ネパールで検討されている「改宗禁止法」が、同国内での信教の自由を侵害する恐れがあると専門家が警告している。
ネパールでは今、憲法の新しい改正案が起草されており、現在進められている改正案には次のような条項が含まれている。「誰も、公の秩序を乱し、または公の平和、地域の平和を乱すような振る舞いや行動、企てをしてはならない。そして誰も、他者をある宗教から他の宗教へ変え、あるいは改宗させようと試みてはならず、また、他者の宗教を妨害、あるいは危険にさらすこともしてはならず、そのような行いや活動は法により罰せられる」
キリスト教の迫害監視団体である世界キリスト教連帯(CSW)は、このような表現はネパール国民の信教の自由を「厳しく制限」しかねないと警告している。
CSWは、13日に発表した声明の中で、この条文は「自分の信仰を選んだり変えたりすることが、個人の自発的な選択や個人の権利に関することであるという認識を欠いている」と述べた。そしてこの改正案は「国際的な人権の枠組みと合っていない」と指摘した。
CSWはまた、この改正案が、自分と異なる信仰を持つ人に対して、自分の信仰について話すことが、相手を改宗させようとしたと見なされ、法的に罰せられる可能性があると懸念を示した。「この条文は、全ての人に対して国際的に保障されている2つの基本的人権を脅かします。一つは表現の自由の権利で、もう一つは自身の選択に基づいて宗教を信仰し、言動によってその宗教を明らかにする権利です」
ネパールは2008年まで、世界で唯一のヒンズー教国家だったが、その後世俗国家であり共和国であると宣言した。しかし、右派の国民民主党が全ての宗教の改宗を禁ずるよう呼び掛け、報告によれば、政府は3日にそれに同意したという。
インドと国境を接する5つの州は現在改宗禁止法があり、他の宗教に改宗したい者は、まず当局の許可を受けなければならない。宗教の指導者たちも改宗を報告することが義務付けられており、違反すれば3年間の懲役刑が科される可能性がある。
ネパールは、2800万人の国民のうちヒンズー教徒が圧倒的多数で、キリスト教徒は2%以下。
CSWのマービン・トーマス代表は、「宗教を選び、変える自由は、国際的な人権の原理を堅持するどんな憲法においても必ず標榜しなければならない不可欠な部分です」と言う。「ネパールは、自身の選択に基づいて宗教や信念を持ち、あるいは変更することを含む思想、良心、信教の自由を保障する『市民的及び政治的権利に関する国際規約』(ICCPR)の締結国です。CSWは、ネパールの全ての政党と指導者たちに、新憲法でもこの権利を完全に保障することを主張するよう働き掛け続けます」