変えることに成功していません。米軍はどうやって力を使ったらいいかということしか知りません。いったん武器を造ったらそれは使わなくちゃならず、軍隊を持ったら戦争をしなければならない。アフガニスタンの病院を爆撃したことについて、アメリカの国民は悲しみ、本当に怒っています」などと述べた。
また、「アメリカの平和運動家はいつでも、政府がしていることに対して他の国の人たちに申し訳ありませんと謝らなくてはなりません。第二次世界大戦中にアメリカが日本にしたことについても、私たちは日本の人たちに謝らなくてはなりません。イエメンやパキスタン、アフガニスタンの人たちを殺してきた無人攻撃機による殺りくについて謝らなくてはなりません。そして今日、アフガニスタンの人たちにアメリカがしていることについて謝らなくてはなりません」と語った。
シーラーさんは、「謝ると同時に、私たちは政府に対し声を上げて、政府がしていることをやめさせようと言わなくてはなりません」と付け加えた。さらに、憲法を守ろうとする日本の宗教者の闘いを励ます意味で、イランの核査察に関する米国政府合意を拒否しようとした米国議会の議員にその合意を支持するようこの夏中、毎日訴えた結果、米国議会はそれを支持したという成功例を紹介した。「私たちは当初、それは絶望的だと思っていたけれども、私たちは勝ったのです」
「私たちはこの働きをずっと続けていくつもりですし、世界各国の平和を愛する人たちとつながりを持ちたいと思っています」とシーラーさんは話した。そして、アフガニスタンの女性たちが、自分たちの上に広がる青い空と同じ青いスカーフを身につけて首都カブールの町を歩いたことから、米国のカトリック平和運動団体であるパックス・クリスティも、青いスカーフを作っては身に付けるようになり、アフガニスタンの人たちとの、平和への願いの連帯のしるしとして広がりつつあることを紹介した。
「これからも皆さんの平和への願い、特に平和憲法という、世界にたった一つしかない、本当に大事なものを守り抜くことを期待しています」と結んだ。
また、同じく米国のカトリック信者で法律家のシンシア・ノールドンさんは、集会後に同会館前で行われた祈念行動で、「恵み深き愛の神よ、私たちは平和と非暴力のために集まっています。私たちの願いを聞いてください。お互いを省みる深い気持ちをお与えください。今、憲法を変えようとする力に対して、一緒に力を合わせて連帯して闘っていくことができますように、力をお与えください」と祈った。
9月下旬の教皇フランシスコ訪米が、平和にどのような影響をもたらしたかとの本紙記者の質問に対し、元シスターでもあるノールドンさんは、同教皇の演説を米議会で聴いて感動した、カトリック信徒で米共和党の右派議員でもあるジョン・ベイナー下院議長が、その翌日、10月末で辞任する意向を表したことを挙げた。そして、同教皇の訪米は「良い訪問だったと思う」と語り、今後の展開に期待感を示した。
一方、日本カトリック正義と平和協議会事務局長の大倉一美神父は、「イエス様が言われた『地の塩』は、生きている人たちの中に溶け込んでいかなければならない。命を大切にする信仰というなら、命を大事にする生き方をしなければならないし、行いを通じて団結し連帯しなくては」と語った。
大倉神父は、集会後に参議院議員会館前で行われた祈念行動で、「国と国、民族と民族が、対話と相互理解の努力を続けることができますように。無関心を乗り越え、格差と貧困の問題に取り組むことができますように。地球環境を大切にし、全ての生き物と共存することができますように。神よ、私たちに、武力によらない平和の道を歩ませてください」と祈った。
続いて、日本キリスト教協議会(NCC)の小橋孝一議長も、「今日本の政府が、あなたが滅びると示された道に進もうとしています。私たちをどうか力づけて、この道を転換させてくださいますように」と祈った。
