今年で47回目となる「日本伝道の幻を語る会」(主催:日本キリスト伝道会)が27日から28日まで、千葉県市川市にある市川サンシティ(山崎製パン企業年金基金会館)で、「今こそ福音の時!」をテーマに開催された。初日に行われた講演では、酒田キリスト教会牧師でチャーチ・オブ・ゴッド理事長の高橋富三氏が登壇。27歳で酒田キリスト教会に派遣されてから41年間、東北での伝道の現実と苦楽をありのままに語り、神が同教会に備えてくださった恵みの数々を、参加者約70人を前に証しした。
高橋氏の話は、詩編16編6節「測り縄は麗しい地を示し、わたしは輝かしい嗣業(しぎょう)を受けました」という御言葉から始まった。山形県酒田市に遣わされて5年目に、がんで亡くなった一人の姉妹の遺骨を家族から託されたことで墓地を購入するという、教会にとって大きな出来事に遭遇した。紆余曲折の末に手に入れた場所には、現在では山のチャペルとして50人収容できる礼拝堂・食堂、40人が泊まれる宿泊棟、納骨堂が設置されるに至っている。「神様は、祈った祈りにさらに増し加えて与えてくださるお方だ」と高橋氏は話した。
墓地の購入に当っては信徒との意見の違いもあり、快く思えなかったことも明かした。その上で、「教会は神の家族であり、反対意見を言う人ほど教会を愛し、期待している。だからこそ、信徒から何か言われることは本当に感謝なことだと思う」と当時を振り返った。今になっては与えられている信徒の誰もが大切な存在であり、遣わされている教会が自分にとっての最善・最良な所と感謝していると述べた。
高橋氏は、1998年に日本教会成長研修所(現・JCGIネットワーク)に入り、牧師の祈りの生活の確立の大切さと、教会の信徒のとりなしの大切さを学び、「牧師のために祈ってください」と教会員にお願いした。その頃、自らが運転するワゴン車が電柱に激突するという事故を起こしてしまう。車は大破したが、高橋氏は無傷だった。このことを教会で話すと、ちょうど事故があった時に、何人もの人が高橋氏のために祈っていたことが分かった。自分が生かされていること、愛されている牧師であることを知ることで、信徒一人一人を感謝を持って迎え入れることができると話した。
酒田キリスト教会は1989年に新会堂を献堂する祝福にあずかりながら、ちょうどその頃、信徒数が急激に減った。しかしその後、礼拝人数は回復し、さらに増加するようになり、昨年は20人が洗礼を受けた。高橋氏は「これは、神様が教会の祈りに、伝道に応えてくれたからで、神様の恵みの何ものでもない」と言い、「わたしたちの内に働く御力によって、わたしたちが求めたり、思ったりすることすべてを、はるかに超えてかなえることのおできになる方」(エフェソ3:20)の御言葉と共に神に感謝をささげた。
数年後、その礼拝堂が手狭になり、新しい礼拝堂の建設に取り掛かることになるが、土地の売買契約を取り交わす段階で、売り手側から一方的にキャンセルされてしまった。しかし、その土地よりもさらに好条件の土地が与えられた。文教地区の真ん中に100人を収容できる新会堂を建て、さらに25年後には、その一軒隣に低価格で土地が売り出され、そこに今度は400人収容できる礼拝堂を建て、新しいパイプオルガンも設置した。昨年は、430人が出席する市民クリスマスコンサートを開いたという。「人の心に思い浮かんだことのないものを神様は実現してくださる」と、一連の出来事を思い起こして語った。
高橋氏は、「焼き芋伝道」を提案する。「サツマイモはそのままでは食べられないが、火が通るとホクホクの焼き芋に変わる。大切な人に対して、祈りの火を付けると、おいしい焼き芋となる。一人の最も大切な人のために祈りましょう」と呼び掛けた。さらに、祈りの対象者をリストにして、レベル1、2、3・・・というように到達ランクを付けて祈ることを勧めた。「○○さんは、教会に来れたからレベル2に到達ね」「あなたのレベル3の○○さんはもう少しでレベル4だね」などとすることで、祈りが励まされるという。「祈り続け、祈り続け、火が通るまで祈り続ける」と高橋氏は繰り返し語った。
また、「リンゴの木の実はもう一本のリンゴの木ではないか」と言い、「1本のリンゴの木になった実の種がまかれ、新しいリンゴの木となり、そこからまた新しいリンゴの木が育つ」と高橋氏。リンゴの実を再生産できるまでに育てる伝道の大切さを伝えた後、「主は今生きておられる、ハレルヤ!」と主を賛美して話を締めくくった。
初日のこの日、日本伝道の幻を語る会会長で日本ナザレン教団千葉キリスト教会牧師の森稔氏が、開会礼拝の中で、「伝道はそもそも神の業、人間の業ではない。聖書の『御言葉を宣べ伝えなさい。折が良くても悪くても励みなさい』(Ⅱテモテ4:2)の御言葉の本筋から離れず、伝道に携わる信徒の道を共に歩みたいと思う」と語った。また、今回のテーマ「今こそ福音の時!」を参加者全員で叫び、「一千万救霊の御業を、お進めください」と祈り、一人が一人を確実に救い導く力が与えられるよう祈りをささげた。