安保関連法が19日未明、参院本会議で可決・成立したことを受け、日本カトリック正義と平和協議会は同日、「参議院本会議における安全保障関連法の強行採決に厳重に抗議し、法律の廃止を求めます」とする抗議声明を発表した。
また、国会前などでの抗議集会を開いてきた「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」も同日、「政府・与党は強行採決に次ぐ強行採決を重ね、日本を海外で戦争する国にする憲法違反の戦争法を成立させた。私たちは満身の怒りを込めて抗議する」などとする声明を発表した。
日本キリスト者平和の会は20日、「戦争法案に反対する宗教者の会」のサイトなどで、抗議声明を発表。「私たちは今、分かれ道に立たされて平和か戦争か、命か死か、そのどちらを選ぶか、神に迫られています」と述べ、カトリック、聖公会、プロテスタントなどの各派で同法案に反対する声が上げられてきたことに触れた。
宗教者の会のサイトでは、日本宗教者平和協議会も19日、抗議声明を発表。同法に対するこれまでの説明不足を指摘し、陸海空の自衛隊を一体運用する防衛省の統合幕僚監部が、同法成立前から、新たな部隊運用の資料などを作成していたことに触れ、「その真相解明もないままに成立を強行するなど断じて許されない」と非難した。「憲政史上最悪の憲法破壊の今回の暴挙を断固糾弾し、撤回を強く要求して引き続き奮闘する」としている。
一方、国際基督教大学(ICU)客員教授(憲法学)の稲正樹教授(日本基督教団所沢みくに教会員)は、本紙の問い合わせに対し、参院本会議前に参院平和安全法制特別委員会で同法案が議決されたことについて、225人の弁護士有志が発表した、議決の不存在確認と審議の再開を求める声明に「全面的に同意」すると述べるとともに、次のようなコメントを寄せた。
「特別委員会の『採決』の様子はテレビで見ていました。議事の速記録(未定稿)でも『議場騒然、聴取不能』です。テレビで見る限り、『採決動議、法案2本、付帯決議、委員会報告の5つを採決した』ということですが、何事かを与党議員が一方的に発言し、それに付和雷同して挙手をしているらしいしぐさが映っていましたが、委員長の議事進行はまったくなかったです。このように特別委員会の『採決』は『採決』といえる代物ではありません。本会議での可決の放映を確認していないので何とも言えませんが、委員長の本会議での『報告』はどうなったのでしょうか。
『希望』を語るとすれば、今回の違憲法案を数の力で押し切り、立憲主義と議会制民主主義を踏みにじった政府・与党に対しては、国民主権に基づく国民の厳粛な裁断が下ることを心から希望します。すべての『正しい裁き』は正義と真理と愛の全能の神が下されることを確信します。今回の一連の事態は、私たち国民に、国民主権をどうすれば正当に行使できるかを教えてくれました。
憲法を踏みにじって『いつでも、どこでも、切れ目なく』自衛隊を世界の戦場に送るために戦争法案の成立に突き進んだ安倍政権の振舞い方を目の当たりにして、憲法的秩序を踏みにじる専制政治に直面して、私たち国民の中に、日本国憲法を国民の手に取り戻そう、いまこそ、主権者である国民の出番である(杉原泰雄『憲法読本・第4版』岩波ジュニア新書、2014年)という意識が徐々に芽生え、確信になり、そして広く伝播(でんぱ)していく契機が生まれてきたことを実感しています。このことに希望を持ちたいと思います」
なお、稲教授は、自らが所属する日本平和学会のウェブサイト「安保法制 100の論点」で、安保法が成立した場合、その憲法適合性を争うために、どのような憲法訴訟が可能かを論じている。