日韓両国の福祉関係者らが集い韓国で開かれていた国連「世界孤児の日(World Orphans Day)」制定推進大会は10月31日、3日間の日程を終え閉幕した。最後のプログラムとして木浦市民文化体育センターで行われた「世界孤児の日」制定推進宣言大会には、日本からの訪韓団約500人を含む千人以上の参加者が集まる中、「世界孤児の日」制定請願決議文が宣言された。
この大会は、韓国・木浦市で延べ3千人もの孤児を育て、「韓国孤児の母」と呼ばれた高知県出身の日本人女性、田内千鶴子(1912~68、韓国名:尹鶴子)の生誕100年を記念し、国連「世界孤児の日(World Orphans Day)」制定推進を目的として日韓の福祉関係者らが協力して開催した。大会には、尾崎正直高知県知事、岡崎誠也高知市長、丁鍾得(チョン・ジョンドク)木浦市長をはじめ、日韓の行政関係者らも出席した。鳩山由紀夫元首相、金大中元大統領夫人の李姫鎬(イ・ヒホ)氏、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル特別市長、韓流スターのチャン・グンソクをはじめ多数の著名人がビデオレターで祝辞を述べた。
開会のあいさつで丁市長は、「私たちの木浦と日韓両国が、地球村の未来の主役である青少年に愛と希望を植える愛のメッセージを一緒につくりあげていきましょう」と呼び掛け、「孤児なき幸せな世の中の実現のためにより大きな愛と関心が集まることを期待しています」と述べた。
岡崎市長は、「(田内の誕生日である)この特別な日に韓国と日本の各地から千名を超える多くの皆様がここ木浦市に集い、田内千鶴子さんの遺徳をしのびますとともに、親のいない子どもたちの未来が明るく希望に満ちたものでありますよう世界に向けて発信することは誠に意義深いこと」と述べた。また、「(田内の)遺志と崇高な慈愛の精神が、未来を担う若い世代へと受け継がれて参りますことが、生前、田内千鶴子さんが望んでおられた孤児のない世界への一日も早い実現にもつながっていく」と期待を述べた。
最後には、日韓の共同代表者約50人が舞台に上がり、「世界孤児の日」制定請願決議文が朗読された。
「世界孤児の日」制定請願決議文(全文)は次の通り。
「世界孤児の日」(World Orphans Day)制定請願決議文
<前文>
人間は皆、孤児です。幼い時になるか、大人になってなるかの違いがあるだけです。幼い時に孤児となった子どもに隣人と社会の関心と愛が必要です。
愛されて育った子どもは、愛することのできる人間になります。しかし、愛されなかった子どもが、愛する人間になるのには、そう容易いことではありません。
すべての子どもが、愛されて育つ訳ではありません。社会的な混乱と家庭崩壊、そして戦争・疾病・貧困などで、ひとり立ちする能力がない子どもが、路頭に迷い、その数は毎年増加しています。
父母の愛に育まれないで棄てられた孤児も愛されなければならない存在です。これは国連の世界人権宣言にも明らかにされているように、すべての人間が持って生まれた天賦的な人間の尊厳に根差した孤児の人権です。
日本人女性でありながら、愛と犠牲の精神で韓国の孤児3千余人を育て上げた田内千鶴子女史(1912~1968)がいました。彼女の生涯の願いは「孤児のいない社会」の実現でした。
今、田内女史の生誕100周年を迎え、地球村のすべての人々が、孤児に対する認識を新たにし、彼らが健康な国際人として成長できるよう、国連に「世界孤児の日」(World Orphans Day)を制定することを請願し、次の通り決議します。
<決議>
- 子どもは、祝福されて生まれ、国籍・人種・宗教・文化など、出身背景に関係なく、愛で養育されなければなりません。
- 家庭崩壊・貧困・疾病・戦争などで父母の愛に育まれない子どもに対しては、当該国家と社会は、法と制度で、安全と養育を保証しなければならない責任があります。
- 父母の世話が不可能な場合、当該国家と社会は、子どもが愛の溢れる家庭で幸せに成長できるよう、養子縁組文化の定着を積極的に推進し、実行しなければなりません。
- 孤児養育のための収容施設は、一般家庭と区別や差別されて運用されてはなりません。
- 孤児は、普通の児童と全く同じ夢を持って、自身の意志で自立できなければなりません。民主市民として成長できる教育の機会が、提供されなければなりません。これが、国連が明らかにした子どもたちの人権であります。
- 天災地変や疾病、国家間の紛争などで発生する孤児に対して、救護機関の特別援助が優先的になされなければなりません。
- 孤児は、大義名分のない犯罪や不当な労働などの反教育的な仕事に動員されてはなりません。
- 国連をはじめ、すべての国際機構は、地球村で発生している孤児に対する制度と処遇に対して、人権的な次元で優先的に迅速な救護と国際間の協調がなされるように緊密に調整して行かなければなりません。