政府は9日の閣議で、首相の靖国神社への公式参拝について、宗教上の目的がなければ違憲ではないとする答弁書を決定した。これは、2005年に閣議決定した答弁書を踏襲したものだという。ロイター通信などが伝えた。
答弁書は、維新の党の井坂信彦衆院議員の質問に答えたもの。NHKによると、答弁書は「もっぱら戦没者の追悼という宗教とは関係ない目的で行うものであり、宗教上の目的によるものでないことが外観上も明らかである場合には、憲法の禁じる国の宗教的活動に当たることはない」とする見解を示した。
また、首相の私的参拝については、「総理大臣の地位にある者についても、私人として憲法上信教の自由が保障されていることは言うまでもなく、私人の立場で靖国神社に参拝することは憲法との関係で問題を生じることはない」(NHK)とした。
首相の靖国神社参拝をめぐる裁判ではこれまで、小泉純一郎首相(当時)の参拝について、首相としての公的な参拝であったとして、地裁、高裁が違憲判断をしたケースがある。最高裁による憲法判断はまだなされたことがないが、司法のいずれのレベルにおいても合憲判断は出ていない。
安倍晋三首相は2013年12月に靖国神社を参拝。「内閣総理大臣 安倍晋三」と記帳し、首相名で献花したが、「私人の立場で参拝した」と説明していた。この際は、日本キリスト教協議会(NCC)や日本カトリック正義と平和協議会、日本バプテスト連盟、日本同盟基督教団などが抗議声明を発表。在日米大使館も「失望している」とする異例の声明を発表していた。
なお、今回の答弁書では、この安倍首相の参拝について「私人としての立場で行われたものと承知している」(同)とし、安倍首相が今後参拝するかは明言を避けた。