2002年に神奈川県横須賀市で米兵にレイプされ、傷つきながらも裁判で正義を勝ち取った、オーストラリア出身で日本在住のキャサリン・ジェーン・フィッシャーさん。今年5月には日本で、回想録『涙のあとは乾く』(講談社)を出版した。7月に行った本紙とのインタビューでは、その中で支えになった自身のキリスト教信仰について語っている。自身のレイプ被害の実体験をつづったこの本を、安倍晋三首相に読んでもらおうと、ジェーンさんが6日、衆議院第一議員会館の議員事務所で記者会見を行い、首相に宛てた手紙と共に同書1冊を政府幹部に手渡した。
ジェーンさんはまた、レイプ被害者を支援するための24時間センターと、レイプなど特別な配慮を必要とする性犯罪に取り組む「センシティブ・クライム・チーム」を設置するよう要請し、政府との協力を申し出た。「もっと愛と共感と思いやりがないと、この世界は良くならない」とジェーンさんは言い、24時間センターを、東京と米兵によるレイプ事件が多発している沖縄に設置するよう求めた。
安倍首相が実際に同書を読んでくれるという確信の程について、ジェーンさんは本紙記者の質問に答え、安倍首相が9月27日に、第70回国連総会のジェンダー平等と女性のエンパワーメントに関する会合で行ったスピーチに言及した。
安倍首相はこのスピーチで、「日本はUNウィメン(女性の地位向上を目指す国連組織)をはじめとする国際社会との連携も今後さらに深めつつ、『21世紀こそ女性に対する人権侵害のない世紀とするため、世界をリードしていく』という決意を実行に移していきます」などと述べていた。
その上でジェーンさんは、「彼は国連の前で誓ったのですよ。今回は信じています。(日本政府に)何回もだまされ、無視されたことはずっと十何年間もあったのですけど、安倍首相を信じています」と答えた。
7月の本紙とのインタビューでジェーンさんは、戦後に沖縄で起きた米兵による無数のレイプ事件を列挙した4枚の大きなシーツを広げ、「なぜシーツを使ったのかというと、こんなにレイプがいっぱいあるのに、日本政府の人間はよく寝られるなって思っているんです」「彼らはこれらの事件を全部知っているのに、何もしないなんて」などと批判を込めて語っていた。
さらにジェーンさんは、「(私には)最初は神様の力しかなかった。(米兵によるレイプの)裁判で弁護士から『あなたを助けているのは誰か?』と聞かれた時も、『私の家族と神様だけです』と答えましたから」と回想しながら話した。そして、安倍首相について「God has plans(神様にはご計画がおありなのです)」と確信に満ちた表情で付け加えた。