「無牧教会の人や教会に属していない人、クリスチャンではないけれど聖書を知りたい人たちのためにメッセージを届けたい」。その言葉どおり、田中啓介牧師は日米中3カ国の「家の教会」を巡るミッションを続けている。「聖書解釈は芸術だ」「牧師はハングリーアート」の持論そのままに、発せられる言葉には強い情熱がこもる。
田中牧師はウェブ教会「Good News Station」の創設者にして巡回伝道師。聖書を解き明かすメッセージの音声や動画をユーチューブなどに投稿し、サイトでは「お招きがあればどこにでも行きます」と発信している。日本国内にとどまらず年に数回米国の集いにも出向き、さらに中国の「家の教会」でも聖書講解の働きをしてきた。
「中国伝道は命懸けです。地下教会として信仰を守っている彼らと接していると、初代教会そのものの姿とリバイバルの現実を見ることができます。政権が変わって以来、取り締まりは厳しくなり、ここ1年ほどは中国に入ることができません。私たちのウェブサイトは中国では開くことができなくなっています」
岐阜県出身で現在56歳の田中牧師は、浄土真宗の寺の長男として生まれた。21歳で米国に留学し、卒業後はロサンゼルスの日本語放送局や新聞社などメディアの仕事を経験してきた。聖書に触れて33歳の時にウェストロサンゼルス・ホーリネス教会で受洗した。
その後、マタイ10章から召命を受け、JTJ宣教神学校、カリフォルニア神学大学院を経て、2003年に南部バプテスト連盟所属の牧師に。ロサンゼルスを拠点に牧会していたが、日本のリバイバルのため2011年に帰国した。現在は関東・東北地区を中心に、弟子訓練と「家の教会」の成長支援のため各地を巡回伝道している。
「数年前に米世論調査会社が行った調査によれば、日本には約6%のクリスチャンが存在するという結論でした。つまり、教会には属していないが自分はクリスチャンだと考えている人たちが多いということです。その人たちのために正しい福音を伝える必要を強く示されたことが、3年前に帰国して『Good News Station』を始めた理由です」
■ 救われた人々を育て、世に派遣するシステムを
「家の教会」が日本にほとんど存在していないこと自体が課題だとする。現在日本で田中牧師が関わっている「家の教会」は、「集い」の段階のものも含めて7カ所。出席の平均は5、6人だが、多い時には15人ほどが集まる。田中牧師がこれまでネット上で公開したメッセージ音声や動画は100本ほどあり、それを用いて聖書研究する「集い」が少しずつ増えているという。
「私の知る限り、日本の教会の霊的覚醒の兆しはほとんど見ることができません」と厳しい評価を語る。その理由を「加工場がない港に船は着けない」と例える。東北の被災地で路傍伝道していた時、復旧が進まない港の姿から閃いた。「せっかく魚を獲っても港に工場がなければ魚を腐らせてしまうだけです。魚を加工・配送するシステムがないのと同じで、救われた人々を教え、育て、世の中に派遣するシステムが日本の教会になければ、リバイバルは起こせないのです」
さらに、「現代の教会に力がないのは、教会が聖書の教えから離れ、聖書の真理をないがしろにしているからではないか」と指摘する。「前例がないから」「予算と人材を考慮して」といった理由ばかりが優先され、「聖書は何と言っているか? ということが充分に審議されていないのではないか」
「求められているのは『改善』ではなく『革新』です。新しい方法論や従来の改良ではなく『原点回帰』。初代教会の姿に戻り、聖書の原点に帰ることです。初代教会の人たちの生活(使徒2:44〜45)に倣うことができるのか? 彼らのような祈り(使徒4:29)ができるのか? しかし、聖書に真に忠実であるとは、そういうことなのです」
地域教会に属している人にも、「家の教会」は人々が教会につながるために必要なステップとの認識を持ってほしいと呼びかける。また、地域教会に属さずに、新しい教会構築のビジョンが与えられている人に対しては、霊的リーダーとともに弟子訓練の学びを続け、家の教会の活動を進めてほしいと言う。
「Good News Station」のサイトには「家の教会」を作りたいと考える人たちに向けた解説ページも設けられている。田中牧師は、求めがあれば世界中どこへでも謝儀なしで出向くとしている。
■ Good News Station
http://goodnewsstation.com
http://goodnewsstation.com/ienokyokai.html(家の教会を始めよう!)
http://goodnewsstation.com/lets-cell-list.html(Let's Cell)
http://bit.ly/1qMtAsE (YouTube)