日本基督教団(東京都新宿区)と在日大韓基督教会(同)は、今年戦後70年を迎えることを覚えての「平和メッセージ」を共同で発表した。昨年、宣教協約30周年を迎えた両団体は、今回のメッセージで、日本における平和と安全な社会の実現を祈り、互いの協力関係を深めていくことを確認。「主なる神の平和の実現を目指します」と表明した。日本基督教団が2日、公式サイトで発表した。
今回のメッセージは、日本に住むキリスト者として、日本で暮らす全ての人々が真に平和で安全な生活を送ることのできる国であることを心から願い、聖書の言葉に聴きながら、過去の日本の韓国、中国などへの侵略戦争と植民地化政策の過ちを謝罪し、罪の悔い改めをする祈りであるという。さらに、「平和な社会」「ヘイトスピーチのない社会」「人々の命と暮らしが守られる社会」の実現を目指すとして、具体的な社会問題について記している。
安全保障関連法案については、「憲法9条をないがしろにするものであり、集団的自衛権の行使は日本に住むすべての人々の命と生活の危険を増すもの」として、法案制定に反対している。また、戦後70年の今年は特に沖縄戦が思い起こされるとして、沖縄についても言及。独立国家であった琉球王国を侵略・統治した歴史、敗戦後の在日米軍基地の集中、そして現在問題となっている米軍普天間飛行場の辺野古への移設計画について、日本の「差別性」がはっきりと見て取れるとし、この移設計画の撤廃を求めている。
ヘイトスピーチをめぐる状況については、一般の人々の意識の中にも定着しているという意味で、より深刻になっていると指摘。日本各地でヘイトデモの集会が行われ、「嫌中憎韓」の流れの中にあるヘイトスピーチの対象は韓国、中国を越えて、沖縄、アイヌ、原発事故被災者、イスラム教徒、さらに被差別部落、障がい者、生活保護受給者などにも及ぶとし、一部の報道機関、出版社、インターネット上に、見るに堪えない人種差別的表現が溢れていると批判している。また、その動きが保守政治勢力と結び付き、旧日本軍による「慰安婦」の存在自体を否定する「言論の弾圧」という新たな様相を見せ始めていると指摘。日本における人種差別の実態を明らかにし、その撤廃に向けて、日本と世界のキリスト者が祈りと力を合わせていくことを願うと表明している。
そして、福島第一原発事故については、政府の対応が「国民の安全を守る」ことを第一とするものではなかったと述べている。放射線量がかなり高いと言わざるを得ない地域の住民に対する手当が、現在でも十分に行われていないにもかかわらず、「原発事故は過去の話」とばかりに、川内原発(鹿児島県)をはじめとする各地の原発再稼働に向けた動きが進められていると批判。このことを踏まえて、「世界で唯一の被曝(ひばく)国である日本が、『ヒロシマ』『ナガサキ』と共に『フクシマ』で起こったことを決して忘れず、その苦しみを共に担いながら、日本に住むすべての人の命と暮らしが守られる社会の実現のために取り組みます」と述べている。