キリスト教の指導者と団体は、先週発生した米サウスカロライナ州チャールストンの黒人教会での銃乱射事件を米国の「排外主義の罪」として非難した。一方、聖書の勉強会中に9人が殺害されるというこの事件の渦中にあるチャールストンでは、住民やさまざまな宗教の指導者ら4千人以上が追悼集会のために集まった。
米最大のプロテスタント教派である南部バプテスト連盟(SBC)の倫理信教自由委員会は、チャールストンにあるエマニュエル・アフリカン・メソジスト監督(AME)教会で17日に起きたこの大量殺人事件について声明を発表し、「祈っている人を殺害することよりも邪悪なことは、ほとんどないでしょう」と述べた。
「この流血の行いは邪悪で、しかも邪悪という言葉では言い切れないほど邪悪です。主が悪魔を『最初めから人殺し』(ヨハネ8:44)だと教えているように、これは文字通り悪魔的です」と声明には書かれている。この声明には、同委員長のラッセル・ムーア牧師とSBCの3人の指導者が連名で署名している。
SBCの指導者たちは声明で、「ほとんど毎週のように、通りで武器を持たない黒人やその子どもが殺害されたり、教会で礼拝者が殺されたりするなど、米国社会で排外主義の罪を表す事件が見られます」と指摘。「これは終わらせなければなりません。そしてイエス・キリストの教会がその道を導かなければなりません」と述べた。
教会員2万人のフロリダ州ロングウッドにあるメガチャーチ「ノースランド」の主任牧師、ジョエル・C・ハンター博士は、この事件を「聖徒たちに対して行われた恐るべき憎悪の行い」と呼んだ。
「とても良い人、良い場所が悪のうちの最悪なものに蹂躙(じゅうりん)されるということに対し、理解に苦しんでいる人が非常に多くいます」とハンター博士。「私たちは、初めから人殺しであり、そして今でも人々の心にうそをささやき続ける本当の敵がいることを知っています。しかし、私たちにはキリストに従う責任があり、この痛みを克服するよう召されていることも知っています」と語った。
さらにハンター博士は、キリスト教徒は「悪を善で打ち負かすために、全ての人種的、民族的な境界を乗り越え、関係を築くためにできることを全てする」必要があると述べた。
米国のプロテスタント福音派教会が加盟する米国福音同盟(NAE)は「深い悲しみ」を表した。NAEは声明で、「この悲しみと喪失の時に、私たちは慰めと希望を求め、神に向かいます。この殺人事件は多くの人に死と惨劇をもたらしましたが、(事件で亡くなったエマニュエルAME教会の)ピンクニー牧師が読み、教えたこの聖書は、イエスの死と復活によって神が既に罪と死を打ち破っていることを確証します。神の目的は妨害されることはありません。私たちは犠牲者を記念し、この殉教者たちの死が無駄にならないことを強く信じます」と述べた。
米国のヒスパニック系教会をまとめる全米ヒスパニック・キリスト教指導者会議(NHCLC)代表のサミュエル・ロドリゲス牧師も声明を発表した。
「チャールストンでの大量殺人は、闇と光の間に戦いが存在することを再び証明しました。憎悪と暴力が平和と愛を打ち倒そうとするとき、全ての米国人、全ての人類が苦しみます」とロドリゲス牧師は述べ、「憎悪と不寛容が残した全ての痕跡」を糾弾し、「沈黙は選択肢にありません」と語った。
キリスト教系通信社の指導者約100人からなる全米宗教放送協会(NRB)の代表兼CEOであるジェリー・A ・ジョンソン博士は、この事件を「非常識で、卑劣で、邪悪な襲撃」だとし、ショックを受けていると語った。
NRBは今年初頭、満場一致で「いかなる人種差別、民族差別、憎悪を非難する」とする決議を可決。また、その決議で「救いによって、全ての人種的、民族的背景を持つ信者がキリストにあって一つであることに感謝します」と宣言していた。
一方、事件のあったエマニュエルAME教会から徒歩5分ほどの距離にあるチャールストン大学では、事件発生から2日後の19日金曜日夜に追悼集会が行われ、地元市民や宗教指導者ら4000人以上が集まった。
「私たちは今晩、祈りと愛の中で集まりました」。チャールストンのジョセフ・ライリー市長は追悼集会でこう語り、プロテスタントやカトリック、またユダヤ教の聖職者も参加する中、市の楽団が賛美歌「アメイジング・グレイス」を奏でた。