終戦70年を迎えた15日、「平和を願い戦争に反対する戦没者遺族の会」(平和遺族会)全国連絡会の8・15集会が、日本基督教団九段教会(東京都千代田区)で開かれ、約170人が参加した。テーマは「戦後70年 アジア・太平洋戦争の反省の下に憲法を活(い)かそう! 『安保法制』を廃案に! 再び遺族をつくらせないために」。集会では、参加者一同により「沈黙のとき」が持たれ、同連絡会代表の西川重則氏、憲法学者の木村草太氏(首都大学東京准教授)が、安保法制に絡めた講演を行った。
会場となった九段教会は、靖国神社の大鳥居のほど近くにある。最寄り駅の地下鉄九段下駅は、朝から正装した多くの参拝客の姿が見られ、大鳥居に続く道は、「憲法改正賛成」と署名を求める団体の声が響いていた。同連絡会は、キリスト者の戦没者遺族を中心に、首相や閣僚らの靖国神社参拝に反対し、平和を願う思いで連帯している。1986年に結成され、8・15集会を企画するのは今年で30回目になる。
参加者一同が黙祷をささげた「沈黙のとき」では、今年ちょうど70歳になる同連絡会の布施敏英さんが黙祷の掛け声を上げた。布施さんは、自身が誕生する前日に父親が21歳の若さで中国で戦死したという。
ビルマ(現ミャンマー)で兄が戦病死した代表の西川さんは、今年で87歳。1999年から国会傍聴を続けており、靖国神社参拝問題から安保法制までを、日本の政治が抱える一貫した問題として考え、警鐘を鳴らし続けている。
「『安保法制』から靖国神社問題へ」と題して基調報告を行った西川氏は、「これらの問題に対して意味ある反対運動を行っていくためには、日本国憲法に習熟するべきであり、戦後だけではなく、戦前、戦中の総括をしっかりとする必要がある」と話した。憲法については特に、平和主義を規定する9条、信教の自由をうたう20条を守るために、全ての公務員に対して憲法擁護の義務を課している99条を具体的に実践していくことを強く求めたい、とした。
14日に安倍晋三首相が発表した「戦後70年談話」について、「おそまつなものだった」と触れ、「そんなものを考えている時間があるならば、早く悪法(安保法制)を自ら廃案にするべき」と発言し、参加者からは賛同の拍手が起こった。また、「『安倍退陣せよ』との声が聞かれるが、安倍首相だけが悪いのではない。1955年に『現行憲法の自主的改正』を主張する自民党が結成されて以降、日本の政党は私たちの願わない方向へと進み続けてきた」とも話した。
木村氏は、「安保法制と憲法」と題して、憲法学者の立場から安保法制が抱える課題を解説した。7月の安保法制公聴会でも発言をしている木村氏は、あらためて「憲法改正の手順を踏めば、集団的自衛権の行使を認めることも可能。しかし、憲法改正は、国民の機運の高まりによってなされるべきものであり、いずれにしても安保法制には反対」と意見を述べた。
参加者からは、「このままではこの法案は可決されるだろうが、その後にできることはあるのか」と質問が出た。木村氏は、政府が集団的自衛権の行使において想定している「存立危機事態」の明確な解釈指針が示されていないため、現段階では意味をなす条項になっていないと指摘。その上で、「可決後も、解釈定義の議論は引き続き行われるので、従来の『存立危機事態=武力攻撃事態』の定義に戻す取り組みに力を入れるべきだ」と話した。