米国でも有名なサドルバック・ゴスペル・クワイヤのメンバーが今月来日し、日本国内3カ所でワークショップを行った。サドルバック教会は、2009年にバラク・オバマ米大統領の就任式で祈りを導いたリック・ウォレン牧師が30年率いる教会としても有名。教会員は3万人とも言われる。ゴスペルクワイヤでも、ソロを歌ったり、チームを組んでセッションを行うときは、オーディションがあるほどだ。
ワークショップは、東京、神奈川、長崎の3カ所で行なわれた。各場所とも参加人数が200人を超えるほど、大人気のイベントとなった。13日から2日間は、東京都練馬区の江古田にある聖書キリスト教会でワークショップを行い、15日には、ワークショップに参加したメンバーとサドルバックメンバーによるコラボレーションも実現し、コンサートを行った。こちらにも日本全国から参加者が集い、参加者はレコーダーで録音するなどして、熱心に彼らの指導に聞き入った。
聖書キリスト教会内で活動する「江古田ゴスペルクワイヤ」のサドルバック担当リーダーである岡田知子さんは、「昨年に引き続いてのワークショップとコンサートになりますが、今回はゴスペル音楽のテクニックだけでなく、ゴスペルとは何なのかを、サドルバックメンバーにゴスペルとの出合いなどを話してもらうことによって伝えられれば、良い証しになるのではと、Meg 先生をはじめサドルバックチームと考え、セミナーの時間が作られました。今回の参加者は8割以上が未信者の方々です。ゴスペルを通して神髄にあるメッセージを紹介する機会になればと思っています」と話した。
小学生の時に家賃が払えなくて、一家で家を追われてしまったエリック・ライジさん。近所に住んでいた友人が空家に住まわせてくれた。この空家のゴミ箱の中には、たくさんのレコードがあった。そっとそれらを聞いてみると、ソウルフルなゴスペル音楽が。これが、エリックさんがゴスペル音楽と出合った瞬間だった。一時、ロックシンガーになるも、再びゴスペル音楽の道へ。「音楽の中にあるメッセージをよく聞いてほしい」と語った。
アンディー・デロス・サントスさんは、クリスチャンホームで生まれ育った。何事も「祈り」から始まる家庭だった。幼い頃から歌は大好きだったが、「信仰」と「音楽」につながりはなかった。大学では音楽を専攻。クラシック音楽を勉強した。
クラシック音楽に少し飽きてきたころ、自分で歌える場所を求めていたところ、サドルバック教会のゴスペルクワイヤに出合った。「ただ大声を張り上げて歌うだけかな」と軽い気持ちでのぞいたと、当時のことを話した。しかし、歌えば歌うほど、音楽の中にある「メッセージ」を感じることができ、「信仰」と「音楽」が結びついた。「ただ、歌う場所を探してフラフラしていた大学生を、こんな形で神様が遣わしてくださるなんて思いもよらなかった。しかし、神様の計画は素晴らしい。感謝している」と話した。
サドルバッククワイヤのメンバー中唯一の日本人であるマリ・パクストンさん。愛知県出身のマリさんは、浄土真宗の家庭で育つ。小さい時から歌が大好きで、両親に「うるさい!静かにして!」と言われるまで歌っていた。横断歩道の信号が赤に変わると、待っている人をオーディエンスに歌ったこともあった。両親が「そんなに歌が好きなら」と名古屋市の合唱団に入れてくれた。
しかし、中学生の時にひどいいじめに。何もかもが嫌になり、高校は自分のことを誰も知らないところで一からやり直そうと家から3時間もかかる遠い学校を選んだ。それからも歌い続け、コンクールで優勝したり、15歳でコマーシャルソングを歌うようにもなった。
しかし、あんなに好きだった歌が苦痛になるときがやってきた。歌をやめ、海外へ出たくなった。ちょうどその時、オーストラリアで仕事をする機会に恵まれた。英語は大嫌いだったが、とにかく歌をやめて、新しいことをしたかった。その後、アメリカ人と結婚。渡米することになる。さまざまな人たちとの交流を求め、日系人のための教会に通い、その後受洗。夫から「そろそろ歌ってみたら?」と言われ、少しずつゴスペル音楽の集いなどにも参加するようになった。
ワークショップでは、「ゴスペルを歌うとどうして慰められるのでしょうか?そこに神様がいらっしゃるからです。どうして気持ちが落ち着くのでしょうか?それは神様の言葉が生きてるからです」と訴えた。最後に、「ゴスペルは歌の上手、下手ではない。音楽の才能がある人のためだけのものではない。神様が私たちと共にいらっしゃるから、どんなことでも乗り越えられるのです。ゴスペル音楽には、すごい力があるんです」と語った。
3万人が集うメガチャーチ、サドルバック教会のワーシップディレクターを務めるアルバ・コープランドさんは、本紙のインタビューに対して「参加者の8割以上がノンクリスチャンと聞いて、われわれには大きな使命があると感じていた。ただ英語の歌を単語の羅列として、覚えて歌うだけでなく、本当の意味は何なのか、心を込めて歌うとはどういうことで、それを通して自分自身を表現するとはどういうことなのか、ということを伝えていきたいと思います」と答えた。「私は、とにかく日本が大好き。食事は特に気に入りました。うどんや寿司、全てがおいしい」と、今回2度目となる来日だが、日本の印象を語ってくれた。
マリ・パクストンさんは、近年の日本国内での「ゴスペルブーム」に対して、「クリスチャンの方々でゴスペル音楽が大好きで、歌っていらっしゃる方も多いと思います。クリスチャンの方々は、特に音楽を通して証ししてほしい。また、まだ信仰を持たない方々で、ゴスペル音楽が好きな方もいらっしゃると思います。ゴスペルを歌うとなぜ慰められるのでしょう?なぜ、楽しくなるのでしょう?なぜ心が軽くなるのでしょう?その意味を時間がかかってもいいから、考えてみてください。一つの答えに出合うはずです」と話した。
サドルバックメンバーの陽気な笑顔と神様からいただいた「賜物」である彼らの歌声は、何よりの「証し」となった。