先月末に発生した大地震で大きな被害が出ているネパールを訪れた、神戸国際支縁機構代表の岩村義雄氏(神戸国際キリスト教会牧師)が23日、神戸市長田区で報告会を行った。
岩村氏は、ネパールと日本の友好のための活動を行っているNPO法人枚方交野国際奉仕活動協会(HIVAKI=ヒキバ)や、神戸スイミープロジェクトの代表らと共に、12日から17日まで、首都カトマンズ市内や近隣地区を訪れて現地の様子を視察、救援金を渡すなど支援活動を行った。この日は、その様子を現地の写真を交えて紹介した。
岩村氏はまず、カトマンズの様子を報告した。ネパールの一般的な住居は、日干しレンガを積み上げ、木や鉄の金具で固定し、その上にブリキ屋根を付けた簡単なものが多く、鉄筋が入っていない構造のため、地震でレンガの壁が崩壊し、多くの人が犠牲になったという。カトマンズの中心、ダルバール広場でも、王宮や寺院に大きな被害が出て、普段は観光客や土産屋でにぎわう通りは、がれきの脇にテントを張って野宿する人々の姿が目立ったという。ネパールはこれから雨季を迎え、テント生活は続けることできなくなるため、仮設住宅の建築が急がれているという。
カトマンズに隣接するキルティプル市パンガ地区では、建物の約90%が損壊するなど大きな被害を受け、ライフラインも断たれる中、湧き水を煮沸させ、飲み水として使っているという。この地区では、地震発生の4日後から、地元の若者たちがCDMC(Community Disaster Mnnagement Committee=コミュニティー災害対策協議会救援本部)をつくり、自分たちの手でトタンと竹を使って仮設住宅の建築を始めた。現在までに9戸の仮設住宅が建てられたが、海外からの支援が行き届いておらず、末端のコミュニティーに直接、援助を行う必要性を感じたと岩村氏は報告した。
また岩村氏は現地の知人の案内で、ダリット(不可触民)と呼ばれる人々の元を訪れた様子も報告した。ネパールではヒンズー教徒が約8割を占め、カースト制度により5つの階級に分かれている。ダリットはその中の最下層階級の人々で、全人口の約15%とされている。こうした人々は、「触ると穢(けが)れる人間」「困窮した人々」「押しつぶされた人々」と見なされており、他の階級の人々と同じ寺院や井戸を用いることが禁じられ、隔離された地域に居住しているという。
同国におけるカースト制度は、1990年の民主化運動で名目上は廃止されたが、現在も就職、結婚などで差別があるという。こうした人々は、仕立て屋や靴作り、靴磨き、街路掃除員などの仕事に就いているが、今回の地震で大きな被害を受けながら、援助の手はほとんど届いていないという。
岩村氏は、そうした現地の被災者を訪ね、話を聞く傾聴活動も行い、その様子を紹介した。
「1995年の阪神・淡路大震災の時から、傾聴ボランティアを行ってきました。被災者の隣に座り、家族を亡くし、生きる希望を失った人々から、ただ静かに悲しみを聞きます。聖書に、『キリストと共に苦しむなら、共にその栄光をも受けるからです』と書かれているように、共苦することしかできません」と岩村氏は語った。
最後に岩村氏は、8歳の妹を地震で亡くした16歳の少女アニーシャさんの言葉を紹介した。
「地震の前までは、都会への憧れや、自分のことしか考えてこなかったけれど、妹を亡くし、家もつぶれて住む所もなくなってはじめて、人生について考えるようになりました。地震は私を変えました。これからは人のために生きたいと願っています。そのために進学もしたいです。私も、自然災害で困っている所に駆け付けることができるような大人になりたいです」
アニーシャさんが進学を希望している大学の入学金は、日本円にして約4万円だが、ネパールでは一般的な農家の30年分の収入に相当するという。岩村氏は、現地で被災した子どもたちが教育を受けることができるような、継続的な援助を募ることの大切さを感じたと語った。
神戸国際支縁機構は、7月31日までネパールの緊急救援金を募っている。救援金は、地震によって両親を亡くした孤児たちのための「子ども基金」として、直接被災者に送られる。救援金の振込先口座は下記まで。問い合わせは、同機構(〒655−0049 神戸市垂水区狩口台5−1−101、電話:078・782・9697、携帯:070・5045・7127、FAX:078・784・2939、ホームページ)まで。
<ネパール緊急救援金振込先>
郵便振替口座:00900−8−58077
受取人:一般社団法人神戸国際支縁機構
※「ネパールのために」と添え書き