ローマ教皇フランシスコは14日、韓国に到着し、同国の大統領府(青瓦台=チョンワデ)で朴槿恵(パク・クネ)大統領らと会談した。ローマ教皇の韓国訪問は、先々代の故ヨハネ・パウロ2世以来25年ぶり。教皇フランシスコがアジアを訪問するのは、昨年3月の就任以来初めて。
専用機に乗った教皇フランシスコは同日午前、ソウル近郊の空軍基地に到着した。朴大統領や韓国のカトリック指導者、さらに4月に起きた客船セウォル号沈没事故の遺族らが出迎えた。
同国大統領府の発表によると、朴大統領は教皇との会談で、これまで教皇が手紙を通して、韓国国民を祝福し、常に朝鮮半島の平和に大きな関心を持って祈るなど大きな愛を示してきたことに感謝した。また特に、セウォル号の被害者と遺族へ対する深い関心に感謝を示したという。一方、教皇は目上の人を敬う韓国の文化、また国民が懸命に働いて国を興したことを知っているなどと述べた。
一方、教皇は「平和は神からの贈り物」だと言い、韓国政府が平和のために懸命に努力していることを知っているとし、それに感謝を示した。また、アルゼンチン・ブエノスアイレスでの司教時代、現地の韓国人信仰共同体が熱心に教会に集まり伝道活動をしていたことを覚えていると話し、韓国が多くの宣教師を世界に派遣している国であることにも言及したという。
朴大統領は、朝鮮戦争の傷跡として残る離散家族の問題にも言及。北朝鮮との様々な問題も含め、朝鮮半島の平和実現と統一のために、教皇の継続的な関心と祈りを求めた。これに対し、教皇は家族が重要だとし、離散家族の痛みに理解を示し、カトリック教会が継続して支援していくと語った。
一方、韓国と北朝鮮が同じ言語を使用していることを「平和の種」だと表現。この種を植えよく育てていくことで、朝鮮半島の統一につながるとし、そのために祈ると語った。
韓国の聯合(ヨンハプ)ニュースが伝えた教皇の訪韓日程によると、教皇はこの日、ソウルの大統領府近くにあるローマ教皇庁大使館で宿泊する。過去に故ヨハネ・パウロ2世が宿泊したのと同じ部屋に泊まるという。
あす15日は、韓国では光復節(日本による植民地支配からの独立記念日)であり、また同時にカトリックの聖母被昇天の大祝日に当たる。教皇は専用ヘリで同国中部の忠清南道(チュンチョンナムド)・大田(テジョン)地域に移動し、聖母被昇天の大祝日ミサを執り行う。さらに同地域で開催中の第6回アジア青年大会に参加する(関連記事:韓国通信社が教皇訪問の詳細報道 慰安婦被害者との面会もあるか)。
教皇は訪韓に合わせ、公式ツイッターでは韓国語でもメッセージを発している。訪韓前日の13日には、韓国語と英語で「巡礼の旅を始めるにあたって、皆さんも韓国のため、アジアのために、私とともに祈ってください」とコメント。きょう14日は「韓国を、そして特にその高齢者と青年たちを、神様が祝福してくださいますように」「聖ヨハネ・パウロ2世教皇、私たちのため、ことに青年たちのためにお祈りください」などとコメントしている(日本語訳は、日本のカトリック中央協議会の英語からの日本語訳ツイートによる)。
一方、今回の韓国訪問では、バチカンと中国の関係に注目するメディアもある。米ウォール・ストリート・ジャーナル(日本語版)は、教皇が中国の領空を通過した際、中国の習近平国家主席宛に、平和と国家の繁栄を祈るという内容の電報を打ったと伝えた。
教皇は伝統的に領空を通過する国へ宛て電報を送るといい、今回のバチカンからソウルまでの飛行でも中国以外に9カ国に対して電報を送っている。しかし、1995年に故ヨハネ・パウロ2世がフィリピンを訪問した際は、中国は教皇の領空通過を許可しなかった。今回は許可しており、教皇からの中国宛の電報について、「小さなことが大きな意味を持つ」などと伝えた。また、バチカン放送(日本語版)も、教皇の海外訪問では、中国の領空通過は今回が初めてだと伝えた。
一方、今回の教皇訪韓に合わせ、韓国側は北朝鮮のカトリック信者を招待していたが、北朝鮮側はこれを丁重に断ったと伝えられている(関連記事:教皇訪韓行事に北朝鮮は出席を拒否「今ソウルに出て行くには、考えることが多い」)。