日本バプテスト連盟上尾キリスト教会(埼玉県上尾市)で10日、東日本大震災チャリティコンサートが開催された。ゲストは、米オレゴン州ポートランドから来日した、日本インターナショナルバプテスト教会のミッション・エステル。ゴスペル、サインダンス、ゴスペルフラ、ヒップホップダンスなど、多彩なパフォーマンスで教会全体を笑いで包み込んだ。
日本インターナショナルバプテスト教会の横井マイク牧師率いる、ミッション・エステルのメンバーは3人のマダムだ。軽快な「ラップもどき」に乗せて、それぞれ自己紹介する。
「私の名前はメリー鮫島 見た目は外人 心は日本人 父アメリカ 母日本 日本人夫婦に育てられ 生まれも育ちも沖縄です 結婚相手はエチオピア人 12歳でクリスチャン 涙を流すも上辺だけ 40年目に目が開け 今は神様一番 5人の子どもとアメリカで頑張ってます! サンキューゴッド!」
「私の名前は由美子横井 生まれは九州熊本です 19歳でクリスチャン 元気にのびのび明るい青春 仕事は助産師順天堂医院 23歳で結婚し10年後にアメリカ大陸 主人は牧師 子どもは6人 最初の3人メイドインジャパン 最後の3人メイドインUSA 45歳で6人目 乳離れしたのが50歳 子育て終わり今が青春真っ最中! サンキューイエス様ありがとう!」
「私の名前は睦子ウェップサラ 国際結婚 青い目金髪かっこは良いけど 5年で離婚 一人暮らしの気ままな生活 毎日毎晩パーティ三昧 そんな私が教会へ 生まれて初めて読む聖書 アーメンそーめんと馬鹿にする それでも不思議と教会へ 通い続けて30年 そんな私が伝道師 今年は70ますます元気 イエス様が私の最後の主人 毎日ラブラブ永遠に!」
「何が起こるか予想がつかない」と横井牧師がアナウンスする通り、ダンスメドレーが始まると、詩吟からフラメンコ、ゴスペルフラ、ヒップホップダンス、サインダンスといったさまざまなジャンルのダンスが披露される。曲調が変わるだけでなく、次々と変わる衣装に観客は目を見張る。メリーさんの圧倒的な歌唱力で歌うゴスペルに聞きほれていると、最後にはアフロヘアーのかつらを宙に投げて笑いを誘う。「次は何が起こるのだろう」という期待の視線が会場を満たすのが分かる。
ミッション・エステルは、別名「ピラニア・ミッション」というそうだ。下手でもかじったものはすべて取り込む、伝道のツールになるものならなんでも取り入れる。表現方法は自由だが、忘れてはならないのが「福音を伝える」という軸から外れないこと。「踊りの出来は褒められなくても、全てのことが十字架につながっている」と話す。
何よりも、教会が楽しい場所だということを伝えたいのだという。堅い、暗い、つまらないといった教会のイメージを壊すために、面白さと笑いをもって乗り込んでいくのだ。数多くあるレパートリーを場面に合わせて組み合わせ、証しと共に集会を開く。
どこに行っても驚かれるというミッション・エステルだが、一番オリジナリティーが高いのは、「天国のファッションショー」というパフォーマンスだ。新約聖書のヨハネの黙示録に描かれる輝かしい天国のイメージを、コミカルにドレスで表現する。水晶のように光るいのちの水の川を水色のドレスで、いのちの木を緑のドレスで、キリストの血潮を赤いドレスで、といった調子で表現。鮮やかな色のドレスで登場した3人は、「天国って最高! 皆様もぜひいらしてくださいね!」とランウェイを歩く。最後は、真っ白のウェディングドレスで登場。クリスチャンの最高の望みである、新しい天からの衣をいただき、キリストの花嫁として迎えられることを表現する。
教会の女性が、しっかりと男性を支える教会の縁の下の力持ちになれるように、女性のための集会を持とうと、教会でゴスペルフラの学びを開催したのが全ての始まりだった。学んだことを伝道に使えないか、という思いを一つにした仲間が与えられ、ミッション・エステルは誕生した。また、女性の好きなことをやりたいと考えた由美子さんが、趣味の古着屋巡りの中で、黙示録に描かれた色の描写にヒントを得てファッションショーが企画された。このショーを開催したある病院の集会では、「これから自分が行く場所がどんな場所かより具体的に想像できるようになりました」と、ガンの末期患者が立ち上がって証しをしてくれたこともあったそうだ。
ミッション・エステルが活動を始めたのは10年前。「自分がどこにいたとしても、祈りの対象は日本人の救霊だ」と話す横井牧師は、それ以前の1995年から毎年数人のチームで日本伝道旅行を行っていた。米国で救われて帰国した日本人を確実に根付かせることができるように、安心して紹介できる教会との信頼関係構築を目指して、教派を超えて教会を回っていた。そこに7年前からミッション・エステルが加わり、今に至っている。「半年以上をかけて週3回の練習と、遣わされる教会への祈りを積み重ねている。霊的に良いものをという努力はしっかりと積まれている」と横井牧師は太鼓判を押す。「技術的にも年を重ねるごとにレベルが上がってきている」と言う。
「神様は本当に素晴らしい。人前で踊ったことがなかったような、こんな私たちを用いてくださって」と話す3人のメンバー。「ミッション・エステルだからといって、『美人はどこに? エステルはどこに?』と聞かれたことがあるのよ! 私たちは聖霊美人よ!」と笑いながら話す。「一番大切なのは笑顔。一人ひとりのうちにイエス様が輝いて見える」と横井牧師が話す通り、「教会に笑いを届けたい」と語る3人こそが、常に笑顔に溢れて楽しそうだ。
米国本土、日本に続き、ハワイにも行きたいと願っていたミッション・エステル。今年初めてその願いが実現した。関東、関西を回り、14日に日本での全行程を終えたメンバーは、オレゴン産のフラを携えて、本場ハワイに飛び立った。
「恥はわがもの、栄光は主のもの! 私たちにあるのは度胸だけ!」