【CJC=東京】教皇フランシスコは3月21日、ローマの聖グレゴリオ7世教会で開かれたマフィアの犠牲者の遺族らとの祈りの集いで、マフィアに「悪事を働くのをやめるよう」呼び掛け、組織犯罪に反対するカトリック教会の態度を示した。
バチカン(ローマ教皇庁)からほど近い教会に1000人を超える人々が参加した祈りの集いでは、殺害された幼児たちや、1992年、車に仕掛けられた爆弾の爆発で殺害された有名な反マフィアのジョバンニ・ファルコーネ判事を含め、マフィアの暴力による犠牲者842人の名前が読み上げられた。
教皇は「マフィアの男も女も・・・生き方を変えなさい。悪事を働くのをやめて、改心しなさい」「現在の道を下り続けるなら地獄行きとなる、それを避ける時間はまだある」と語り掛けた。
マフィアのドンたちは伝統的にミサに出席、盛大な葬儀が教会で行われることも多く、善良なカトリック献金者を装っている。
祈りの集いに先立ち、反マフィア協会「リベラ」の副会長、マルチェロ・コッジ神父はAFP通信の取材に対し、教皇が「明らかにしたいのは、福音とマフィア、福音と腐敗、福音と違法は手に手を取って協力することはできないということだ」と語った。
3月13日に就任1年を迎えた教皇は、「宗教事業協会」(バチカン銀行)の透明性の向上に取り組んできた。バチカン銀行は資産約60億ユーロ(約8480億円)。教会の力の源泉である一方、同協会に設けられた聖職者の口座がイタリアの保守政治家やマフィアの借名口座として使われ、マネーロンダリング(資金洗浄)の温床だったとも指摘されてきた。
バチカン銀行の透明性向上は、カトリック教会に張り巡らしたマフィアの利権ネットワークを教皇が暴露しようとしているとも見られ、マフィアの反発は十分に予想出来る。
南部カラブリア州でマフィア対策に当たっているニコラ・グラテッリ検事は昨年11月、カトリック教会の金融事業の抜け穴を悪用してきたマフィアが教皇の改革に対して神経をとがらせている、と地元紙に語っており、ここへ来て、教皇がマフィアに生命を狙われる恐れも浮上している。