北アフリカのリビアで先月、過激派組織「イスラム国」(IS)により21人の若いエジプト人キリスト教徒が殺害されたことを受け、聖書の言葉を載せたリーフレット160万部以上が、エジプト全土に配布された。
エジプト聖書協会によるこのキャンペーンは、この殺害事件のために悲嘆に暮れている自国のキリスト教徒や、信徒でなくても悲しみに暮れている人々を励まし、力づけることを目的としている。
「これはエジプト史上、キリスト教のリーフレットとしては最も広範囲にわたり配布されたものでは」と、エジプト聖書協会のラメン・アタラー氏は語った。
「Two Rows by the Sea」と題されたリーフレットは、最初に首都カイロのコプト大聖堂内で、コプト正教会の教皇タワドロス2世により毎週行われている聖書研究会で配布され、その後、全国の教会に配布された。
アタラー氏は、「残忍な殺人事件に国中が悲しみに包まれており、またリーフレットは速やかに入手可能であったため、キリスト教徒たちはそれを、通りやお店、バス、電車など、いろいろな所で配布してきました。そして結果として、リーフレットはさまざまな職業やあらゆる階層の人々の元へ到達することとなったのです。また私たちは、リーフレットをイスラム教徒の友達からもらった、近所の人からもらった、と言うキリスト教徒が何人もいるということをたくさん耳にしました」と語った。
リーフレットには、ある若い男性の信仰に関する詩が取り上げられ、それと共に5つの聖句が載せられている。
「われわれは、悲しみを慰める何かを提供したかったのです。人々は、今回若い男性たちが殺されたことに関して絶望し、また多くの疑問を抱えていました。簡単な答えはなかなか見出すことはできません。しかしながら、聖書は、私たちには試練の時というものがあり、私たちに対する神の愛は決して尽きることがない、ということを思い出させてくれます」とアタラー氏は言う。
ペトロの手紙一4章12節には、「愛する人たち、あなたがたを試みるために身にふりかかる火のような試練を・・・驚き怪しんではなりません」とあり、続く14節には「あなたがたはキリストの名のために非難されるなら、幸いです。栄光の霊、すなわち神の霊が、あなたがたの上にとどまってくださるからです」とある。
アタラー氏は、この殺人事件が、エジプト国内のキリスト教徒とイスラム教徒を団結させることになったと言う。
「ISは、この殺害事件で、エジプトのキリスト教徒とイスラム教徒の宗派間の対立を助長することを狙っていたようですが、それはかえって逆効果となりました。どうなったかといえば、キリスト教徒たちは悲嘆に暮れ、神に助けを叫び求め、イスラム教徒たちはキリスト教徒たちに愛や憐みを示す、という行動を取ったのです」
「この悲しみの時期と前代未聞の空しさにある中、神様がこの聖書リーフレットを用い、多くのエジプト人を力づけ、立ち向かっていくことができるように、私たちと一緒に祈ってください」
一方、英国では、チャールズ皇太子とジャスティン・ウェルビー・カンタベリー大主教が、「When Left Behind」というキャンペーンで寄付を呼び掛けている。これは、殉教したキリスト教徒の家族のため、英国コプト正教会のアンジェロス主教により立ち上げられたもの。
アンジェロス主教は、「今回亡くなった男性たちの家族の方々と喪に服すと同時に、彼らの信仰の確信、強さ、尊厳と勇敢さを喜びます。この父たち、兄弟たち、おじたち、息子たちは、決して忘れ去られることはありません」と述べた。