世界最高峰の音楽賞「グラミー賞」の第57回授賞式が9日、米ロサンゼルスのステープルズ・センターで行われた。
グラミー賞は、音楽業界のアカデミー賞ともたたえられる、ナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンス(NARAS)が主催する音楽賞。当初は、グラモフォン(Gramophone)賞と呼ばれており、現在は略してグラミー(Grammy)賞と呼ばれるようになった。音楽業界全体の振興と支援を目的とする賞だが、現在世界で最も権威ある音楽賞の一つとみなされている。これまでの受賞者の中には、クリスチャンのアーティストも数多く含まれている。また、ゴスペルやクリスチャン・ミュージックの部門も用意されるなど、商業的にも大きな注目を浴びている。
授賞式では、さまざまな趣向を凝らしたパフォーマンスが行われ、誰が受賞するかのみならず、世相を表すパフォーマンスも注目を浴びる。世界中で人気を博し、アニメ映画『怪盗グルーのミニオン危機一髪』(原題:Despicable Me 2、2013年)の劇中歌としても登場した「ハッピー」を歌ったファレル・ウィリアムスは、今年のグラミー賞では、ビヨンセ、サム・スミスと共に6部門でノミネートされ、3部門で受賞。授賞式でのパフォーマンスでは、昨年米国内で相次いだ無抵抗・無防備の黒人男性が白人警官によって死に至らしめられた事件に対する抗議を表現した。
一方、最優秀R&Bパフォーマンス賞などを受賞したビヨンセは、「プレシャス・ロード」(原題:Take My Hand, Precious Lord)を熱唱。大きな注目を集めた。
「プレシャス・ロード」は、マーティン・ルーサー・キング牧師のお気に入りとしても知られる有名なゴスペル。1965年にアラバマ州で行われた有名な公民権運動の行進を描き、今年のアカデミー賞作品賞にノミネートされた映画『セルマ』の中でも、レデシーが歌っている。
ビヨンセは、自身のホームページとユーチューブで公開したドキュメンタリー動画で、「私の祖父母は、キング牧師の行進に参加しました。父は、白人だけの学校にアフリカ系米国人が入学した最初の世代」と明かし、「この世で生き、闘い、涙を流し、そして光と情熱をうちに秘める、そんな本物の男性たちを表現したかった」と、アフリカ系米国人への敬意を表現したと語った。
授賞式の後、米国のネット上では彼らアーティストが発したメッセージが広く拡散。「#Handsupdontshoot(手を挙げろ、撃たないで)」や「#Blacklivesmatter(黒人の命も大切)」といったハッシュタグで、多くの人が人種の問題について声を上げた。特にアフリカ系米国人向けの月刊誌『エボニー』は、「音楽界で最大の賞のステージで、何てすごい主張だろう」と、ウィリアムスを絶賛。単なる商業音楽の振興を目的とした授賞式以上の「世界で最も権威ある音楽賞」にふさわしい影響力を見せた。
■ 第57回グラミー賞授賞式で「プレシャス・ロード」を歌うビヨンセ