シリア政府軍が、首都ダマスカスの郊外にあるレバノン国境付近の町マアルーラなどを反政府勢力から奪還した。国営通信であるシリア・アラブ通信(SANA)など、複数のメディアが14日に報じた。
「軍隊はマアルーラの安全と安定を回復し、この町周辺のテロリストたちを追跡し、そのうちの数人を排除し、そのテロリストたちによってこの町に仕掛けられていた地雷や爆発物を取り壊した」と、同通信は伝えた。
シリアのバッシャール・アサド大統領は13日、3年間にわたるこの内戦が自らに有利に傾いていると述べていた。
AFP通信によると、反政府勢力が基地として使っていたホテルは完全に破壊された。また、そのホテルから下ったところにあるギリシャ・カトリックの聖サルキス修道院も損傷を受け、壁が迫撃砲による射撃で穴が開き、内部にはイコンやその他の宗教的な物が散乱していたという。
マアルーラはダマスカスの北東約50キロの山岳部にあり、住民はイエス・キリストが話していたとされるアラム語を今も話していることで知られる。しかい戦闘が始まって以来、住民のほとんどが隣村やダマスカスに避難している。
カトリックのニュースメディア「アジア・ニュース」は昨年9月16日付の報道で、過激派が9月5日に攻撃して以来、マアルーラはゴーストタウンになってしまったと報じていた。また、安全上の理由により匿名で語った情報筋のコメントとして、「イスラム主義者たちがこの小さな町に隠れては、毎日、(政府)軍との暴力的な衝突に熱中している。今や何もかも破壊されてしまった。私たちの家々も、礼拝の場所も、何もかも」と、マアルーラの様子を伝えていた。
アジア・ニュースによると、この町の1万人のキリスト教徒の内、町に残っていたのは、聖テクラ修道院の修道女たちだけで、他には誰も残っていなかったという。
キリスト教徒が多いとされるこの町は、昨年の9月初めから政府軍と反政府勢力の抗争が続き、9月24日には、修道女と孤児約40人がマルタクラ修道院に閉じ込められたままだと、ダマスカスの正教会アンティオケア総主教庁が明らかにしていた。
その後、11月末にシリア人権監視機構は修道女らがマアルーラの修道院から連れ去られたとしていたが、昨年12月に反政府勢力がこの町を制圧した後、3月9日に解放されたとSANAなどが伝えていた。
ロイター通信などによると、マアルーラの教会や修道院は、紛争の前にはキリスト教徒とイスラム教徒双方の巡礼者たちを惹きつけていた。また、聖テクラ教会の修道院は奇跡による治癒で名高いという。マアルーラは1999年にシリアによってユネスコ世界文化遺産の暫定リストにも挙げられている。
一方、米国中央情報局(CIA)によると、シリアのキリスト教徒は全人口の約10パーセント。