先月29日から行われていた、クリスチャンのパルクールトレーサーによる「インスパイヤーツアージャパン2014」の最終イベント「東京JAM」が7日、横浜市の山下公園で行われた。
パルクールとは、フランス発祥の走る・跳ぶ・登るなどの移動動作で体を鍛える方法、または自分の身体のみを使って、ある地点からある地点まで、できるだけ速く効率的に安全に移動する技術。周囲の環境を利用した身体動作で、どんな地形でも自由に動ける肉体と、困難を乗り越えられる強い精神の獲得を目指すものだ。
その歴史は、20世紀初頭までさかのぼる。元海軍将校であったジョルジュ・エベルは、アフリカ滞在中に出会った民族の身体能力と巧緻(こうち)性に非常に感銘を受ける。その後、ジョルジュはカリブ海に浮かぶ島国マルティニークで起きたプレー山の大噴火の救助活動に参加。その経験から、「身体能力は勇気や利他の精神と共にあるべきだ」と考えるようになり、フランスの軍事教育とトレーニングとして指導を始めたのがそのルーツと言われ、この精神を受け継ぐパルクールの実践者を「トレーサー」と呼ぶ。
近年では、アクション映画やフリーランニングと呼ばれるパフォーマンスにも取り入れられている。
日本でのツアーは今回で2回目。東京にある水場コミュニティチャーチや、今年11月に日本武道館で開催される伝道集会「セレブレーションオブラブ with フランクリン・グラハム」の協賛で行われ、8カ国から22人のトレーサーが来日した。最終日には、インターネットで事前に応募したパルクールのファンや、彼らとの交流を目的に来た約100人が集まった。ツアー全体を通して延べ200人以上が参加したという。
一見すると、忍者か、マンガやアクション映画のヒーローをほうふつとさせる動き。しかし、これを実践するには、1メートルの幅のジャンプを何万回も繰り返すといった、並大抵ではない練習をするという。このツアーのオーガナイザーで、クリスチャンの家庭で育ったトレーサー、Masaさんは、生きている意味を見失っていたときにパルクールと出会い、練習を続けるうちに神が与えたこの肉体や才能に感謝するようになったという。「最初、『僕にもこんなことできるかな?』と思って始めました」と振り返る。
ツアーチームのリーダー、ダニエルさんも「やんちゃだった自分が(体を動かして)更正するときに、母が祈り愛し続けてくれた。それまで(クリスチャンファミリーだが)神様とは疎遠だったけど、母の姿を見て、神様と関係を築こうと思った」と、パルクールとの出会い、また陰にあった母の祈りを語る。
パルクールを伝道に用いようと思ったきっかけは、東日本大震災だったとMasaさん。「ソーシャルワーカーじゃないし、お金もたくさん持ってないけど、『それでも僕にできることは何だろう?』と考えました」と語る。その後、彼はパルクールやダンスなど「動き」を通してメッセージを伝えられないかと、チームを率いて東北の17カ所を回った。
ダニエルさんも今回のツアーについて、「誰かに『お前は罪深いから、悔い改めなさい』なんて言ってもうまくいかない。勉強した賢い人にではなく、子どものような素直な人に神様は奇跡を見せると聖書にあります。僕らが何かをするんじゃなく、神様が僕たちを通してやってくれる」と言う。
日本についての印象は、「日本人の『侍』のような仕える心は素晴らしく、神様の愛とリンクしているように思う」とコメント。一方、日本のクリスチャンの現状について、教会が新しい表現の仕方を避けることで、イメージを悪くしてしまったように見えるとも語った。
「30カ国近くの国を回ってみて、それぞれの国に神様の機関としてそれぞれの良さがあることが分かった。聖書は『~をしなさい』ってものではなく、神様を表現するためのガイドライン。僕たちは神様の奴隷ではなく、神様の『息子』として、一緒に『自由な表現』を通してワーシップ(賛美)して、神様の愛を体現したい」とビジョンを明かした。
インスパイアツアーの様子はフェイスブックで、オーガナイザーのMasaさんのパフォーマンスはユーチューブで公開されている。
■ Masaさんのパフォーマンス
※ 動画は万全の安全管理のもと撮影されたものです。また大変難易度が高く、訓練が必要であるため、決して安易にまねしないでください。