今回で4回目となる米国東海岸伝道旅行を行っているスモール・ストーン・ミニストリー代表の井上薫牧師・比呂子夫妻。そのこぼれるような笑顔からは想像がつかないが、薫牧師は極道の世界で10年間生きてきた元ヤクザだ。ヤクザの世界から足を洗い、今では180度変わった人生を歩んでいる薫牧師と、共に伝道の働きを行っている比呂子夫人に話をうかがった。
「一度きりしかない人生、まじめにやってもやらなくても同じだ。どうせ生きるなら、好き勝手に面白おかしく生きてやれ」。人生に生きる意味を見出せず、暴走族からヤクザの世界に入った薫牧師。覚せい剤にも手を出し、被害妄想と錯乱で3度の自殺未遂を繰り返した。「日々地獄の中に生きていた」と言う。
死のうとしても何度も命が守られ、死ぬこともできずに絶望と孤独の中にいる中、一人のクリスチャンに聖書を手渡された。それが今では妻となった比呂子夫人だった。むさぼるように聖書を読んだ。すると暗闇だった心に光が当てられ、一筋の希望が見えてきたのだ。神の深い愛と憐れみに捕らえられた瞬間だった。その一筋の希望の光を見たときから、現在牧師として世界中で伝道活動を行うようになるまで、そこには書ききれないほどの涙と笑い、冒険のストーリーが続く。
現在は夫妻で、教会でメッセージをするほか、少年院や刑務所、学校などを訪問し、自身の体験の証をして生きる意味を伝え、傷つき、さまよい、苦しむ人たちを励ます働きをしている。宣教で訪れた国は、米国、中国、ブラジル、オーストラリアをはじめ14カ国に上る。今回の約1カ月にわたる伝道旅行は、ワシントンDCに始まり、ニュージャージー、ニューヨーク、ペンシルバニア、コネチカット、マサチューセッツと続く。礼拝でのメッセージも数えると、集会数は全22回とかなりのハードスケジュールだ。
「疲れませんか?」との質問に、「用いてくださるところには、イエス様の愛を伝えにどこにでも行きます。このような小さな石(スモール・ストーン)にしかすぎない私たちを使ってくださるのは主ですから、感謝なのです」と言う。また、「自分の証で終わることなく、イエス様が栄光を受けるようにメッセージをすることを心がけています」と、とことん謙遜で従順な姿で話す。
ペンシルバニア州アレンタウンにあるニュービギニング・フェローシップ教会で、薫牧師による日英バイリンガルメッセージを企画したアゴニス康代さんは、「参加者は励ましを受けたという声はもちろん、今まで以上に日本のために祈っていきたいという米国人の方や、神様の存在を信じたいという未信者の方の声も聞かれました」と言う。「参加者一人ひとりにとって恵み溢れる集まりとなり、大変感謝しています」と語った。
参加者の一人で、日本人婦人の集まりを開いたホリンガー佳代子さんは、「人間には不可能なことが、神にはできるということを、ご夫妻の証を通して改めて教えられた」と感想を述べた。また米国人からの反応も大きく、早速地元の教会から次のスケジュールの問い合わせもあったという。今後ますます国際的な活躍も多くなりそうだ。
日本のクリスチャンに一言と尋ねると、「畑は色づいて刈り入れるばかりになっていますが、働き人は足りないのです。皆さん、イエス様の愛を伝えましょう!」と薫牧師。比呂子夫人は「人間のはかりで神様を計ることなく、神様のご本質を皆さんに知ってもらいたい。その本質とは愛です」と語ってくれた。
「キリスト馬鹿と呼ばれても、自分の評判などはどうでもいいのです。イエス様の愛だけが人の心に残ってくれれば」と、笑いながら薫牧師は話す。井上夫妻が置いていった「福音の種」は、米国のこの地でも、豊かな実を結ぶことだろう。
井上薫牧師・比呂子夫妻によるスモール・ストーン・ミニストリーの活動の詳細や問い合わせはホームページで。