過激派組織「イスラム国」(IS)から逃れて、カナダに保護を求めギリシャに逃げようとした家族のうち、トルコの海岸に波で打ち上げられた3歳のシリア人の男の子の遺体の写真が2日、ツイッターに投稿され、3日付の米クリスチャンポストを含むインターネット上で大きな反響を呼んでいる。一方、欧州に入ってくる難民や移民を支援しようと、欧州のキリスト教支援団体が活動を行っている。
世界教会協議会(WCC)やルーテル世界連盟(LWF)の加盟教会などからなる国際緊急支援団体「ACTアライアンス」は2日、「人々が私たちの戸口で死んでいる。欧州は今こそ行動する必要がある」として、北欧の6つの主要な援助・開発団体と共に、欧州各国政府に対し、欧州に向かう難民の危機に迅速に対応するよう呼び掛けた。
欧州への難民や移民、少数者の集団のための提言活動を行うエキュメニカル組織「欧州移民のための教会委員会」(CCME)は、フェイスブックで欧州の移民の状況を伝えるとともに、欧州への移動途上で死亡した難民のための黙想の時間のページを紹介したり、拘留所にいる難民のための祈りの文を掲載している。
一方、カトリックの国際援助団体「カリタス・インターナショナル」も同日、ギリシャの島々にいる難民に援助が届いている様子を公式サイトで伝えた。その難民の多くは、シリアやアフガニスタン、パキスタン、イラクから、戦争や貧困を逃れてきたという。3日には、セルビアにいる難民を助けるための呼び掛けを開始したことも伝えた。セルビアに入国する難民や移民の数は6月中旬から激増しており、カリタス・セルビアは難民・移民10万人の必要を80万ユーロ(約1億円)の募金で満たそうと訴えている。
カリタス・インターナショナルはまた、バチカン放送局を通じて3日、ハンガリーにいる難民や移民への基礎的な人道支援を同国政府からの要請を受けて行っていることを伝えており、8月21日にも公式サイトで、欧州東南部で難民が増大していることを伝えている。
一方、セルビアの首都ベオグラードにも事務所がある国際正教慈善協会(IOCC)は、既に7月10日の時点で、シリアやアフガニスタンなどから保護を求めてギリシャから入り、バルカン半島を通って欧州連合へ何百マイルも歩き、セルビアに入国してくる何千人もの難民の状況と、それに対応するIOCCの支援活動を伝えるとともに、献金を呼び掛けていた。
英国国教会のカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーは3日、欧州と中東が直面している移民の危機に関する声明で、「これは、私たち人間の弱さと私たちの政治制度の脆弱さをはっきり示す、極めて複雑で邪悪な危機だ。命懸けで紛争や暴力、そして迫害を逃れてきた男女や子どもたちの映像や体験談に、私の心は悲嘆に暮れている」と述べた。
さらに、「簡単な答えはないが、私は迫害を逃れている人たちや、効果的で公正な対応を進めるよう求める大きな圧力の下で苦闘している人たちのために祈っている。今や、戦後欧州において、恐らくこれまでになく、欧州全体にわたって行動を共にする責任を負い、私たち共通の責任と私たち共通の人間性を認める必要がある」と述べた。
ウェルビー大主教はまた、「キリスト教徒として私たちは壁を壊し、寄留する者を歓迎し、自分自身のように愛し(レビ19:34)、今日、私たちの世界に、私たちの神の平和と正義を求めるよう招かれている」と述べ、移民に関する旧約聖書の箇所に言及しつつ呼び掛けた。
「冬が近づき、シリアの悲劇的な内戦が統制の効かない悪循環に陥っていることから、私たちはこの状況がさらに深刻にひどくなり得ることを意識しなければならない。私は、教会や慈善団体、国際機関が、人道上の必要を満たすために、欧州全体およびシリア、そしてその周辺地域で担っている積極的な役割に励まされている。これらの努力はこの課題を前にしてささいなものに感じられるかもしれないが、しかし私たちが皆自らの役割を担えば、これは解決できる危機である」と、ウェルビー大主教は付け加えた。
認定NPO法人「難民支援協会」(東京都新宿区)が1日に公式サイトで伝えたところによると、日本にも400人以上のシリア人が暮らしている。しかし、そのうち60人以上が難民申請をしているが、難民認定を得られた人はこれまでにわずか3人だという。一方、朝日新聞は5日、法務省が難民認定の枠を広げる方針を固めたと伝えた。
なお、難民・移住労働者問題キリスト教連絡会(難キ連、同台東区)は、10月3日午後2時から、幼きイエス会ニコラ・バレ修道院(同千代田区)で、「テドロスさん一家は何故カナダに移住したか~日本の難民受け入れ制度を問う~」と題する学習会を行う。詳しくは同会のホームページで。