集会では、「戦争法案に反対する宗教者の会」代表で浄土真宗僧侶の山崎龍明氏が、「この世のことは政治家、あの世のことは坊さんだとしてきたという日本の仏教の歴史を、点検する必要がある」などと語るとともに、「今は未曾有の危機にあるこの状況で、身近な人たちに声を掛けながら、それを何とか大きくしていけないか。この次の選挙だけは、絶対に自民党に入れないでほしい。それが親鸞のメッセージだ」と訴えた。
日本山妙法寺僧侶の木津博充氏は、第二次世界大戦中にナチスの軍人だったヘルマン・ゲーリングが、国民を戦争に参加させるために、国民には他国に攻撃されつつあると言い、平和主義者に対しては愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張すればよいとした手法に言及し、その「だましの手法」にかかっている人たちが日本にも多いと指摘。その上で、「今のだましの手法にかかっている人たちと一緒になって平和をつくっていけるように、さらに努力を重ねたい」と語った。
「宗教者九条の和」事務局の武田隆雄氏は、同団体による「戦争法案の廃案を求める宗教者・門徒・信者緊急アピール」の賛同者数は、6日の時点で6176人に達していると報告するとともに、宗教者平和ネットが内閣府に毎月届けている署名は過去142回の累計で10万8804筆に達したと述べた。
なお、宗教者九条の和による来月の祈念行動は11月19日(木)と12月11日(金)を予定しているという。武田氏は今後の行動について、「毎月の宗教者の集まりを中心にして署名集めをしていくということと、あちこちで私たち宗教者の祈りの行動を示していかなければいけない」と述べるとともに、来年2月9日に京都の東本願寺で全国集会を持ちたいと語った。そして、今年の8月24日に星陵会館(東京都千代田区)で「戦争法案に反対する宗教者・門徒・信者全国集会—国会前抗議祈念行動—」が開催されたのと同じように、来年5月には全国集会を開きたいと語った。
6日の集会で情勢報告を行った、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の高田健氏は、「2015年『安保』闘争の到達点と今後」と題して発題した。高田氏は、「今回の、みんなが総がかりになって世論を一生懸命変えようとした、一連のあれだけ大きな行動をとった闘いというのは、かなり影響力があって効果はあったけれども、今一歩のところで最後は間に合わなかったという反省点がある。それらをどうやって、戦争法を実際発動させない運動に生かしていくかが、これから一緒に考えていくべき課題だ」と語り、「(運動の)可能性はある。弱点もある。あきらめちゃだめだ」と強調した。
そして高田氏は、安保法制に対する弁護士たちの違憲訴訟に加えて、来年5月3日の憲法記念日に、東京のお台場で大集会を開き、それに向けて2000万人の署名運動を大きく盛り上げる計画を明らかにした。「市民運動が果たす役割はこれからも重要だ」と付け加えた。
なお、同実行委員会は9月19日の参議院本会議における安保法制案の採決を覚えて、10月19日(月)18時30分から「私たちはあきらめない!戦争法廃止!安倍内閣退陣!国会正門前集会」を国会正門前で開く。
「私たちの『戦争反対!』の闘いは終わらず、引き続き毎月『19日行動』として継続されます。私たちはあきらめません。再度の結集を呼び掛けます。国会正門前へ!」「毎月19日は、国会前に集まろう!」「廃止になるその日まで、何度でも国会前へ」などと同委員会は呼び掛けている。
同委員会は8日、文京シビックホール・大ホールで「10・8戦争法廃止!安倍内閣退陣!総がかり行動集会」を開催し、キリスト者平和ネットもこれに参加していた。
また、10月19日午後5時から参議院議員会館1階講堂で行われる「さぁ、安倍政治を終らせよう」10.19院内集会では、上智大学の中野晃一教授(政治学)が「野党はオルタナティブを提示できるか 路上から議会へ」と題して発題する。入場無料。詳しくは主催の「戦争をさせない1000人委員会・立憲フォーラム」へ。