自身の指示により教会に対して131億ウォン(約12億4200万円)の損害を与えなどとして、50億ウォン(約4億7500万円)の罰金命令が下された、世界最大のペンテコステ派教会の牧師、趙鏞基(チョー・ヨンギ)氏(78)は2月23日、教会の信徒を前に「この苦難を通じて1つ悟ったことは、一個人が何も所有してはならないこと」などと語った。
趙氏はこの日、韓国・汝矣島(ヨイド)純福音教会で行われた主日礼拝の説教で、第2コリント人への手紙4章16〜18節を引用し、「苦難を克服する3つの道」と題して説教。この中で、最近の裁判で出された判決についても言及した。
趙氏は「(判決後の)2日間、50年の牧会生活の中で最も困難な苦難を経験した。試練と苦痛の中にあったが、今まで信仰してきた中で一番神様が有益な日をくれた。心を痛めたし、弁明したくもなったし、また人であるから抗議、あるいは復讐したい、そういった色々な複雑な誤った考えが胸の中に浮かんできた」と告白。「その中で、悔い改めることができ、聖霊の変化を受けることができ、真珠貝から真珠が出るのだと思いながら、よいことも多かった」と語った。
趙氏はまた「私が苦難を受けている間、聖徒の皆さんが私のためにたくさん祈ってくださったことをよく知っています。皆さんの祈りが私を人として作り、主の僕(しもべ)として作ってくださったことを感謝します」と、同教会の信徒らに感謝を伝えた。
その上で、今回の事件から得た教訓として、「私はこの苦難を通じて、1つ悟ったことは、一個人が何も所有してはならないということだ。私は、今日でも神様がお召しになれば、いつでも主の国に行くつもりだが、地位や名誉、権威、お金も、健康以外にはこれ以上望むものはない。そして、私たちが生きているすべての道で、小さなことでも神様が全てをよくしてくださるのだから、この試練と患難も、私をより大きく、よりよく作ってくれることを信じているので、(今回の事件も)肯定的に受け取れるはずだ」と語った。
趙氏は、2002年に息子の趙希竣(チョー・ヒジュン)氏が所有していた、教会や関連機関の清掃、警備、セキュリティ業務などを行っているサービス会社の株式25万株を、適正価格の2倍以上の価格で購入するよう同教会関係者に指示し、同教会に巨額の損害を与えたとして、特定経済犯罪加重処罰法違反(背任)などの罪で昨年6月、在宅起訴されていた。
この裁判の判決が今年2月20日に言い渡され、同教会に131億ウォン(約12億4200万円)の損害を与えたとして、趙氏は懲役3年、執行猶予5年、罰金50億ウォン(約4億7500万円)の判決を受けた。また、元国民日報会長である希竣氏も、共犯したとして懲役3年の実刑判決を受けた。
一方、趙氏が在宅起訴された際、同教会側は、牧会に専念していた趙氏は、一般企業で行われるような株式売買や株式の価値評価など詳細な業務を指示するだけの専門知識はなかったとして、不当な起訴だという立場を表明。同教会の教職や信徒ら16万人の署名を集め、請願書を提出していた。
また、同教会の長老会も、教会と営利を追求する民間企業では、意思決定の構造が違うと指摘。同教会は長老らを中心とした役員会が最高意思決定機関としてあり、その下にある各委員会や各実務部門のすべての業務を検討し決定しているとし、当時同教会の会長であった趙氏の決裁は形式的意味が強いと主張した。「すべての書類を一つひとつ確認して決裁することは事実上不可能」「実務部門と委員会の判断と決定を信じて尊重し、重大事案の場合は外部の会計事務所など専門機関のコンサルティングを受けるようにしていた」などとする立場を示していた。
しかし、今回の判決で裁判所は、教会の最高意思決定権を持つ趙氏が関与していなければ不可能な犯罪だとし、趙氏の地位と役割に見合った処罰が必要だとした。また、趙氏が教会名義での各種文書作成、書類変造などを承認、あるいは黙認し、犯行の中心的役割を果たしたなどと指摘した。
同教会の役員会は2月23日、信徒向けに「汝矣島純福音教会の聖徒たちに捧げる文」を発表。「かなり過去に決裁された文書について、今回、司法による判断を受けることになった」「このような状況と、またこれに関連した全てのことについて、教会を愛し、常に祈ってくださる聖徒たちにご心配をお掛けしたことを心からお詫び申し上げます。今後はこのようなことが起らないよう、教会の全ての関係者たちが最前を尽くすつもりです」とし、今回の事件について信徒らに謝罪した。