ザアカイ
ルカの福音書19章1~10節
[1]序
今回はルカの福音書19章に進み、ザアカイの記事を味わいます。
これはルカの福音書だけに登場する記事です。ガリラヤからエルサレムへの旅(9章51節以下)を締めくくる大切な位置を占めていますし、18章24~27節に見る「金持ちが神の国に入る」ことをめぐる課題に答える実例と見ることもできます。
[2]出会いの備え
◆ザアカイ(ザカリヤのギリシャ語風の呼び方、正しい者の意)
(1)エリコの町、税関があった所。
(2)「取税人のかしらで、金持ち」(2節、参照15章1、2節)。
(3)ザアカイの願い、困難その中で(3、4節)。
◆主イエス、ザアカイの願いに先立って
(1)「イエスは、エリコに入って、町をお通りになった」(1節)。
(2)「人の子は、失われた人を捜して救うために来たのです」(10節)。一匹の失われた羊を捜し求める羊の牧者として(15章4~7節)。
[3]出会い
(1)主イエスの名指しの呼び掛け(5節)
①「ちょうどそこに来られて」
偶然ではなく出会いのための備え。
②「ザアカイ」
名指しの呼び掛け。主イエスに知られているザアカイ。ザアカイの求めを一つの機会として用いなさる。
③「あなたの家に泊まる」
ザアカイの「イエスがどんな方か見よう」(3節)との願いを越えて。
(2)ザアカイの応答
「急いで降りて来て、そして大喜びでイエスを迎えた」(6節)。主イエスの命令に喜びをもって従うザアカイ。
(3)人々のつぶやき(7節)
(4)ザアカイの主イエスへの申し出
主イエスとの出会いは、ザアカイの生き方の方向転向、新しい生活の始まりへと導く。要求されていること(参照レビ6章1~5節)以上のことをもって社会に対して証。
(5)主イエスのザアカイへのことば
主イエスはザアカイの悔い改めを喜ばれる。「きょう、救いがこの家に」(参照2章11節)。単にザアカイにとっての救いだけでなく、家族にとっても恵み。ザアカイの家族に対する使命。主イエスを家に迎える祝福。アブラハムの信仰と行為にあずかる、アブラハムの子ザアカイ。
[4]結び
(1)一人一人を捜し求められる主イエス。
(2)一人一人の願いを機会として用い、願いをはるかに越えて導きくださる主イエス。
(3)主イエスとの出会いの祝福。その広がりが社会生活において、家庭において。
宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。