学者や評論家ら8749人が26日、朝日新聞の慰安婦問題に関する報道で、原告を含む日本国民の人格や名誉が傷つけられたとして、同紙に1人当たり1万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした。2月にも追加提訴する予定で、最終的には1万人を超える見通しだという。同紙など国内各紙が伝えた。
朝日新聞によると、訴えたのは渡部昇一・上智大学名誉教授や評論家、衆院議員を含む、呼び掛けに応じた国内外の人々。同紙が1982〜94年に掲載した慰安婦問題に関する記事計13本を「虚報」だとし、同紙の記事が海外に広く紹介され、ねじ曲げられた歴史が拡散したことで、「日本国と国民の国際的評価は著しく低下し、原告らを含む国民の人格や名誉が傷つけられた」と訴えている。同紙広報部は「訴状をよく読んで、対応を検討します」としている。
一方、同紙の慰安婦問題に関する一部の記事を書いた同紙元記者の植村隆氏は今月9日、自身の記事を「捏造」だと非難する記事や論文で名誉を傷つけられ、これらが原因となり脅迫など人権侵害を受けているとして、文芸春秋と西岡力・東京基督教大学教授に計1650万円の損害賠償と謝罪広告などを求める訴訟を起こしている。
植村氏は、子どもの写真がネットにさらされ誹謗中傷を受けたり、週刊誌記者による盗撮があったなどとし、家族や周辺にまで危害が及んでいると訴えている。植村氏をめぐっては、同氏を非常勤講師として雇用していた北星学園大学に悪質な脅迫状が複数届くなどして問題となっていた。同大は昨年12月、同大内のさまざまなレベルで議論を重ねた上で、植村氏と2015年度の契約を更新することを発表している。
植村氏は、韓国の元慰安婦の証言をもとに、1991年8月11日と、同年12月25日に署名入りの記事を書いている。同紙の慰安婦報道を検証した第三者委員会は、昨年12月に発表した報告書で、「担当記者の植村がその取材経緯に関して個人的な縁戚関係を利用して特権的に情報にアクセスしたなどの疑義も指摘されるところであるが、そのような事実は認められない」とする一方、「強制的に連行されたという印象を与えるもので、安易かつ不用意な記載であり、読者の誤解を招くものと言わざるを得ない」「事案の全体像を正確に伝えなかった可能性はある」と指摘している。
植村氏は9日に開いた記者会見で、「私は捏造記者ではありません。不当なバッシングには屈しません」(同紙)と述べている。