韓国で延べ3千人もの孤児を育て、「韓国孤児の母」と呼ばれた日本人女性、田内千鶴子(1912~68、韓国名:尹鶴子)の生誕100年を記念し、国連「世界孤児の日(World Orphans Day)」制定推進大会が29日、韓国ソウル市で始まった。開会式には、同大会を主催する田内千鶴子生誕100周年記念事業会の日本側会長で神奈川県保険福祉大学名誉学長の阿部志郎氏が出席し、「親がいない、親が育てられない子どもたちを、親に代わって地球市民が愛し、守り育てる。愛された子どもは必ず愛する人に成長します。その文化をつくろうというのが、今回の『世界孤児の日』制定の意義」と語り、「ここから新しい文化を発信しようではありませんか」とあいさつした。
田内は高知県出身。熱心なクリスチャンだった母ハルの影響を受けてクリスチャンになった。7歳で朝鮮総督府の官史であった父の赴任地、木浦に渡り、24歳で日本語と音楽の教師として孤児院「木浦共生園」での奉仕を開始。その後、園長の尹致浩と結婚するが、朝鮮戦争のさなかに食料調達に出かけたまま、園長は帰らぬ人に。反日感情の渦巻く韓国で、女手一つで孤児たちを養った。63年には大韓民国文化勲章国民賞を受賞。65年には第1回木浦市市民賞を受賞し、名誉市民に。67年には日本政府より藍綬褒章を受章した。木浦市は田内のために初の市民葬を行い、3万人もの弔問者が参列し、その死を悼んだ。
開会式には、日本からの参加者約300人を含む600人以上が出席した。冒頭には、田内の長男で社会福祉法人こころの家族理事長の尹基(ユン・キ)氏、田内千鶴子生誕100周年記念事業会の韓国側代表で崇實大学理事長の朴鍾淳(パク・ジョンスン)氏があいさつした。
朴氏は、「『孤児のいない社会』を夢見ていた故人の遺志を受け継ぐためにも、韓日両国の国民が力を合わせ、明日の希望である子どもたちが健やかに育てるよう努力しなければならない」と語り、「国家と民族を超え、明日の主役である子どもたちが楽しく生きていけるよう、より良い社会を築きましょう」と訴えた。
鳩山由紀夫元首相、金大中元大統領夫人の李姫鎬(イ・ヒホ)氏、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル特別市長などもビデオレターで祝辞を述べた。続く基調講演では、韓国初代文化部長官の李御寧(イ・オリョン)氏が登壇した。
この日は、開会式に続き、国連「世界孤児の日」制定推進の意義をテーマにした国際学術シンポジウムや、日韓のクリスチャンが宗教と社会貢献について話し合う集会などが行われた。大会は、31日まで3日間の日程で行われる。