ビリー・グラハムとその妻ルース夫人の友人であり、彼らについて伝記も著したハンスペーター・ヌイシュ氏は、夫妻の築いたパートナーシップは完璧であり、その愛は老年期に入っても強く保たれたままだったと話す。
「ルースはすべての面でビリーの人生のパートナーであり、彼の伝道活動にとって欠かせない存在でした」と、ヌイシュ氏は12日、米クリスチャンポスト紙のインタビューで語った。彼は30年間にわたりスイスのキャンパス・クルーセード・フォー・クライスト(CCC)の代表を務めている。彼は、新しい著書『Ruth and Billy Graham: The Legacy of a Couple』を先月出版したばかりだ。
ヌイシュ氏がクリスチャンポスト紙に語ったところによれば、彼がこの本を執筆したのは、ビリー・グラハム(95)の人生と伝道活動については何百冊もの本が書かれているにもかかわらず、グラハム夫妻の物語について触れたものは1冊もなかったからだ。「彼の伝道活動におけるルースの役割は非常に重要なものでした。夫妻についての本があるべきなんです」とヌイシュ氏。
有名な伝道師ビリー・グラハムの妻、2007年に他界したルース夫人について調査を進めるにつれ、ヌイシュ氏は「彼女が実に非凡――ビリー・グラハム自身と同じくらい非凡な人物であったことに気付いた」という。夫妻の愛の物語が、ヌイシュ氏の著書の中心だ。
長く続いたロマンス
「お互い、関心事が随分離れたから遠くなったとあなたは思っているかもしれないけど、私は今までよりも一層あなたに近い気がする」とルース夫人は、伝道クルーセイドのため長期間イングランドに出かけた夫に手紙を書いている。「あなたがどこにいようと、私の心もあなたと一緒に出かけ、あなたのために絶えず祈るわ」2カ月という長い期間離れていたにも関わらず、ルース夫人は次のように書いた。「あなたの問題、深刻な心の痛み、そして栄光に満ちた勝利は、まさに私自身のもの」
グラハム夫妻のロマンスは夫人が亡くなるまでずっと続き、それどころか老年期にはますます絆が強くなったのだと、ヌイシュ氏は説明する。「ルースについて話すときはいつでも、ビリーは目を輝かせて彼女を褒めちぎるんです」
グラハム夫妻は「神の教えにおいて、セクシュアリティは単に生殖のためだけでなく、夫婦の喜びのために与えられた神の贈り物だと考えていた」とヌイシュ氏は書いている。グラハムはこの問題についてローマ教皇とは公に意見を異にしており、「若者達はセックスについて間違った考えを持っている。セックスは、結婚している夫婦の間では最も素晴らしいことだ」と話したことがある。夫妻はしばしば公の場でキスを交わした。
ヌイシュ氏は、離婚に関する夫妻の立場を示すエピソードを語る。カメラを向けられながら、離婚を考えたことがあるかと尋ねられた際、ルース夫人は冗談ぽく目をきらめかせて答えた。「離婚を考えたことはないけど、殺すことなら何度か考えたわね」これは茶目っ気のある彼女らしい返答だった。「彼女はとても普通の人でした。非常に自然体で、ユーモアに溢れていました」とヌイシュ氏。
パートナーシップ
グラハム夫妻の結婚生活の最大の特徴はそのパートナーシップだと、ヌイシュ氏は語る。「彼らは伝道活動をチームワークとして捉えていました」とヌイシュ氏。「ビリーが神の招命を受けたように、ルースも招命を受けたことは明らかです。伝道のために招命されましたが、彼女の場合は家に残り、家族の世話をし、ビリーに自由に伝道をさせることでその招命を表したのです」
ルース夫人はしばしば冗談を言ったという。「神様が私を救って、解放してくださったので、私は家に残って祈っていられる。1日中ビリーの後を追いかける必要がないの」家庭を築き、夫の伝道活動をサポートするため、彼女はチベットで福音を伝えるという自身の生涯の夢はあきらめた。夫グラハムが世界中で福音を伝え、夫妻が別々の役割を担うことで、2人は家庭を築いたのだとヌイシュ氏は説明する。
しかしルース夫人は単に夫を支えることで伝道活動を行ったのではない。例えば、ニクソン元大統領の娘ジュリー・ニクソン・アイゼンハワーが神に導かれたのは、ルース夫人を通してであると、ヌイシュ氏は言う。「ビリーが伝道という才能を与えられたとするなら、ルースは信仰という才能を与えられていた」と元大統領の娘は語ったという。
グラハム家において信仰の人であったのはルース夫人であったと、ヌイシュ氏は語る。「説教ではビリーが主導権を握っていましたが、家では彼女が彼を支え、励ましていました。ビリーよりも彼女の方がずっと信仰を現していたのです」とヌイシュ氏。「ビリーはしばしば、ルースの励ましとサポートがなければ、自分の世界伝道はありえなかったと言っています」
共通のミッション
グラハム家は、家族全体として神とのより親密な関係を求めた。「2人とも福音を世界に広めること、イエス様を知らしめることを共通のミッションと考えていました」とヌイシュ氏。グラハムが伝道クルーセイドに出かけたときは、午後5時にルース夫人に電話をかけ、2人で一緒に祈るようにしていた。
夫妻は世間的な名声には目を留めず、重要人物に会ったことを自慢するようなことは決してなかった。それよりむしろ人々との交流を通じて神に仕えることを重要視していた、とヌイシュ氏は言う。彼は、大統領がグラハムに電話をかけてきたときのことを覚えている。「ビリーは『時間がない。今、家のメイドと話さなきゃならないんだ。後でかけ直すから』と言いました」
ルース夫人は夫を美化するようなことは決してなかった。
「2人をよく知る人達は、2人は説教台に立っているときよりも、家庭での方がさらに一層良い人達だったと言います。それはとても大切な証言です」とヌイシュ氏は語る。彼は、グラハム夫妻の特徴として、気取らなさと誠実さを筆頭に挙げる。
ヌイシュ氏は、祈りがグラハム夫妻の結婚生活で最も重要な部分を占めていたと話す。「良い結婚生活を送るには、頻繁に共に祈るよりもいい秘訣はありません。それによって相手の心を感じることができるのですから」とヌイシュ氏。グラハム夫妻は、常に共に祈り、そして聖書を読んでいたという。