18歳でヤクザの世界に入り、32歳でキリストに出会うまで実に3度の逮捕歴があり、服役期間は合計で7年半。体には大きな刺青が今でも残り、時折見せる鋭い眼光に、一瞬、ドキッとする。しかし、その瞳の奥にあるのは、キリストへの信仰と愛。「神様、助けて!」と独房の中で叫び、祈った進藤龍也氏(「罪人の友」主イエス・キリスト教会牧師)の新書『あなたにもある逆転人生!』(いのちのことば社)について、進藤氏本人にインタビューをした。
「以前の著書『人はかならず、やり直せる』(中経出版)がローマ書なら、今回の本はガラテヤ書みたいなものかな。内容をギュッと凝縮して、最近のエピソードなども加えながら、書き上げました」と微笑む。その笑顔は、かつて「組長代行」という恐ろしい役職があったことを微塵も感じさせない平安に満ちたものだった。
2度目の服役中に、元ヤクザで牧師の鈴木啓之氏の著書を獄中で読んだ進藤氏。その後、3度目の服役で、「減刑嘆願書」を書いてもらおうと鈴木氏に手紙を書く。「むしの良い話し」だとは思ったが、鈴木氏はその願いを聞き入れてくれた。「お礼に聖書でも読んで、感想文を鈴木さんに送るか」と差し入れてもらった聖書を読んでいる時に、その後の人生を180度変えてしまう御言葉に出会う。
「わたしは悪人が死ぬのを喜ばない。むしろ、悪人がその道から立ち帰って生きることを喜ぶ。立ち帰れ、立ち帰れ、お前たちの悪しき道から。イスラエルの家よ、どうしてお前たちは死んでよいだろうか」(エゼキエル書33:11)
この時のことを「読んだというより『出くわした』と言った方がいいほどの衝撃を受けました」と著書の中で語っている。この中でも特に進藤氏の心に迫った言葉が、「悪人」と「立ち帰れ」の2つの言葉だったという。獄中では、聖書の通信講座も受講した。
それから、進藤氏は伝道者になりたいと願うようになった。出所後に受洗するも、多くの仲間から元の世界への誘いが。しかし、一切のつながりを断ち切り、地道に日雇いの仕事などをこなした。悔しい思いもたくさんした。体に刺青があることで、白い目で見られることもあった。そんな時は、どんなに罵られても、嘲られても、父なる神からの使命を果たすために全てを耐え忍んだキリストを思い出した。
「ゆるされるために善い行いをしよう、クリスチャンだから善い行いをしようと思っているといつか燃え尽きる。すでに自分はゆるされたのだという基盤があったから、頑張れた」と、進藤氏は当時を振り返る。
今は、「助けられていない分野」と進藤氏が例える人たちを救うための働きを行っている。進藤氏の噂を聞いて、またかつての進藤氏と同じように獄中で著書を読んだという人たちが、突然、教会の前に現れ、「先生、助けてください」と訪れることも少なくないという。「年間8人から10人くらいそういう人が来るかな。それでも、いわゆる社会的に更生する人は、年間1人いるかいないか。あとは、教会に寝泊りしていても、いつの間にかいなくなったり、再び罪を犯して逆戻りする人もいる」と進藤氏。これも「想定内」と涼しい顔で答える。
著書の中で語っている中学生の頃からの知り合い「Aさん」。旧知の中だからとパソコンやバイクなども貸出していたが、ある日、それらを含む教会のものまで盗むようになり、売却してしまっていた。当然、彼は獄中へと逆戻りすることになるが、「出所したら、またたっちゃん(進藤氏)の所に行きたい」と言っていた。執行猶予が出たと裁判所からの連絡があったものの、出所後に「必ず教会へ謝罪に行く」との約束は果たされないままだ。一方、著書の中で「Tさん」として登場する人物は、「2カ月ほど前に出所してきましたよ。今は、真面目に働いて、自分で教会の近くのアパートを借りて、頑張っています」と話してくれた。
また、著書の中で「奇跡の復活を果たした人」として紹介されている「まっちゃん」の後日談を明かしてくれた。闇金融の世界に手を染め、逮捕。獄中で進藤氏の著書に出会った「まっちゃん」。出所後に受洗するも、脱法ハーブなどの売人をしたり、本人も使用したりしていたが、ある日、突然心肺停止状態に。父母の祈り、周りの祈りに支えられて、奇跡的に回復。近々、カーネル神学校に入学の予定だという。
進藤氏の集会に姿を現した「まっちゃん」は、「この人だよ!この人だよ!まっちゃん!悪かったんだよ、本当に」と紹介され、少し照れたような笑顔を浮かべた。ファインダー越しに2人が並んだ姿を見て、キリストにあって兄弟とはこうも美しいものかと感じた。さらなる後日談を、主の尊い導きが彼らの上にどのように輝いたのかを、いつの日かまた伺いたい。